日本で外国人労働者を雇用する場合、就労系のビザを取得する必要があります。在留資格は働く外国人の方が申請を行う必要がありますが、ビザの取得は複雑で単独で申請を完了させることは非常に難しいです。そのときには、受け入れ先の企業の担当者がサポートを行いましょう。
この記事では、外国人労働者の方だけではなく、雇用を検討している担当者の方にも最高になる内容になっております。
是非最後までご確認ください。
日本のビザについて
ビザは日本に入国する際に必要になる上陸許可証です。日本での正式名称は「査証」と呼びます。ビザと在留資格は本来違う物ですが、世間ではどちらもビザと呼ばれています。
ビザと在留資格の違い
上記の通り、ビザは日本への上陸許可証である「査証」です。一方、在留許可証は、「日本での滞在と一定の活動を認める資格」です。
その中でも、日本での就労活動を許可する資格のことを一般に「就労ビザ」と呼びます。
日本で働くことができる就労ビザ一覧
就労ビザ一覧 |
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・技術 ・人文知識 ・国際業務 ・特定技能1号 ・特定技能2号 ・技能実習 ・介護 ・企業内転勤 ・経営・管理 ・技能 ・興行 ・教育 ・研究 ・医療 ・芸術 ・宗教 ・報道 ・法律会計事務 ・教授 |
就労できない在留許可
日本で就労できないビザ |
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・留学 ・家族滞在 ・短期滞在 |
就労ビザ
日本では各就労ビザに規定されている職種でしか働くことはできません。
下記では、就労ビザごとにどのような職業で働くことができるのかの具体例と概要、在留期間を解説していきます。
「技術・人文知識・国際業務」
技術・人文知識・国際業務は、主に日本企業のオフィスでの労働が許可される在留資格です。
頭文字を取って「技人国」とも呼ばれます。
学生時代に専攻していた科目での労働活動を行うことが重要で、外国人労働者の専門的な知識や技術、経験を利用する職業でなければなりません。
「技術・人文知識・国際業務」での日本での在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
技術
就労ビザの一種である「技術」は学生時に理系分野を専攻していた外国人の方が取得することができる在留資格です。具体的には「理学、工学、その他自然科学の分野に属する技術を要する業務」とされています。
「技術」の在留資格を持っている方が働くことのできる職業は以下の通りです。
- 調査研究
- 技術開発
- 生産管理
- 建築・土木・測量技術
- 情報処理・通信技術
- 地質調査
- 半導体研究
- 金属加工 等
上記の職業は例です。そのため、これら以外にも理系分野に当てはめることができる職業は「技術」ビザで労働をする事ができます。
人文知識
就労ビザの一種である「人文知識」は学生時に文系分野を専攻していた外国人の方が取得することができる在留資格です。具体的には「法律学、経済学、社会学等、その他人文科学の分野に関する知識を要する業務」とされています。
「技術」の在留資格を持っている方が働くことのできる職業は以下の通りです。
- 営業
- 財務
- 法務
- 総務
- 規格
- ライター 等
上記は例の一部です。そのため、文系分野での労働を希望している外国人の方は人文知識分野での労働を行うことができます。
国際業務
国際業務の在留資格では、「語学力や外国の文化、国際経験等を要する業務」とされています。
具体的な例は下記の通りです。
- 翻訳
- 通訳
- 海外取引の営業
- デザイン
- 語学学校の教師 等
ただし、外国人労働者の学歴や職歴と合致していない職業の場合は、上記の例に挙げた職業であっても在留資格が取得できない可能性が高いです。そのため、外国人労働者の技能を考慮して日本での職業との関連性を重視することが重要です。
特定技能
「特定技能」の就労ビザは、日本において人手不足になっている業界にとって即戦力となる外国人労働者に対して交付される就業ビザです。
特に人手不足が深刻な状況となっている、14業種の特定産業分野において日本での就労が可能となります。」また、特定技能ビザには 2種類存在し、各ビザで在留日数や就労できる職業に違いがあります。
特定技能1号
特定技能ビザ1号は「特定分野に属する相当程度の知識や経験が必要な技能を使って労働を行う外国人に向けられた在留資格」です。日本で深刻な人手不足となっている業界を
