短期滞在ビザの滞在期間は90日?滞在日数の数え方を徹底解説

日本ビザには「滞在期間」という概念があります。例えば、短期滞在ビザの滞在期間は15日、30日、90日のいずれかです。しかし、この日数の数え方はどうなっているのでしょうか。結論から言うと、滞在日数の数え方には、法律で定められたルールが存在します。このルールを知らないと、最悪の場合オーバーステイになってしまうかもしれません。そこで、本記事では、ビザの滞在期間の数え方について解説していきます。

また、「90日」の滞在期間が定められている「短期滞在ビザ」という在留資格の概要や申請方法、注意点も紹介しています。

ビザの滞在期間「90日」の数え方

ビザの滞在期間は入国した日から数えるという勘違いが良くありますが、これは誤りです。民法には「初日不算入のルール」というものがあり、期間の初日はカウントしません。

【民法140条】

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

つまりビザの滞在期間を数え始めるのは、「日本に入国した日の翌日」からということになります。たとえば、日本へ入国した日が4月1日で90日間滞在する場合は、6月30日まで滞在できることになります。

なお、日本入国(上陸)後の入国審査時に、パスポートに「証印シール」というシールが貼られます。
このシールに在留期限が記載されていますので、必ず確認しておくようにしましょう。

滞在期間「3月以内」の数え方

ビザによっては、〇〇日のような書き方ではなく、「3月」や「6月」という表現で滞在期間が指定されているものもあります。「3月」は3か月間、「6月」は6ヵ月間のことを指しています。例えば、日本入国日が5月5日であった場合、滞在可能期間の最終日は3か月後の8月5日になります。入国日の3か月後の日がそのまま期限になるだけですのでそこまで計算は難しくないです。

ただし、注意が必要になる場合もあります。例えば、入国日が11月30日であった場合、2月は28日までしかないので、計算がおかしくなってしまいます。
こういった場合のために、民法には期間計算に関する条文が用意されています。

【民法143条】

週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

このルールを先ほどの例に当てはめてみると、「月」によって期間を定めていますが、月の初めから期間を起算しているわけではありません。そして、上述の初日不算入のルールを当てはめると、起算日は12月1日で最終日は2月28日になります。

短期滞在ビザ(観光ビザ)とは?

ビザ(在留資格)にはいくつもの種類がありますが、滞在期間が90日間に定められているのは短期滞在ビザのみです。
短期滞在ビザ(在留資格:「短期滞在」)とは、日本への渡航目的が旅行や親族訪問、商用の場合に申請するビザです。毎年多くの観光客に利用されているポピュラーな在留資格ですが、滞在日数や種類など注意しなければならない点が多く存在します。

そこで、本記事では短期滞在ビザについて解説を加えたいと思います。

短期滞在ビザの対象になる訪日目的

短期滞在ビザを取得して日本に滞在するためには、訪日目的が①観光②親族・知人訪問③短期商用のいずれかである必要があります。

①観光
これは、日本での滞在目的が観光地への訪問等である場合です。短期滞在ビザの取得目的の中では、最も多い目的であると言えます。

②親族・知人訪問
日本滞在の目的が日本国内にいる家族や友人に会うことである場合です。このケースでは、外国人を日本に招待しようとする家族や友人が「招へい理由書」という書類を作成する必要があります。

③短期商用
日本滞在の目的が商談やPRなどのビジネス目的である場合です。ただし、短期滞在ビザはいわゆる「就労ビザ」ではないので、報酬を受け取る活動を行うことはできません。つまり日本で行うことができるのは、無報酬の商用(ビジネス)行為に限られるということです。「短期商用」というカテゴリーですが、スポーツ大会への参加などもこのカテゴリーの対象となります。

