ビザの取り方を知っていますか?ビザの要件や種類を徹底解説!

原則として、外国人がある国に入国しようとするときはビザを取得しなければなりません。
しかし、取得するべきビザの種類やビザ申請の方法には少し難解な点があります。
そこで本記事では、ビザの概要と種類に関しての解説をした後に、ビザの取り方やビザの要件についてご紹介します。最後にはビザを取得しなければ入国できないおもな国々についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

そもそもビザとは?

ビザとは、本人が持っているパスポートが真正なものであるという「裏付け」と、その国へ入国しても問題ないという「お墨付き」を外国政府に認めてもらうものです。簡単に言うと「入国許可証」のようなものです。
ビザは、パスポートにスタンプの形式で発給されることが多いです。ただし、紙のタイプもあります。この場合はパスポートに貼り付けます。日本語では、「査証」と呼ぶこともあります。

ビザを取得するためには、大使館・領事館による審査を受けなければなりません。書類に不備があったり、犯罪歴があったりする場合はビザの取得を認めてもらえないこともあります。

「現地で長期間滞在する場合にはビザを取得しなければならない」という勘違いがよくありますが、国によっては短期間の滞在でもビザを取得しなければならない場合があります。ビザを取得しないまま目的地に着いたとしても、「入国許可証」を持っていないとみなされるため入国できません。この場合は、強制帰国となってしまいます。
ただし、日本のパスポートは大変信用が高いため、ビザを取得しなくても入国できる国がたくさんあります。現在68の国と地域が、短期旅行の場合のビザなし入国を認めています。

ビザとパスポートの違い

海外の国に入国するためには、必ず有効なパスポートが必要です。また、上述の通り渡航先、渡航目的、滞在期間などによってはビザが必要になる場合もあります。ビザについて詳しく解説をする前に、パスポートとビザの違いをはっきり理解しておきましょう。

  • パスポート

パスポートとは、自国の政府によって発行してもらうもので、氏名や生年月日、国籍などを証明できる身分証明書です。海外に滞在しているうちは、パスポートが唯一の身分証明書となります。当然、ビザの申請時にも有効なパスポートを提出するよう求められます。
なお、パスポートの有効期限は5年か10年です。

  • ビザ

ビザは、入国許可証としての役割を担っています。渡航先の国が自国の治安維持のために入国の可否を判断して、発給するかどうか決めます。

ビザとESTAの違い

よくビザと混同されがちなものに「ESTA(エスタ)」というものがあります。これは、一定の条件を満たしている人物がアメリカへ入国する際に、ビザの取得を免除してもらう制度です。米国での滞在期間が90日以内かつ渡航目的が観光か短期商用(ビジネス)である場合に、ESTAの対象になります。
ただし、審査が無いというわけではなく、今までの渡航歴や犯罪歴などの要件を満たす必要があります。
ESTAの審査に落ちてしまった場合や滞在期間が90日以上である場合、滞在期間が90日以内でもアメリカへの渡航目的が就労・留学等である場合はビザを申請しましょう。

ESTAの有効期限は2年間です。ただし、ESTAはパスポートに紐づけて管理されるため、パスポートの有効期限が先に切れてしまった場合は、ESTAも同時に失効することになります。
ESTAの申請は、ESTA公式サイトから行います。氏名や生年月日などの個人情報と、犯罪歴や感染症などの欠格条件の確認があります。これらの情報を正確に入力した後に、申請料金を支払えば申請手続きは完了となります。審査の終了まで通常72時間以内とされています。なお、申請料金は1人21ドルです。

ビザの種類

ビザには、渡航目的に合わせて多くの種類が用意されています。ビザを取得しようとするときは、必ず正しい種類のビザを申請しなければなりません。
以下では、代表的なビザの種類をいくつか紹介します。

観光ビザ

よく耳にするのが、「観光ビザ」です。渡航目的が観光である場合に取得します。それぞれの国によって必要になる条件が異なりますが、アメリカの観光ビザである「Bビザ」は、米国への渡航目的が観光であって、滞在期間が90日を越える場合に取得が求められます。

就労ビザ(ビジネスビザ)

就労ビザとは、ビジネスビザとも呼ばれ、渡航目的が現地での就労である場合に取得するものです。

ワーキングホリデービザ

ワーキングホリデー制度とは二国間の協定に基づき、休暇を過ごすための入国を特別に許可するという制度です。現地で就労するためには就労ビザが必要だと説明しましたが、ワーキングホリデーの制度を利用すれば滞在費を補うための就労が可能です。ただし、年齢制限がある点には注意が必要です。ワーキングホリデー制度を利用できるのは、18歳から30歳までと定められています。現在、23か国が日本とワーキングホリデー協定を結んでいます。

学生ビザ

学生ビザとは、海外に留学に行く際に必要になるビザです。アメリカの場合は、留学先の教育機関が高校、大学、語学学校等であるときには「F-1ビザ」、専門学校等であるときには「M-1ビザ」を取得します。

