ESTAは、アメリカ渡航の際に事前に申請・取得をすることで、ビザの取得なく米国入国が可能になります。そのため、利用する方が多いのではないでしょうか?
ESTAは、観光目的及び短期商用を目的とした渡航時に利用することができます。しかし、ESTAを短期商用で利用した際には、注意すべき点があります。
本記事では、短期商用でESTAを利用した際の注意点を、ESTAの概要を含めて解説していきます。また、ESTAを利用できない場合の対処法についても解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
ESTAの利用条件にある『短期商用』とは?
ESTAを取得して短期商用目的でアメリカに渡航する場合、アメリカで源泉が発生する労働は禁止されています。
つまり、アメリカ国内で雇用関係に基づく就労は出来ないということです。
そのため、アメリカで金銭の受け取りがある場合、ESTAは使用できません。
ESTAで許可されている短期商用とは、「アメリカで賃金が発生せず、かつビジネスに関連した活動」のみに絞られてしまいます。
具体的には、下記のような例です。
ESTA短期商用の具体例 |
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・日本の会社に勤務している方がアメリカの取引先と商談・会議・買い付けを行う場合 |
・契約の締結 |
・カンファレンスへの出席 |
・訴訟手続き |
・市場調査 |
・短期研修や出張 |
・研究会への参加 |
・新製品発表会への参加 など |
ESTAの利用条件(ESTAのルール)
ESTAはVWP参加国の国籍を持った渡航者である必要があります。また、過去に重大な犯罪を犯していないことも条件となります。
上記に加え、その他詳しい条件について表でまとめましたのでご覧ください。
ESTAの利用条件 |
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・VWP参加国の国籍を所持している ・ICチップ搭載のパスポートを所持している ・渡航に有効な航空券を所持していること ・過去に重大な犯罪歴がないこと ・米国の定める伝染病に罹患していないこと ・長期滞在の意思がないこと ・90日以内の滞在かつ渡航目的が観光か短期商用であること |
なお、2011年3月1日以降にキューバ、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、リビア、ソマリア、イエメンに渡航または滞在したことのある方はVWPを利用した渡米はできたいため、ESTAの取得ができません。より詳しいESTA利用条件の解説は「ESTA(エスタ)とは?システムや取得条件について徹底解説」をご覧ください。
短期商用でESTAを利用する際の滞在日数について
ESTAを利用して渡米した場合、アメリカで滞在出来る期間は90日以内です。
また、90日はESTA所持者がアメリカに滞在できる最長の期間であり、全ての方が90日間滞在できるわけではありません。
実際の滞在期間は、アメリカ入国時に入国審査官によって滞在予定に沿って決められます。
例えば、10日間取引先との会議や買付け等を行うことを予定している方は予定を超えた90日間の滞在はできないということです。
上記の「長期滞在の意思がないこと」という条件のように、目的の遂行後、速やかに帰国する意思が無ければESTAの発給がされません。
また、ESTAの年間滞在日数には、特に制限が定められていません。しかし、90日に近い滞在を繰り返してしまうと、不法移住を疑われてしまい入国審査が厳しくなってしまうため注意が必要となります。
ESTA申請に必要な書類は?
ESTA申請に必要な書類は、クレジットカードと申請者のパスポートのみです。
申請にあたって必要な情報については、「ESTA申請の際に必要な情報とは?」を御覧いただくことで、申請する項目ごとに解説を記載しています。
ESTAは何日前に申請をすべきか
ESTA申請は、渡航日の72時間前には申請し終わっていることを推奨しています。
主な理由として、ESTA申請の結果が出るまでにかかる時間は最長72時間であるためです。
申請処理に長い時間がかかったとしても、渡航には間に合います。
「ESTA申請は最短でどのくらい?申請にかかる時間と申請時期について解説」では、ESTA申請を何日前までにすべきか、申請を処理する時間はどのくらい掛かるか等について解説しています。併せてご確認ください。
ESTAを取得した場合はビザ(査証)が不要
ESTAとは、アメリカのビザ免除プログラム(VWP)を利用する渡航を行う際に、必要となる電子渡航認証です。そのため、ESTAの利用条件下で渡航を行う際に、ESTAを取得している場合は、米国ビザ(査証)の取得は不要となります。
なお、既に渡航に有効なビザ(査証)を取得している場合は、ESTAの取得が不要となるため、注意しましょう。
アメリカ渡航を行う際は、既に有効なビザ(査証)又はESTAを保持しているのか、事前に確認をし、二重にESTAの取得することや、不必要なビザ(査証)の取得を行わないようにしましょう。