なお、②の場合と同様に、「招へい理由書」を準備する必要があります。

短期滞在ビザを取得しなければならない国籍

以下の表に記載されている国の国籍を有している方は、短期滞在ビザ(査証)を取得しなければなりません。

逆に言うと、この表に記載のない国の国籍を有している方は短期滞在ビザを取得する必要がありません。詳しくは「査証免除制度」の章をご覧ください。

インド・カンボジア・スリランカ・中国・ネパール・パキスタン・バングラデシュ・東ティモール・フィリピン・ブータン・ベトナム・ミャンマー・モルディブ・モンゴル・ラオス・アンティグア・バーブーダ・エクアドル・ガイアナ・キューバ・グレナダ・コロンビア・ジャマイカ・セントクリストファー・ネーヴィス・セントビンセント・セントルシア・ドミニカ・トリニダード・トバゴ・ニカラグア・ハイチ・パナマ・パラグアイ・ベネズエラ・ベリーズ・ペルー・ボリビア・キリバス・クック・モア・ソロモン・ツバル・トンガ・ナウル・ニウエ・バヌアツ・パプアニューギニア・パラオ・フィジー・マーシャル・ミクロネシア・アフガニスタン・イエメン・イラク・イラン・オマーン・カタール・クウェート・サウジアラビア・シリア・バーレーン・ヨルダン・レバノン・アルジェリア・アンゴラ・ウガンダ・エジプト・エチオピア・エリトリア・ガーナ・カーボヴェルデ・ガボン・カメルーン・ガンビア・ギニア・ギニアビサウ・ケニア・コ-トジボワール・コモロ・コンゴ共和国・コンゴ民主共和国・サントメ・プリンシペ・ザンビア・シエラレオネ・ジブチ・ジンバブエ・スーダン・スワジランド・セーシェル・赤道ギニア・セネガル・ソマリア・タンザニア・チャド・中央アフリカ・トーゴ・ナイジェリア・ナミビア・ニジェール・ブルキナファソ・ブルンジ・ベナン・ボツワナ・マダガスカル・マラウイ・マリ・南アフリカ共和国・南スーダン・モーリタニア・モザンビーク・モロッコ・リビア・リベリア・ルワンダ・アゼルバイジャン・アルバニア・アルメニア・ウクライナ・ウズベキスタン・カザフスタン・キルギス・コソボ・ジョージア・タジキスタン・トルクメニスタン・バチカン・ベラルーシ・ボスニア・ヘルツェゴビナ・モルドバ・モンテネグロ・ロシア

※日本の在外公館が設置されている国・地域のみ

短期滞在ビザの滞在日数

短期滞在ビザの滞在日数には、15日間、30日間、90日間の3種類があります。
短期滞在ビザ申請の際に、申請者(来日予定の外国人)が希望の滞在日数を申告することができますが、必ずしも希望が通るとは限りません。最終的に滞在期間を決定するのは入国審査官です。

なお、原則として滞在期間が長くなるにつれてビザ審査も厳しくなると言われています。ビザ申請の段階では日本出国の予定が決まっていない方もいらっしゃると思いますが、あまりに長い滞在期間を申請すると、ビザ自体が取得できなくなってしまう可能性もありますので注意してください。

暗黙の「180日ルール」とは?

短期滞在ビザには、15日間、30日間、90日間の3種類の滞在期間がありますが、これとは別に1年間で日本に滞在できる期間も定められています。
なぜなら、短期滞在ビザは日本を出国したあとすぐに、再度取得することも可能だからです。つまり、短期滞在ビザを用いて、日本に長期滞在することができてしまいます。
例えば、90日間の滞在期間が与えられていたとしても、1度日本を出国し、再度入国した後に90日間の滞在が可能になってしまうということです。しかし、これでは滞在期限を決めた意味がなくなってしまいます。
こういったケースを防ぐために、短期滞在ビザで日本に滞在することができるのは「最長でも6か月(180日)まで」というルールがあります。

ただし、「ルール」といっても明文で規定されているわけではなく、実用上の暗黙のルールにすぎません。

「180日」の計算は短期滞在ビザで認められた滞在可能日数ではなく、実際に日本に滞在した期間を数えます。例えば、30日間の滞在期間があったが、実際には15日しか滞在しなかった場合は、15日として計算します。この方法で計算して、日本での年間滞在日数が180日を越えてしまいそうな状況で短期滞在ビザを申請すると、ビザ申請が不許可になる可能性があります。
短期滞在ビザはあくまで「短期間」日本で滞在できるビザです。1年間の滞在日数180日を越えてしまうことがないようにしましょう。どうしても180日を越えてしまいそうな場合は、他のビザの取得を検討しましょう。他のビザであれば、年単位での滞在が許される可能性もあります。

なお、180日ルールにおける「1年間」の数え方についてですが、この1年間は1月1日から12月31日までという意味ではありません。次に日本に滞在する場合の出国予定日から遡って1年間(365日)のことを言います。

短期滞在ビザ(査証)の有効回数

短期滞在ビザは、種類ごとに入国できる回数にも違いがあります。一次査証、二次査証、数次査証の3種類に分けることができます。

①一次査証(シングルビザ)
一回の入国のみが許されているのが「一次査証(シングルビザ)」です。原則として、どの国籍であっても申請できることからもっとも一般的な短期滞在ビザということができます。