ビザなし渡航の要件

日本のパスポートは大変信頼されているため、ビザなし渡航が許可されている国がたくさんあります。ただし、全くの無条件で入国できるというわけではなく、各国様々な要件が設定されています。以下では、一般的なビザ免除の要件を紹介していきます。

パスポートの有効期限

パスポートの有効期限はどの国でも要求される要件です。多くの国は、入国時にパスポートの有効期限が1か月から半年程度残っていることを要件としています。パスポートの有効期限が切れてしまいそうなときは、早めの更新を心がけましょう。

滞在日数

長期間滞在したい場合は、基本的にビザが必要になります。これも国ごとに様々ですが、30日から180日程度の滞在期間であれば、ビザなし渡航が許される例が多いです。たとえば、アメリカは滞在期間が90日以内の渡航者をビザなし渡航の対象としています。
なお、滞在日数の要件に加えて、出国便の搭乗券を保有していることを要件としている国もありますので注意してください。

渡航目的

どんな短期間の滞在でも、渡航目的によってはビザの取得が必要になるケースがあります。ビザなし渡航が認められる渡航目的の例としては、観光・短期商用・乗り継ぎ(トランジット)などがあります。アメリカの例だと、渡航目的が観光または短期商用の際にビザなし渡航の対象になります。なお、ここでいう「短期商用」とは就労に当たらない商用行為のことを言います。たとえば、取引先である米国企業との商談や商品の仕入れなどが「短期商用」に該当する行為です。

欠格要件

渡航歴や犯罪歴に問題があったり、二重国籍であったりする場合は、ビザの免除を受けられない可能性があります。例えばアメリカの場合、イラン・イラク・シリア・キューバなどへの渡航歴があるとビザなし渡航は認められません。

ビザの取り方

日本に対してビザ免除を認めていない国(ブラジルやロシアなど)に入国したい場合や、ビザ免除を受けられない渡航目的(就労や留学など)で滞在したい場合はビザを取得する必要があります。
ビザの申請のためには、基本的に日本にある大使館または領事館で面接を受ける必要があります。ただし、国によってはオンライン申請を認めている場合もあります。
そこで、以下では「大使館・領事館での申請」の場合と「オンライン申請」の場合に分けてビザの取り方を解説していきます。

大使館・領事館での申請の場合

オンラインでのビザ申請を認めていない国の場合や、面接が必須となっているビザを取得しようとする場合には、大使館・領事館で申請をします。なお、オンライン申請が認められている場合であっても、大使館・領事館で申請ができないとは限りません。

一般的な必要書類は以下のようなものです。ただし、これはあくまで一例ですので、ビザ申請の際には必ず大使館のHP等で確認をしてください。

  • 申請書
  • パスポート(現物)
  • 証明写真
  • 査証料金

※証明写真は、渡航先の国によって大きさやルールが異なることがあります。申請の前に必ず確認をしてください。また、証明写真の提示を求めない国もあります。

オンライン申請の場合

オンラインでの申請は「e-VISA(電子ビザ)システム」を利用して行います。近くに大使館・領事館がない場合は、オンライン申請が大変便利です。オンライン申請に対応している国は、大使館・領事館の公式HPに申請ページがありますので、そこへアクセスします。申請情報を送信した後に届くメールは、その後の手続きで必要になる可能性があるので大切に保管しておきましょう。無事ビザを取得できた際は、メールに添付される形式で送られてきます。紛失しないように大切に保管し、印刷もしておきましょう。

一般的な必要書類は以下のようなものです。ただし、これはあくまで一例ですので、オンラインビザ申請の際には必ず大使館のHP等で確認をしてください。

  • パスポートのコピー
  • 証明写真のデータ
  • 査証料金

ビザ取得までに必要な日数

ビザ取得までにかかる日数は、一般的には1週間程度と言われています。ただし、提出書類に不備があるケースや厳格な審査が必要なビザ(就労ビザなど)の場合は、1か月から3か月程度かかる場合もあります。不測の事態に備えるためにも、余裕を持った申請をおすすめします。

ビザの有効回数と有効期限

ビザを取得したからといって、何度でも入国できるというわけではありません。基本的に1回限り有効なものだと考えてください。また、ビザには有効期限があります。有効期限が切れてしまった場合には、そのビザを利用しての入国はできなくなってしまいますので注意が必要です。

なお、ビザの有効期限と滞在可能期間が異なるという点にも注意が必要です。ビザの有効期限とは、取得したビザを使って入国審査を受けられる期限のことです。一方の滞在期間は、入国審査の際に入国審査官によって決定されるものです。

ビザの発給要件

ビザを発給するかどうかの要件が定められていることがあります。この要件は国ごとに様々ですが、今回は日本の外務省が公表している「ビザの原則的発給基準」を例に解説していきます。

申請人が有効な旅券を所持しており、本国への帰国又は在留国への再入国の権利・資格が確保されていること

「旅券」とは、パスポートのことです。つまり前半部分は、有効なパスポートを持っているかということです。ビザ申請の場合に、パスポートを保有していないというケースは少ないと思いますが、有効期限には注意が必要です。有効期限が切れているパスポートは「有効な旅券」とはみなされません。後半部分は、あくまでビザは一時的な滞在を認めるものであって移住を認めるものではないということです。

