アメリカには「Bビザ」というビザが存在します。このビザは、米国観光や米国への出張などの際に利用されることが多いです。他のビザと比べても利用できる範囲が広めなので、大変使いやすいビザであると言われています。しかし、便利であるのと同時に、活動の範囲や就労制限、有効期限など注意しなくてはならない点も多くあります。
そこで、本記事ではBビザの概要や注意しなければならない点を解説し、具体的な申請手順もご紹介します。
これからアメリカ旅行の予定がある方やアメリカへ出張する予定がある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
Bビザとはどんなビザ?
そもそも「ビザ」とはどんなものでしょうか。ビザとは、保有しているパスポートが真正なものであるという「裏付け」と、米国へ入国しても問題ないという「お墨付き」を大使館に認めてもらうものです。パスポートにスタンプされる形で付与されることが多く、入国審査の際に審査官に提示します。
Bビザには、B-1ビザとB-2ビザの2種類があります。B-1ビザは渡航目的が短期商用であるときに取得するもので、B-2ビザは渡航目的が観光であるときに取得するものです。このことから、B-2ビザのことを「観光ビザ」と呼ぶこともあります。
実際には、Bビザを取得するとパスポートのビザ欄には「B1/B2」と記載されるため、Bビザ1つで短期商用と観光の両方を行うことができるようになります。
米国ビザには多くの種類がありますがその中でも最もポピュラーなビザだといえます。
また、利用できる範囲が他のビザよりも広いという特徴があります。
Bビザで活動できる範囲について
残念ながら、Bビザを取得したからと言って、アメリカで自由に活動できるわけではありません。ビザにはそれぞれ多くの制限があり、Bビザにもいくつか活動制限の規定が設けられています。
まずは、B-1ビザ、B-2ビザで許される活動の範囲から解説していきます。
B-1ビザでできること
B-1ビザは主に短期の商用目的で米国に滞在する際に取得します。米国で取引相手と商談をしたり、現地の工場を視察したりすることができます。
所属企業に米国出張を命じられたケースを想像すると分かりやすいかもしれません。
B-1ビザの範囲内の活動の例としては、以下のようなものがあります。
- 契約の交渉
- 取引先との商談
- ビジネス上の会合などへの出席
- ビジネス上の目的で行う調査、見学など
- 商品や資材などの買い付け
B-2ビザでできること
B-2ビザは「観光ビザ」と呼ばれることからも分かるように、アメリカ観光をする際に取得するものです。一般的な「家族や友人とのアメリカ旅行」をイメージしてください。
ただし、観光以外にもアメリカの病院で治療を受ける、手術を受けるといった目的で取得することもできます。
B-2ビザの範囲内の活動の例としては、以下のようなものがあります。
- 米国での観光、アクティビテイ
- 米国にいる家族、友人宅などへのホームステイ
- 米国の病院で治療や手術などを受けること
- 米国での博覧会等のイベントへの参加
- 米国の社交団体などが主催する交流会等への参加
Bビザの注意点
活動範囲が広く、大変利用しやすいBビザですが、いくつか注意しなくてはならない点があります。注意点に気が付かずにルールを犯してしまうと、ビザ取り消しや強制帰国を命じられたり、最悪の場合だと数年間の入国禁止処分をされてしまう可能性があります。以下で、注意点について解説しますので、アメリカへ向かうまでにしっかりと理解しておきましょう。
1.就労の禁止
Bビザを取得して米国に入国した人は、一切の就労をすることができません。B-2ビザだけでなく、B-1ビザであっても就労が禁止されています。
B-2ビザ(観光ビザ)が就労禁止なのは当然のことでしょう。しかし、B-1ビザ(商用ビザ)を取得したのに就労が禁止されるというのはどういうことでしょうか。これはつまり、「就労ビザ」が必要になるような活動をすることができないということです。例えば、労働の対価として報酬を受け取るためには「就労ビザ」が必要です。
もし、米国渡航の主な目的が現地での就労であるならば、「就労ビザ」を申請しましょう。実際には、「就労ビザ」という種類のビザがあるわけではなく、現地での就労が認められているビザを総称して「就労ビザ」と呼びます。アメリカでの就労を認められているビザの例としては、H-1B(特殊技能職ビザ)、Eビザ (貿易・管理職ビザ)などがあります。
2.有効期限と滞在期間
Bビザを含むすべてのビザには「有効期限」という制度がありますが、この「有効期限」については大変勘違いが起こりやすいです。つまり、「有効期限と滞在期間は別物」ということです。
ビザの有効期限とは、米国の入国審査を受ける際にそのビザを使うことができる期間のことです。例えば、Bビザの有効期限が1年間であるときは、そのビザを使って米国に入国できるのは1年間ということであり、米国で1年間滞在できるということではありません。
他方、アメリカに滞在できる期間は入国審査官の判断によって定められます。それぞれの渡航目的の達成に必要だと想定される滞在期間が設定されます。半年以内に設定されるケースが多いですが、場合によっては1年間の滞在が認められることもあります。例えば、アメリカで買い付けをするためにB-1ビザで入国しようとするときに、買い付けが半年では終わらないと判断されれば半年以上の滞在を許されることがあります。