ただし、3か月の有効期限が定められている点には注意が必要です。また、基本的に短期滞在ビザには更新という制度がありません。つまり、短期滞在ビザの発給を受けた日から3か月以内に日本へ入国しない場合は、もう一度ビザの申請をしなければならないということです。

②二次査証(ダブルビザ)
2回までの入国が許されているのが「二次査証(ダブルビザ)」です。一次査証(シングルビザ)とは違い、いくつかの条件を満たさねければ申請することができません。ここで言う「条件」は国籍や外国人本人の身分、職業などです。一次査証(シングルビザ)の入国有効期間が3か月であるのに対して、二次査証(ダブルビザ)の入国有効期間は6か月です。

③数次査証(マルチビザ)
有効期限内であれば入国回数に制限がないのが「数次査証(マルチビザ)」です。この査証も二次査証と同様に、申請するための条件が定められています。入国有効期間は、来日目的等によってさまざまですが、原則は1年間以上です。

短期滞在ビザの申請方法

この章では、短期滞在ビザ申請時の必要書類や全体的な流れを紹介していきます。ただし、申請者の国籍や訪日目的などによって異なってきますので、あくまで一例にすぎません。短期滞在ビザを申請する際は、在外公館(日本国外にある大使館・領事館)などのHPを確認するようにしてください。

ビザ申請の用語解説

短期滞在ビザ申請のためには、「申請人」「招へい人」「身元保証人」という用語の意味を理解しなければなりません。そこまで難しい概念ではありませんので、この章で理解しておきましょう。

①「申請人」
この言葉は、短期滞在ビザを申請しようとする外国人本人のことを指しています。短期滞在ビザは日本にいる協力者が代理で手続きすることも多いため、「必要書類を準備する人」のことだと勘違いしがちですが、そうではありません。手続きを行ったのがだれであれ、「申請人」は外国人本人です。

なお、査証免除国の国籍を有しない人は、全員「申請人」になります。年齢や性別に関わらず全員申請人にならなければなりません。ただし、複数人で同時に申請を行う際は、「申請人名簿」という書類を添付すれば、まとめて申請することが可能です。

②「招へい人」
この言葉は、ビザ申請者を日本に招待する人のことを指しています。例えば、外国人の来日目的が家族や友人に会うことであれば、日本国内にいる家族や友人が「招へい人」になります。また、商談のために外国の取引相手を日本に招待したい場合は、日本の企業が「招へい人」になります。
招へい人になるための条件は「日本国内に住民票があること」ですので、日本国籍を有していない外国人であっても、住民票があれば招へい人になることができます。
これとは逆で、日本国籍を有しているが日本に住民票がない(海外に住んでいる)というケースでは、招へい人になることができません。

③「身元保証人」
身元保証人とは、申請人の日本入国後に滞在費、帰国費などのトラブルがあった際にサポートしたり、日本の法令を守らせることを約束する人です。
招へい人と同様に、日本国内に住民票があることが条件になっており、さらに「一定の資力があること」も求められます。

なお、招へい人と身元保証人は1人が兼任することができます。

必要書類

短期滞在ビザ申請時の必要書類の一例を紹介します。訪日目的ごとに必要になる書類が変わってきますので注意してください。なお、申請人の状況や滞在予定日数によっても必要書類は変化します。ここで紹介するのはあくまで一例であることをご留意ください。

〇観光

  • 申請書
  • 有効期限内のパスポート
  • 証明写真
  • 滞在費用があることを証明する書類
  • 滞在予定表、滞在日程表

〇親族・知人訪問

【本人が用意するもの】

  • 申請書
  • 有効期限内のパスポート
  • 証明写真
  • 滞在費用があることを証明する書類
  • 親族関係、知人・友人関係を証明する書類

【招へい側が用意するもの】

  • 招へい理由書
  • 招へい理由を証明する資料
  • 滞在予定表、滞在日程表
  • 身元保証書

③短期商用

【本人が用意するもの】

  • 申請書
  • 有効期限内のパスポート
  • 証明写真
  • 滞在費用があることを証明する書類
  • 在職証明書

【招へい側が用意するもの】

  • 招へい理由書
  • 滞在予定表、滞在日程表
  • 身元保証書

申請先

短期滞在ビザの申請は、ビザ申請人(外国人)の国にある日本大使館や日本領事館に対して行います。

審査期間

短期滞在ビザの審査期間は、おおむね1週間から2週間程度です。滞在期間の長さに違いがあっても大きく審査期間が変わるということはありません。ただし、これはビザ申請人が大使館・領事館に必要書類等を提出してから審査が完了するまでの期間のことです。必要書類の準備にかかる時間や短期滞在ビザの証印が入ったパスポートを受け取るまでの期間まで含めると1か月近くかかる例もありますので、時間に余裕を持った申請を心がけるようにしましょう。