申請に係る提出書類が適正なものであること

これはそのままの意味で、提出書類に不備があった場合はビザの発給を認めないということです。申請情報に虚偽の記載があった場合にビザを認められないのは当然ですが、記載不足、記載ミスがある場合にも申請が却下されてしまう可能性があります。一度でもビザの却下履歴が残ると、その後のビザ申請に大きな影響を与える可能性がありますので、提出書類の記載には細心の注意を払ってください。

申請人が日本において行おうとする活動または申請人の身分もしくは地位及び在留期間が、入管法に定める在留資格及び在留期間に適合すること

申請するビザの区分や来日目的と本人の状況が一致していない場合は、ビザを発給することはできないということです。例えば、学生ではないのに学生用のビザを申請していたり、就労目的なのに観光ビザを申請しているような場合は、ビザは発給されません。

申請人が入管法第5条第1項各号のいずれにも該当しないこと

入管法第5条第1項各号は、「次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。」として、14の類型の拒否理由を定めています。いくつか抜粋すると、一定の感染症に罹患しているまたはその可能性がある、日本国内外を問わず犯罪歴がある、強制退去歴があるなどの事項が拒否理由として定められています。

ビザが必要になるおもな国

現在、日本のパスポートを保有している人が海外へ渡航する際に、ビザを取得しなければならない国は33ヵ国あります。そこで、この章ではビザを取得しなければ渡航できない国々を地域ごとに解説していきます。
※入国時に空港で申請・取得が可能な「アライバルビザ」は対象外としています。

アジア地域

アジア地域でビザが必要なのは、北朝鮮、ブータン王国、トルクメニスタンなどです。それぞれの国とビザの状況について軽く解説します。

  • 北朝鮮

日本と北朝鮮は正式な国交を結んでいませんので、日本国内でビザを取得することは不可能です。ビザを取得するためには、中国にある日本大使館・領事館等で申請をします。

  • ブータン王国

世界一幸せな国と言われるブータン。断崖絶壁に建てられたタクツァン僧院や二つの川の合流地点に建っているプナカ・ゾンというお城などが人気の観光地です。
ブータンのビザ制度は少し特殊で、事前にブータン旅行を取り扱っている旅行会社を経由して入国許可証を取得します。その後、ブータンへの入国時にビザが発給されるという流れになっています。

  • トルクメニスタン

トルクメニスタンのビザは、在日大使館で取得することができます。ただし、トルクメニスタン入国管理局からの招聘状を持っている方のみが対象となります。

ヨーロッパ地域

ヨーロッパ地域でビザが必要なのは、ロシア連邦、アゼルバイジャン共和国などです。ヨーロッパ地域では「シェンゲン協定」という加盟国間の自由移動に関する条約が締結されています。旅行者は一定の制限のもと、加盟国間を自由に移動することが許されます。「シェンゲン協定加盟国」の例としては、フランスやドイツ、イタリアなどがあります。

  • ロシア連邦

ロシア連邦は旅行先として大変人気な国ですが、事前にビザを取得しなければ入国することはできません。また、ビザを取得するためには、半年以上の有効期限が残っているパスポートも必要になります。

  • アゼルバイジャン共和国

カスピ海沿岸に位置するアゼルバイジャン共和国。国土は日本の4分の1ほどですが、豊富なエネルギー資源を有しています。
アゼルバイジャンも事前にビザ取得が必要な国です。ただし、一部の空港ではその場でアライバルビザを取得できる場合もあります。

中東地域

中東地域でビザが必要なのは、サウジアラビア王国、レバノン共和国などです。中東地域の国々は、政情が不安定な国も多いため入国審査が厳しい傾向にあると言えます。

  • サウジアラビア王国

中東の大国サウジアラビア王国。歴史的な遺産が多く残っていることから人気の観光地です。渡航目的が商用・就労であるときはビザ、観光目的であるときはE-VISAを取得します。ただし政治上の理由から、パスポートにイスラエルへの渡航履歴が存在する場合、ビザを発給するか否かは領事の判断に委ねられることになります。
なお、一部の州には外務省より渡航中止勧告が出ています。渡航の際は十分注意しましょう。

  • レバノン共和国

「レバノン杉」があしらわれている国旗が特徴的なレバノンも事前のビザ取得が必要な国です。ただし、こちらも政治上の理由から、パスポートにイスラエルへの渡航履歴が存在する場合、ビザは発給されないことになっています。
また、イスラエルとの国境付近の地域に関しては、外務省より退避勧告が出ています。「退避勧告」とは、最も危険レベルが高い状況です。

まとめ

本記事はいかがだったでしょうか。ビザという制度は少し複雑で取っつきにくいと感じる方もいるかもしれません。しかし、概要を理解した後に、ビザの取り方やビザの要件を理解してしまえば、そこまで難しいものではありません。ビザ申請の際は、ぜひ本記事を参考にして、楽しい海外渡航を実現させてください。

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