短期商用でもビザ(査証)が必要になる場合
ESTA申請を却下されてしまった場合以外にも、アメリカで90日を超える滞在を予定している場合やアメリカ国内の企業から報酬が発生するビジネスの場合は、ビザの取得が必要となります。
また、過去に逮捕歴や有罪判決を受けたことがある方、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、リビア、ソマリア、イエメン及びキューバに渡航または滞在したことがある方はESTAの取得ができないため、ビザを取得する必要があります。
90日を超える商用の場合はBビザの取得、アメリカでの報酬が発生する商用の場合は就労ビザ(H,L,O,P,Q)から該当するビザの取得を行いましょう。
B-2ビザについて
Bビザとは、短期の商用または観光を目的としたアメリカ入国時に利用できるビザです。Bビザには、商用を目的としたB-1ビザと観光を目的としたB-2ビザがあります。
観光や短期商用を目的としたアメリカ渡航の際は、滞在期間が90日以内ならESTAの取得で入国が可能です。しかし、渡航目的が商用や観光かつ90日以上の滞在を目的としている場合や、ESTAが認証拒否になってしまった場合は、Bビザの取得が必要となります。
短期商用目的でBビザを取得する予定の方は申請方法や必要になる書類等を解説している「アメリカBビザの有効期限と滞在期間はどれくらい?概要や取得方法を徹底解説」をご確認の上、大使館に連絡を行いましょう。
B‐2ビザの申請要件について
Bビザでの商用とは、取引先との会合、科学、教育、専門、ビジネス分野の会議への参加、財産の処理、契約交渉の事を指します。いずれも、米国の企業などからの報酬が伴わないことが条件となります。
Bビザの申請を行う際は、申請料金に加えて必要書類の提出を行ってください。
Bビザの申請要件については下記表をご参照ください。
Bビザの申請要件 | |
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渡航目的 |
・取引先との会合 ・科学、教育、専門、ビジネス分野の会議への参加 ・財産の処理 ・契約交渉 |
申請資格 |
・ビジネス、娯楽、治療などの一時的な訪問を渡米目的としていること ・限られた一定の期間のみ米国で滞在する計画であること ・米国での滞在費をまかなう資金の証明 ・米国外に居住していること および米国外で社会的・経済的に強いつながりがあり、 滞在期間の終了時に確実に帰国すること |
申請書類(商用の場合) |
・非移民ビザオンライン申請書(DS-160フォーム) ・米国での滞在期間に加え、6ヶ月以上の有効期限が残っているパスポート ※日本国籍の方は国別協定によって6ヶ月以上の有効期限は不要である ・過去10年間に発行された古いパスポート ・証明写真 ※メガネ着用の写真は不可 ・相互互恵的関係に基づくビザの手数料 ※日本国籍の方は免除 【補足書類】 ・職位、給与、勤続年数、休暇許可、米国への旅行に際して 仕事上の目的がある場合はその目的、を詳述した雇用主の書簡 ・逮捕されたり有罪判決を受けたことがある場合、 刑期満了済みや後に恩赦されたとしても、それに関する犯罪や裁判の記録 ・これまでに米国に入国されたことがある方は、 入国資格もしくはビザ資格を証明する書類 |
申請料金 |
$185 USD (日本円約27,970円:2023年11月現在) |
決して不正書類の提出は行わないようにしましょう。万が一、虚偽の記載や不実の記載を行った場合は、ビザの申請資格を永久的に失うこととなるため、注意してください。
アメリカで給料が発生する仕事に就きたい場合は就労ビザを取得しよう
就労ビザとは、アメリカ国内で就労を行う目的で渡航する際に取得が必要となるビザです。就労には、アルバイトや一時的な農業関連事業従事者も含まれます。アメリカ国内の企業や雇用主からの報酬が発生するビジネスを行う場合は、就労ビザを取得しましょう。
なお、企業内で海外支店や部署からアメリカ国内へ転勤する場合はL-1ビザの取得が必要になるため、注意が必要です。就労ビザについては「アメリカ就労ビザ全9種類の条件と申請方法を徹底解説!」にて、アメリカビザを全種類解説してます。各ビザの申請要件や対象者等も解説していますので、アメリカで働きたい方は是非こちらも確認しましょう。
申請要件について
就労ビザの申請は、I-797に記載された雇用が開始される最大90日前より申請手続きを進めることが可能です。また、就労ビザを申請する際は、申請料金を支払った後に、申請書類の提出を行います。
各就労ビザの対象者についてと申請要件については下記表をご参照ください。
就労ビザ(H,L,O,P,Q)の対象者 | |
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H-1B (特殊技能職) | 事前に取り決められた専門職に就くために渡米する方 |
H-2A (季節農業労働者) |
米国人労働者が確保できないため米国の雇用主に一時的に雇用され、 農作業に就く目的で渡米する外国籍の方 |
H-2B (熟練・非熟練労働者) |
