アメリカへの留学を考えている学生の皆さんは、具体的にどのような方法があるかご存じですか?この記事では、ビザなし留学に利用するESTAとビザあり留学の違いについて解説していきます。
VISA(ビザ)とESTA(エスタ)の違い
ESTAを利用した留学と各種学生ビザでの留学の違いについて下記の表にまとめました。
学生ビザとESTAの費用を比較してみると、ESTAは申請料の21ドルのみなのに対し、学生ビザは、申請費用185ドルに加えて、「SEVIS」の登録費も支払う必要があります。SEVISについては、後述の「ビザ申請事前準備:SEVIS」に記載されています。
そのため、ESTAで留学する場合と比べて事前にかかる費用が高めです。
渡航目的では、学生ビザでは、フルタイムの授業を受けることが出来たり、カリキュラムに沿った実践的な講義を受けることができるのに対し、ESTA留学では週18時間未満までしか授業を受けることができません。
これは、ESTAの取得条件が「観光・短期ビジネス・トランジット目的での渡航に限られている為」です。週18時間以上授業を受けてしまうと、留学目的でアメリカに渡航したと判断されてしまうため、ESTAでビザなし留学を行うことができなくなってしまいます。
申請方法では、ESTAの申請は完全オンラインでネット環境のあるところであれば何処でも申請を行うことが出来ます。一方で、学生ビザの申請は、渡航前に日本にあるアメリカ大使館・総領事館に必要な書類を提出し、面接を行わなければ取得することはできません。
また、在留期間についてはESTAは最長90日までであるのに対し、学生ビザは年単位での滞在が可能になっています。
現地就労の可否については、どちらも原則不可になっています。しかし、在留できる期間が長い学生ビザの取得者は、一定の条件を満たすことで現地でアルバイトを行うことが可能です。
ビザなし留学に利用するESTAって何?
短期留学をする際に利用することができるESTAを知っていますか?ESTAはアメリカの電子渡航認証システム(Electronic System of travel Authorization)です。ビザ免除プログラムの一環として渡航者の素性を確かめるためにESTAを取得します。ESTAには必要な書類の準備や手続きが簡単で、取得までにかかる時間も非常に短いというメリットがあります。
ESTAについてのより詳しい情報は、「ESTAとは?システムや利用条件について徹底解説」をご覧ください。
では、ESTAで渡航する場合はどの様な場合に利用できるのでしょうか。
短期コースやサマースクールではESTAを利用しよう
ESTAは観光・商用の目的でアメリカに渡航する制度です。あくまで観光目的での渡航という建前上、一週間に18時間までしか授業を受けることができません。
そのため、夏休みや春休み等の長期休みを利用した短期コースやサマースクールを受ける方にはピッタリです。
しかし、90日以上アメリカに滞在する予定になる長期留学を計画している方は、学生ビザでの渡航が適しています。
以上のように、ESTAを利用する場合は、短期留学をしたい方向けの方法です。
ESTAの有効期限と学期
ESTAで留学を行う際に、どの学期に渡航すればいいか分からない方が多いと思います。ESTAの有効期限は90日であるため、1つの学期を通して講義を受けることができません。
そのため、上記のように夏休みや春休みを活用した短期コースで留学するのが適しているのです。
自分でESTA申請を行う手順
ESTAの申請は自分でESTA公式サイトにアクセスし申請する方法と、ESTA申請代行サービスを利用する方法の2種類があります。自分でESTA申請をおこなう場合は、ESTA公式サイトを利用しましょう。個人情報の入力や適格性に関する質問には自分で答える必要があり、手間がかかりますが、かかる料金は申請料金21ドルのみです。申請の手順について詳しい手順を解説している記事がありますので、こちらを確認しながらESTA申請を行ってみましょう。
一方で、申請代行業者を利用する場合は、入力の手間がかからず、ESTA申請に特化したスタッフが申請を行いますので、代行手数料が発生し、料金が少し高めになります。
もし、自分で申請を行うことが手間に感じたり、個人情報の入力を間違えたくない場合は申請代行のサービスを利用しましょう。
学生ビザ(査証)について
アメリカの高校や大学、大学院、専門学校などの教育機関で語学留学や技術を学ぶ場合は学生ビザの取得が必須になります。留学が決定した方は留学先から届く入学許可証である「I-20」という書類が届きます。その後、学生ビザの申請を行います。「I‐20」には入学手続きの方法や、ビザの申請手順などといった重要な情報が書かれているため、必ず目を通しましょう。
取得するビザの種類は、大学や語学学校に進学する場合はF1ビザ、専門学校に進学する場合はM1ビザです。どちらも非移民ビザに分類され、留学期間が終了した後は、日本に帰国しなければなりません。