サポートするために、設けられたビザ制度です。
特定技能1号ビザで就労が許可されている職業は、
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
以上12業種です。
また、特定技能1号で日本に滞在している方の日本の在留できる期間は4か月、6カ月、1年のいずれかです。なお、更新を行っても日本に在留出来る最長期間は5年間です。
また、農業分野と漁業分野では派遣社員として外国人労働者を雇用することができます。
特定技能2号
特定技能ビザの2号は特定技能ビザ1号で日本に滞在している外国人が更新の際に移行する場合にのみ取得できる特別なビザです。
特定技能ビザ2号の要件として「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け」との記載がされているため、業界歴が長く、高い技術が伴っている方でないと取得することは困難です。
以前までは2分野のみで就労することが可能でしたが、現在は介護以外の11分野で取得することが可能となり、非常に幅広い職種に対応する事が可能になりました。
介護分野で特定技能1号を取得した方については、他の在留資格に就労ビザで「介護」という移行先があるため、特定技能2号は設けられていません。
また特定技能1号で日本に滞在している方の日本の在留できる期間は6か月、1年、3年のいずれかです。なお、この在留資格に更新の制限は設けられていませんので、更新を行ってさえいれば、ずっと日本に居住することが可能です。
技能実習
「技能実習」ビザは日本の技術を学び、習得した技術を本国で活用し、産業をより発展させるために作られた在留資格です。
建設や食品製造、印刷、塗装、介護、宿泊など全85職種158の作業について学ぶことができます。技能実習ビザの中にはカテゴリーが3種類あり、それぞれ学ぶことのできる職種が異なります。
技能実習の在留期間は1号は1年以内、2号・3号は2年以内です。
在留資格の有効期限更新を含めると最長5年間日本に滞在し、職務の技能についての教育を受けることができます。
介護
少子高齢化が深刻になっていく日本では、「介護」ビザを取得することで介護職での外国人労働者の需要が高まっています。
介護ビザは、日本の介護福祉養成学校を卒業後、国家試験に合格し、国家資格である「介護福祉士」の資格を持っている外国人でなければ取得することはできません。
在留期間は、3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
企業内転勤
企業内転勤ビザは、海外に拠点を置く企業の従業員が日本に所在する関連企業に転勤する際に取得する在留資格です。「企業内転勤」ビザで認められている業務は、直前まで海外の企業で行っていたものと同業務であり、かつ、「技術・人文知識・交際業務」ビザで認められている業務でなければなりません。そのため、非常に限られた業務しか行うことはできません。しかし、他の就労ビザと違い、申請手続きは簡素になっています。
在留期間は3カ月、1年、3年、5年のいずれかです。
経営・管理
外国人の方が日本で起業をしたい、もしくは経営や管理業務を行いたい場合には「経営・管理」ビザを取得しましょう。
事業の種類や形態に制限はありませんので、幅広い職種での活用が見込めます。
在留期間は3か月、4か月、6カ月、1年、3年、5年のいずれかです。
技能
技能ビザは、海外特有の分野や日本よりもレベルの高い技術のある分野で卓越した能力を持つ外国人が日本に招聘することができる在留資格です。
料理人やAIエンジニア、スポーツインストラクターなど幅広い職種が対応しており、その分野での実務年数や実績がある方のみ取得することができます。
在留期間は3か月、1年、3年、5年です。
興行
興行は外国の著名な俳優やミュージシャン、ダンサー等を日本に呼びコンサートやライブ、イベントを行う際に必要になる在留資格です。
在留期間は15日、3か月、1年、3年のいずれかです。
教育
教育は、小学校、中学校、高等学校の語学教師や、日本の教育機関で語学教育を行う目的で来日してきた外国人労働者のための在留資格です。主に、教師免許を取得している外国語の授業を担当する外国人の方が取得する必要があります。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
研究