申請費用

短期滞在ビザの申請費用は一律に定められているわけではありません。各国の大使館・領事館ごとに定められていますので、申請の前にHPで確認しておくのがおすすめです。

なお、滞在期間に関わらず料金は同じです。つまり滞在期間が15日の短期滞在ビザでも、90日の短期滞在ビザでも同じ値段で申請することができます。

短期滞在ビザの更新

原則として、短期滞在ビザは更新(延長)することはできません。病気やケガなどやむを得ない理由がある場合は例外的に認められることがありますが、基本的に更新は無いものと思っておきましょう。
また、同じ短期滞在ビザであっても、滞在期間によって更新(延長)のしやすさが変わってきます。90日間の滞在を許された短期滞在ビザであれば、更新(延長)が認められる可能性もありますが、15日の短期滞在ビザで更新(延長)を認めてもらうためには、よっぽどの「やむを得ない理由」が必要になると言えます。

なお、更新の場合でも上述の「180日ルール」が適用される点には注意が必要です。

また、短期滞在ビザ(査証)取得の際の申請先は在外公館(国外の日本大使館・領事館)ですが、短期滞在ビザの更新(延長)手続きは、申請者(外国人)が自ら出入国在留管理庁(出入国在留管理局)へ出向いて、必要書類を提出して申請します。取得と更新(延長)で申請先が異なりますので注意しましょう。

短期滞在査証免除制度

短期滞在ビザには、査証免除(ビザ免除)制度というものがあります。

査証免除制度とは、日本と査証相互免除の取り決めをしている国の国民であれば、短期滞在ビザ(査証)が免除されるという制度です。これらの国は外務省が定めており「査証免除国」と呼びます。現在、査証免除国は68の国と地域が定められています。次の章で「査証免除国」一覧を掲載しますので、確認してみてください。

注意が必要なのは、短期滞在の場合に査証が免除されるだけという点です。短期滞在ビザの対象にならないような留学や就労の場合は、査証の免除を受けることができません。

査証免除を受けた場合の在留期間は各国で様々ですが、インドネシアやタイは15日間、ブルネイは14日間、アラブ首長国連邦は30日間、その他の国・地域については90日間とされています。

アジア地域
・インドネシア ・シンガポール ・タイ(15日以内) ・マレーシア ・ブルネイ(15日以内) ・韓国 ・台湾 ・香港 ・マカオ
北米地域
・米国 ・カナダ
中南米地域
・アルゼンチン ・ウルグアイ ・エルサルバドル ・グアテマラ ・コスタリカ ・スリナム ・チリ ・ドミニカ共和国 ・バハマ ・バルバドス ・ホンジュラス ・メキシコ ・ブラジル(令和5年9月30日から)
オセアニア地域
・オーストラリア ・ニュージーランド
中近東地域
・アラブ首長国連邦(UAE) ・イスラエル ・トルコ
アフリカ地域
・チュニジア ・モーリシャス ・レソト
ヨーロッパ地域
・アイスランド ・アイルランド ・アンドラ ・イタリア ・エストニア ・オーストリア ・オランダ ・キプロス ・ギリシャ ・クロアチア ・サンマリノ ・スイス ・スウェーデン ・スペイン ・スロバキア ・スロベニア ・セルビア ・チェコ ・デンマーク ・ドイツ ・ノルウェー ・ハンガリー ・フィンランド ・フランス ・ブルガリア ・ベルギー ・ポーランド ・ポルトガル ・マケドニア旧ユーゴスラビア ・マルタ ・モナコ ・ラトビア ・リトアニア ・リヒテンシュタイン ・ルーマニア ・ルクセンブルク ・英国

まとめ

本記事はいかがだったでしょうか?ビザの滞在期間の数え方はルールを知っていれば、簡単に計算することができます。しかし、この数え方を知らないとオーバーステイになってしまうこともあり得ます。本記事で紹介した数え方をしっかりと理解して、トラブルを未然に防ぎましょう。

また、短期滞在ビザについても解説をしました。短期滞在ビザはポピュラーな在留資格ですので、よく知っている方も多いと思います。しかし、「180日ルール」は意外と知らない人が多いです。このルールを知らないままビザ申請をしてしまうと、審査に落ちてしまう可能性があります。思い当たる節がある方は、申請の前に必ず確認しておくようにしましょう。

関連記事