学生ビザ | |||
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ビザの種類 | F1ビザ | M1ビザ | J1ビザ |
具体例 | 大学や語学学校といった学校で語学を学ぶ | 映像技術やメイクなど専門技術を学ぶ | 日本とアメリカの交換留学プログラムで留学する場合 |
入学許可証「I-20」について
学生ビザを取得するためには、受け入れ先となる大学の入学許可証「I-20」を受け取れなければ手続きを進めることはできません。「I-20」は入学が許可された人に学校から送られてきます。
学生ビザ申請の順番としては、
①出願書類の提出
②I-20の発行
③ビザ申請
になりますので、ビザ申請前にI-20が届いていることを確認しましょう。
また、I-20は入国時や現地での身分証になりますので、大切に保管しましょう。
入学許可証「I-20」が届かない場合
I-20 がなかなか届かない場合は、すぐに受け入れ先教育機関の留学生課に連絡を行いましょう。
I-20 が届かず、学生ビザの発行が入学日に間に合わなかった場合は、次の学期まで入学が延期になってしまいます。
ビザ申請事前準備:DS-160
学生ビザを取る場合のみならず、アメリカで長期滞在を希望して非移民ビザを取る全ての方は、「DS‐160」という書類の提出が必要です。
「DS-160」はビザ申請者の個人情報を確認し、ビザ発給に適格であるかを検討する書類です。そのため、「DS‐160」には申請者の情報を正確に入力する必要があります。
「DS‐160」の提出は全てオンラインで受け付けているため、専用の申請フォームにアクセスし、入力・提出を行うことができます。
DS-160申請フォームの入力は下記リンクからアクセスできます。
https://ceac.state.gov/genniv/
DS-160の記入例
DS‐160の記入例は、こちらからアメリカ政府機関が解説しているPDFを確認することが出来ます。説明は英語になっていますので慎重に翻訳しながら記入を行いましょう。
ビザ申請事前準備:SEVIS
アメリカに留学する学生は「SEVIS(アメリカ留学生・交流訪問者情報システム)」に登録する必要があります。
SEVISは、アメリカに留学する学生や交換訪問者プログラムで渡米した外国人の情報を管理するシステムです。主に外国人によるアメリカ国内のテロリズム阻止の目的で作られた制度のため、SEVISに登録するとアメリカ国内での移動を追跡・監視されることになります。
しかし、継続的に登校し、学習プログラムに参加していることを証明できるため、学校などの教育機関とのデータの整合性が保障され、後述するOPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)への参加を後押ししてもらえるようになります。
また、SEVISへの登録はアメリカの専用サイトから申請者情報を入力することで簡単に行えます。登録申請料として、350ドルかかります。支払い方法はクレジットカードのみになりますのでお気を付けください。
SEVIS登録サイト https://www.ice.gov/sevis
F1ビザ(学生ビザ)について
F1ビザはアメリカに留学する際に取得する学生ビザで最も一般的なものです。
一週間当たり、18時間以上講義を受ける教育機関へ就学する際に必要です。
F1ビザの取得には合計360ドル必要になります。内訳は申請料160ドルに加えて、SEVIS申請料200ドルです。ビザ申請料を支払った後、日本のアメリカ大使館・総領事館で面接があり、アメリカで学習する人間として適格かどうか検討されます。
下記にF1ビザの要点をまとめた表を記載しますのでご確認ください。
F1ビザについて | ||
---|---|---|
F1ビザの対象者 | F1ビザの滞在可能期間 | 注意点 |
・大学や、語学学校のどの語学を学ぶことを目的とした留学生 ・週18時間以上の講義を受ける |
・入学許可証(I‐20)に記載された就学期間 ※留学期間中は学校に通う必要がある |
・F1ビザとI-20どちらも有効な期間だけ滞在できる |
F1ビザについてのより詳しい説明は「F1ビザとは?アメリカ留学に必要なビザについて徹底解説」をご覧ください。
また、アメリカへの留学生は基本的に現地での就労が出来ません。アルバイトをはじめ、インターンなども認められていません。では、大学卒業後にアメリカで働くことはできないのでしょうか。
OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)とは
OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)はアメリカ政府が認定している教育機関に1年以上在籍した留学生を対象に行っている職業訓練制度です。