一時的または季節的かつ米国人労働者が 不足している職業に就く目的で渡米する方 |
H-3(研修生) | 大学院教育やトレーニング以外のあらゆる分野において、 雇用主が行う最長2年間の研修を受ける目的で渡米する方 |
H-4(同行家族) | 有効な Hビザを保有する方の配偶者及び未婚の子ども(21歳未満) |
L-1 (企業内転勤者) |
米国内の親会社、支社、系列会社、子会社へ 一時的に転勤する多国籍企業の従業員 |
ブランケットL-1ビザ | 企業内転勤をする駐在員 |
L-2 (同行家族) | 有効な Lビザの保有する方の配偶者及び未婚の子ども(21歳未満) |
O |
・科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツにおける卓越した能力を持つ方 ・映画やテレビ番組の製作において卓越した業績を挙げた方、 ならびにそれらの遂行に必要な補助的な業務を行なう方 |
O-2(O-1同行者) | 米国では得られない技能や経験を有し、競技や公演に 必要不可欠な役割を担うアスリートやエンターテイメント業界の方 |
P (芸術家、芸能人) | 米国で公演・活動するために渡米する特定のアスリート、芸能人、芸術家および、 それらに必要不可欠な補助的業務を行なう方 |
P-2(芸術家または芸能人) |
米国内の組織または団体と他の一つまたは複数の外国との間で、 芸術家や芸能人を一時的に交換することを目的とした相互交換プログラムに 参加する個人またはグループの芸術家または芸能人 |
P-3 (芸術家または芸能人) |
文化的にユニークなプログラムの下で、 公演・指導・稽古を行なう個人またはグループの芸術家または芸能人 |
Q | 実務研修、雇用、および訪問者の自国の歴史・文化・伝統の普及を 目的とした国際文化交流プログラムに参加するために渡米する方 |
就労ビザ(H,L,O,P,Q)の申請要件 | |
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申請時期 |
I-797に記載された雇用が開始される最大90日前より H、L、O、P、Qビザの申請手続きを進めることが可能。 ただし、連邦規定に基づき就労ビザの保有者が 入国審査を受けることができるのは、I-797 またはI-129Sに記載されている就業開始許可日の10日前となる。 |
必要書類 |
・非移民ビザオンライン申請書(DS-160フォーム) ・米国での滞在期間に加え、6ヶ月以上の有効期限が残っているパスポート ※日本国籍の方は国別協定によって6ヶ月以上の有効期限は不要である ・過去10年間に発行された古いパスポート ・証明写真 ※メガネ着用の写真は不可 ・相互互恵的関係に基づくビザの手数料 ※日本国籍の方は免除 ・請願書受付番号 【ブランケットL1 ビザ申請者】 ・申請者の職務内容が記入されたI-129Sのコピー ・I-797請願書許可通知のコピー ・雇用者からの推薦状 【補足書類】 ・履歴書や職務経歴書、大学の卒業証書など、申請者の職務資格を証明するもの ・申請者の職位や関わったプロジェクト、勤務年数などを 詳述した現在および過去の雇用主からのレター 【同行家族】 ・主たる申請者との関係を証明するもの (婚姻証明書、出生証明書、戸籍謄本など) ・主たる申請者のI-797請願書許可通知のコピー ・家族が後日ビザを申請する場合は、主たる申請者のビザのコピーも必要 |
申請料金 | $205 USD (日本円約31,000円:2023年11月現在) |
ビザ(査証)は何日前に申請すべきなのか
ビザ(査証)の取得は、ESTAとは異なり、必要書類の提出のほかに、在日米国大使館及び領事館での面接を必要とします。
ほとんどの申請書は数営業日に処理され、受け取りが可能となりますが、一部の申請書では処理に時間がかかる場合があります。そのため、渡航予定日の6〜8週間前にはビザ(査証)の申請を行いましょう。なお、ビザが手元に届くまでは航空券やホテルの予約はしないようにしましょう。
ESTA申請が不要になる場合
ESTAは、VWPの利用に伴って取得するため、既にビザを取得している渡航者はESTAが必要ありません。そのため、既にアメリカ入国に有効なビザを取得している場合は、ESTAの取得が不要となります。
また、アメリカ国籍を持っている方は、米国のパスポートを使用してアメリカへ入国する必要があるため、二重国籍の有無にかかわらずESTA申請が不要なため、注意しましょう。
まとめ
ESTAは短期商用を目的としたアメリカ渡航での利用が可能です。
しかし、短期商用について理解をしていないと、渡航目的がESTAの利用条件に該当せず、虚偽申告をしてしまう可能性があり、入国拒否になってしまう場合があります。
短期商用とは、アメリカ国内の企業や雇用主からの報酬を伴わないビジネスのことです。
報酬が伴う場合や、滞在期間が90日を超える方はビザ(査証)の取得が必要となります。
ESTAの申請条件に該当しない方は、渡航目的に応じたビザの取得を行いましょう。
ぜひこの記事を参考に、ESTAについて正確な知識を身に付け、リスクのないアメリカ渡航をしてみてはいかがでしょうか。