また、米国入国後に滞在期間の延長申請をすることができます。ただし、延長に理由がないとして申請を却下されることもあります。
3.入国できる回数
Bビザを取得した場合、ビザの有効期限が切れないうちは何度でも入国することができます。入国回数に関する制限は特に設けられていません。ただし、ビザは米国への入国を確約するものではありません。入国を認めるかどうかは、入国審査官の広い裁量に委ねられています。期間をあけずに何度も入国しているような場合は、審査官に尋問されることがあるかもしれません。この際、審査官が気にしているのは「アメリカに移住しようとしているのではないか」という点です。審査官にしっかりと納得してもらえないと、入国を拒否されてしまう可能性があります。理由があって入国したいだけであること、帰国の意思があることをはっきりと示しましょう。
なお、ビザの有効期限内なら何度でも入国できると説明しましたが、一度出国してしまうと滞在期間はリセットされます。もう一度入国する際は、また入国審査官が期間を決めることになります。
Bビザの取得が適さないとき
Bビザは他のビザと比べて取得が容易であり、大変利用しやすいビザであると解説しました。しかし、場合によってはBビザを取得するよりも、他の制度を利用して入国するほうが良いことがあります。その制度とは、「ESTA」です。以下では、ESTAとはどのような制度なのか、どんな時に申請できるのかなどを解説していきます。
ESTAとは
ESTAとは、米国での「滞在期間が90日以内」かつ「滞在目的が観光・短期商用」である場合に申請できる「電子渡航認証制度」です。オンライン上ですべての手続きを完結できるようになっており、申請費用もビザ申請よりも安い21ドルです。
簡単に言うと、「一定の条件を満たせば複雑なBビザ取得の手続きを省略してくれる制度」ということです。
ESTAを利用することで90日以内の滞在が可能です。アメリカでの滞在予定期間が90日以内ならESTA、90日を越えるようならBビザと考えるのがよいでしょう。ただし、滞在予定期間が90日以内でも、渡航目的が観光または短期商用でないときは、ESTAを利用しての入国はできません。
ESTAを取得するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下でその条件について解説していきます。なお、これらの条件はすべて満たしている必要があります。1つでも当てはまらない条件があるときは、ESTAを取得することはできません。Bビザを申請しましょう。
〇「ビザ免除プログラム」対象国の国籍を有していること
ESTAを申請するためには、「ビザ免除プログラム」に加入している国のパスポートが必要になります。
日本は対象国の1つですので、日本国籍を有している方はこの条件を満たしていることになります。韓国、台湾などもこのプログラムの参加国です。
一方、中国やベトナム、タイなどはこのプログラムに参加していないので、これらの国籍の方はBビザの取得を申請することになります。
〇「滞在期間が90日以内」かつ「滞在目的が観光・短期商用」
渡航目的が観光、ビジネスであったとしても、滞在日数が90日を越えてはなりません。また、滞在日数が90日を越えない場合であっても、渡航目的が観光・短期商用以外であるときは、ESTAを申請することはできません。
〇有効期限内でICチップ付きのパスポートを保有している
ESTAの情報はパスポートに紐づいて管理されます。入国審査の際にパスポートを提示することでESTA認証を確認しますので、ICチップが搭載されていなければなりません。
なお、ESTAの有効期限は2年間ですが、パスポートの期限が先に来てしまうとESTAも同時に失効してしまうという点に注意が必要です。ESTA申請の際は、必ずパスポートの有効期限も確認するようにしましょう。
ただし、欠格条件も存在するので注意が必要です。上述した条件を全て満たしていたとしても、1つでも欠格条件に該当してしまうとESTAは許可されません。
欠格条件は以下の通りです。
- 日本国内および海外にて過去に重大な違反や犯罪歴がある方
- 米国が指定する伝染病を患っている方や治療中の方
- 過去に米国より強制送還されたことがある方
- オーバーステイ(不法滞在)の履歴がある方
- イラン、イラク、リビア、シリア、スーダンのいずれかを保有する二重国籍の方
- 2011年3月1日以降にイラン、イラク、リビア、シリア、スーダン、北朝鮮、キューバへ の入国・渡航履歴がある方
Bビザ申請方法
それでは、Bビザの申請方法について解説していきます。ビザの申請はESTAとは異なり、通常でも1か月程度の時間を要します。ギリギリになって慌てることのないように、余裕を持ったスケジュールで行いましょう。
申請資格
米国政府は不法移民に対して厳しい対応をとっていることで有名です。米国政府は「全てのBビザ申請者を米国移住希望者であると仮定する」としています。つまり、Bビザの取得を認めてもらうためには、「移住希望者ではない」ということを証明して、米国政府の仮定を覆さなくてはなりません。