週18時間以上英語学習や就学カリキュラムを受講した学生は最長1年間アメリカの企業でインターンとして就労することができます。
OPTに参加するための条件
- 学生ビザ(F1ビザ)で就学している。
- I-20と有効期限が6か月以上残っているパスポートを所有していること
- 1年間、もしくは9か月間のFull Academic Yearを終了していること
- 学位が取得できるプログラムまたは、Certificate of Achievementを受講していること
- 留学先の学校主催のワークショップに参加していること
- 専攻分野を活かせるインターン先を自分で見つけていること
※「一般教養(Liberal ArtsやGeneral Studies)」が専攻の学生はOPTの参加資格は得られません。
OPTの種類
OPTの種類は主に2種類あります。それぞれの特徴は以下の通りです。
プレOTP | ポストOTP |
---|---|
「Pre‐Completion OPT」
・在学中に実施されるOTP ・学期中は週20時間以内 ・長期休みはフルタイムで就労できる。 |
「Post-Completion OPT」
・卒業後に実施されるOTP ・学位ごとに延長できる。 |
M1ビザ(専門学生ビザ)について
M1ビザはF1ビザと同じく学生ビザです。F1ビザとの違いは、専門的な技術を学ぶためにアメリカに留学する学生のためのビザです。デザインや美容、ダンス、パイロットなどといった分野の専門学校に進学する方はM1ビザでの留学を行うことができます。
アメリカへの滞在目的は「専門学校または専門機関での教育プログラムへの参加」に限られ、「週20時間以上の受講」が必須要件になります。
F1ビザと同じように指定の費用を支払った後「入学許可証(I-20)」が郵送されてきますので、M-1ビザの申請の準備を始めましょう。
M1ビザ(専門学生ビザ) | |
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M1ビザ対象者 | 滞在可能期間 |
専門技術を学ぶために アメリカに留学する学生 |
基本的には1年間 ※カリキュラムによって変動 |
F1・M1ビザの取得方法
上記の学生ビザを申請する方は、在日アメリカ大使館で領事官との面接があります。
在米国大使館や札幌・大阪・福岡・那覇の各総領事館によって申請方法が多少異なります。
そのため、下記の表から申請方法をご確認ください。ビザ申請には、長い時間を要するため、早めに申請準備を開始しましょう。
テキスト | |||
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提出する持ち物 | 確認事項 | ||
パスポート | 有効期限内でICチップが内蔵されているもの | ||
証明写真1枚 | 5×5の大きさで白い背景 直近6か月以内に撮影されたもの 眼鏡を外して撮影されている |
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オンライン事前審査(DS-160)で取得した申請コードとバーコード | DS-160のオンライン申請を完了すると発行されるページを印刷する。 | ||
領事官との面接の予約日時が記載されたページのコピー | 面接当日は長時間かかることが予想されますので、余裕を持ったスケジュールを心がけましょう。 | ||
留学先の教育機関が発行した入学許可証(II-20) | 留学先の学校責任者の名前が書かれた入学許可証 | ||
すでに失効しているパスポート | 失効したパスポートを持っていない場合は、持参する必要はないです。 |
はじめて学生ビザ申請をする時の注意点
上記の学生ビザ(F・M)や交換留学のためにJビザを取得するのが初めての方は、領事館との面接が免除され郵送でのビザ申請が可能です。対象者の条件は下記表のとおりです。
ただし、過去に逮捕歴のある方は対象外となります。
学生ビザ(F・Mビザ)面接免除の条件 |
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日本国籍の市民または、日本滞在中の中高生・大学生・教授・日本に短期滞在中の研究者 |
過去にESTA(エスタ)を利用して渡米した経験がある。 |
ESTA申請の際に渡航認証拒否の履歴がない |
ビザの種類を問わず、満14歳以降に米国ビザを取得した履歴がある |
J1ビザについて
J-1 ビザは交換留学生やトレイニーと呼ばれるインターン生等に発行されるビザです。提携された日本とアメリカの学校間での交換留学に利用されます。
J1ビザ申請の条件
米国大使館では、「交換訪問者プログラムであるJビザは、教育・科学・芸術分野における人材・知識・医術を促進するためのビザである」としています。
つまり、J1ビザの目的は研修や技術向上、国家間の人材育成の機会として設けられていることがわかります。そのため、J1ビザを取得するには多くの項目を満たしている必要があります。
J1 ビザを申請する条件 | |
---|---|
・J1ビザのインターンシップ先が決定している ・アメリカ渡航に必要な費用を持っている ・インターンシッププログラムに参加できるだけの英語力を備えている ・満18歳以上である |
J1ビザ滞在可能期間
J-1ビザでの滞在期間は基本的に1年間です。そのため、一年以上滞在することが目的の場合はF1ビザを取らなければなりません。
ESTAでのインターンシップや研究活動
ESTAを利用してアメリカへインターンシップや研究活動を行うことを目的として渡航する場合、無給のインターンシップであればESTAで入国することができます。
しかし、ESTAの申請条件の都合上、給料が発生するインターンシップや90日以上アメリカに滞在するインターンシップは出来ません。
従って、インターンシップを行いながら長期滞在したい場合は、学生ビザを取得して学校や語学学校に通いながらインターンシップを行いましょう。
J1ビザを自分で取得する方法
J1ビザを自分で取得したいという方は、まずJ1ビザの基本的な制度について知る必要があります。リンク先の記事ではJ1ビザについて分かりやすく解説を行っていますので、参考にしてください。
また、申請要件や特徴等も記載されていますので、どのような人材がJ1ビザを取得する事ができるのかも把握できます。
学生ビザが拒否されてしまった場合の対処方法
ESTAを取得する
学生ビザの申請が拒否されてしまった場合はESTAを申請しましょう。前述しているようにESTAでは、90日以内という短期でしか留学出来ず、週当たりの授業時間も制限されていますが、非常に大きな経験になります。
次の学期に再度学生ビザを申請する
ESTAでの短期留学以外の方法として、次の学期での入学に合わせて学生ビザを再申請する方法です。どうしても長期留学を行いたい方や、アメリカの大学で勉強を行いたい方はこちらの方法を取りましょう。
学生ビザの更新とESTA
基本的に学生ビザには更新は必要ありません。最初にビザを取得するときに希望した期間分の有効期限をもらえるためです。
ですが、学生ビザの更新が必要になる場合は、
①学生ビザが切れてしまうが、I-20が有効な場合
②学生ビザが切れてしまい、I-20お有効期限が残り少ない場合
のどちらか2種類です。
ビザの更新はアメリカでは出来ないため、一時的に日本に帰国する必要があります。
学生ビザの更新中にESTAでアメリカに渡航することは可能ですが、許可されていない活動、例として「週18時間以上の受講」や「学位取得を目的とした勉強」などは行うことはできません。
そのため、学生ビザの更新をしっかり待ってから再度アメリカに入国することをお勧めします。
ESTAでアメリカに入国した後に現地で学生ビザに変更することはできる?
ESTAで入国した後にアメリカで学生ビザにステータスを変更することは不可能です。
そもそもビザは、アメリカ入国前に日本で取得するものです。そのため、アメリカに滞在中に学生ビザを取得することは不可能です。
学生ビザからESTAに切り替えることはできる?
学生ビザを取得している方でもESTAに変更する事は可能ですが、注意点があります。
ESTAは、ビザ免除プログラムの一環で設けられた制度で、ビザとは全く別物です。
観光や短期商用等といった非常に限られた目的でしかアメリカに滞在することができないため、学生ビザ所持者のように授業を受けることができません。
もし、学生ビザから別のステータスに変更したい場合は、現在の許可された滞在期間が切れてから、適切な書類をUSCIS(アメリカ移民局)に提出しましょう。
学生ビザを既に所持している人はESTAを申請するべき?
既に学生ビザを所持している場合、別途ESTAを申請する必要はありません。ESTAによって許可されている活動は、学生ビザによって許可されている活動内に含まれているためです。
学生ビザをESTAを両方持つことのメリットは特にありませんが、デメリットとして不必要な申請による手間や費用、時間が掛かります。
また、学生ビザを持っているのにもかかわらずESTAを申請したことによって入国目的に関してアメリカ国境警備局に疑問を持たれてしまう可能性があり、入国審査が厳しくなる可能性があります。
そのため、学生ビザを持っている方は、留学以外の目的でアメリカに入国する際にも学生ビザを利用してアメリカに入国することをお勧めします。
まとめ
ESTAを利用してアメリカに留学する場合は、90日未満の短期留学をしたい方にピッタリな制度です。しかし、週18時間未満の授業しか受けられないため学術的なことを学ぶことはできません。
一方で、学生ビザを取得してアメリカ留学をする場合は、教育機関のカリキュラムに応じた期間アメリカに滞在できるので長期留学ができます。加えて、学術的なことを英語で学ぶこともできます。デメリットとしては、ビザ取得に非常に長い時間がかかりますので準備をしっかりしてから望みましょう。