具体的には、以下のことを証明します。
- 渡米目的が観光・短期ビジネス・知人宅への訪問など一時的な滞在であること
- 渡米計画が明確で、滞在期間は定められた日数以内であること
- アメリカ滞在に必要な資金の証明が可能であること
- ビザ申請時の居住地がアメリカ国外であること
- 社会的かつ経済的な保障がある国・地域の市民であり、目的遂行後は確実に帰国または出国する意志があること
Bビザを取得するためには、例外を除いて、米国大使館職員・領事館職員との面接が必要です。その際、上記に関する質問にははっきりと答えられなくてはなりません。
申請手順
続いて、具体的な申請手順を解説していきます。提出書類などに不備があると拒否されてしまう可能性があります。申請手続きは慎重に行いましょう。
申請先は、在米国大使館(東京)か主要都市に設置されている領事館です。領事館は、札幌、大阪、福岡、那覇にあります。
0.面接免除の条件
Bビザの取得のためには、基本的に在日米国大使館・総領事館での面接が必要になりますが、14歳未満もしくは80歳以上の方は面接の免除を受けることができます。面接が免除されたときは、大使館等に必要書類を郵送する方法でビザを受けます。
ただし、14歳未満もしくは80歳以上の方であっても、以下に該当する方は面接の免除を受けることができません。
- 現時点で日本に居住または滞在していない方
- 過去のESTA(エスタ)申請で「渡航認証拒否」の履歴がある方
- イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリアいずれかの二重国籍を持つ方
- 日本のほか、アメリカを含む他の国や地域にて逮捕歴がある方
1.申請書を作成する
Bビザの申請は、「DS-160」というオンラインフォームを通じて行います。証明写真も画像データを送信する形で提出します。写真の送信がうまくいかない場合には、面接に持参する方法でも大丈夫です。
アメリカ大使館等へ提出する情報ですので、情報はすべて英語で入力する必要があります。住所や生年月日の書き方は、英語の表記方法に従う必要があるので注意しましょう。質問内容に不安がある方は、ページ右上の「Select Tooltip Language」から、日本語を選択しましょう。分からない文章にカーソルを合わせると、日本語訳が表示されます。ただし、この場合でも入力は英語なので気をつけましょう。
入力が終わったら、申請内容に誤りがないかもう一度確認しましょう。回答に不備があった場合、申請が拒否されてしまう可能性があります。
入力内容の確認が終わったら、申請情報を送信しましょう。
2.申請料金を振り込む
次は、申請料金を支払いましょう。Bビザの申請料金は185ドルです。この際、クレジットカード、ATM支払い、オンラインバンキングでの支払いが可能です。
3.面接を予約する
申請料金の支払いが完了すると、面接の予約ができるようになります。
面接場所は、米国大使館(東京)、札幌米国総領事館、大阪・神戸米国総領事館、福岡米国領事館、沖縄領事館のいずれかです。
なお、予約の変更は5回まで認められますが、6回目からはもう一度料金の支払いをする必要がありますので、注意してください。
4.必要書類を揃える
次に、ビザ申請に必要な書類を準備しましょう。提出書類は時期、申請内容によって変わることがあります。申請の前に、必ず大使館等のHPで確認しましょう。
必要書類の例としては、以下のようなものがあります。
- 有効期限内のパスポート
- 過去10年以内に取得した古いパスポート
- 証明写真1枚(5cm × 5cm)
- 面接予約確認書
- DS-160申請書の確認ページ
なお、面接場所が札幌米国総領事館または福岡米国領事館の方は、事前に必要書類を郵送しておく必要があります。少なくとも3日前までには到着するよう郵送する必要があります。
以下に、それぞれの領事館の住所を示しておきます。
〇札幌
在札幌米国総領事館ビザサービス
〒064-0821 札幌市中央区北1条西28丁目
〇福岡
在福岡米国領事館ビザサービス
〒810-0052 福岡市中央区大濠2-5-26
※封筒の裏側に面接予約日・予約時間を記載してください。
5.面接を受ける
必要書類を忘れずに持参して、面接を受けましょう。忘れ物があると面接を拒否されてしまうことがあります。必ず出発前に確認をしましょう。
6.ビザを受け取る
Bビザはパスポートにスタンプを押してもらう形式ですので、手元にパスポートが返ってきたら、ビザの取得は完了になります。この際、自分で受け取りに行くか、配達するかを選ぶことができます。
一般的に、5日から15日程度かかると言われています。
まとめ
本記事では、Bビザの概要や申請手順を解説してきました。Bビザは比較的利用しやすいビザではありますが、活動の範囲や就労の禁止など注意しなくてはならない点も存在しています。これから渡米の予定がある方は、本記事で紹介した注意点に気を付けてアメリカ滞在を楽しんでください。また、Bビザの取得を検討している人の中には、ESTAの申請要件を満たしている人もいるかもしれません。BビザよりもESTAのほうが申請が簡単で、料金も低く抑えることができますので、ぜひ検討してみてください。