研究ビザは、海外で実績のある著名な研究者が日本の公的機関や大学、民間企業などで研究を行う際に取得する事ができる在留資格です。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
医療
医療ビザは、医師や歯科医師、看護婦など法律上の資格を有する外国人が日本で医療業務にあたる際に取得する必要のあるビザです。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
芸術
芸術ビザは収入が発生する音楽家、画家、文学科、彫刻家等が来日し芸術活動を行う際に取得する必要のあるビザです。専門とする芸術分野で生計が立てられている方のみが対象になります。ただし、在留資格の興行に該当する活動を除きます。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
宗教
宗教ビザは外国の宗教団体から日本に派遣されてきた宗教家、宣教師等が対象となる就業ビザです。布教活動や、宗教上の活動と認められている活動が認められます。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
報道
報道ビザは外国の報道機関の関係者や契約を結んでいるフリーのジャーナリストが該当する在留資格になります。日本での報道活動や、取材活動は認められますが、映画などの芸術性の高い撮影では取得することができません。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
法律・会計事務
法律・会計事務の就労ビザの取得対象は、外国法事務弁護士や外国公認会計士等の資格を有する外国人が該当者です。法律や会計に関わる業務に携わる場合に子の在留資格で日本に知財することができます。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
教授
教授ビザは、大学で講義を行ったり、研究の指導を行う外国人が対象となる就労ビザです。
在留期間は3か月、1年、3年、5年のいずれかです。
就労ビザの申請方法
日本の就労ビザを取得する方法として、「新規申請」と「変更申請」の2種類が存在します。
新規申請は、「在留資格認定証明書交付」といい、海外から来日して日本で労働を行う場合です。
変更申請は「在留資格を切り替える場合」に利用し、日本にいる外国人の方が転職をする若しくは学生から社会人になる場合等に利用します。
また、転職の際に、業務内容に変更がなく在留資格を切り替える必要がない場合、「就労資格証明書」を発行することが重要です。
就労資格証明書を発行することで、転職先の会社での業務内容が変わっていないことを示すことができますので、審査の免除や更新時に不許可になるリスクを減らすことができます。
新規申請
新規申請は、現在外国にいる方が、日本で就業したい場合にビザ申請を行う方法です。就業ビザの新規申請方法を確認してみましょう。
①在留資格認定証明書の交付申請
まず、外国人の方が日本での労働を行いたい場合には出入国在留管理局にて、「在留資格認定証明書」の交付を行ってもらいます。出入国管理局は企業の所在地や申請人が住んでいる日本国内の地方によって管轄が決まっています。
そのため、勤務予定先の住所を管轄している出入国在留管理局に申請を行いましょう。
しかし、この場合、申請者である外国人の方は外国に在留しているため在留資格認定証明書の申請は受け入れ先企業が代理人として手続きを行います。
基本的には、申請が通るまでの期間は1か月から3か月ほどかかる見込みです。
②在留資格認定証明書の交付
出入国在留管理局から申請代理人となった受け入れ先企業宛に在留資格認定証明書が送付されます。
③申請となる外国人本人宛に「在留資格認定証明書」を送付
受け入れ先企業が在留資格認定証明書を就業予定の外国人宛に送付します。
④在留資格認定証明書を外国人が住む国・地域の日本大使館・日本総領事館で提示しビザを申請
日本の在外公館にて、外国人本人がビザ申請の手続きを行います。申請が受理されてから5営業日以内にビザが発給されます。
⑤就業ビザ発給
就業ビザを受け取った外国人の方は、発給後3か月以内に日本に入国しなければなりません。在留カードは、上陸港にて受け取れる場合もあれば、後日居住地宛に送られてくる場合もあります。
就業ビザの新規申請に必要な書類
在留資格認定証明書交付申請書 |
写真(縦4㎝×横3㎝)一葉 |
返信用の封筒 一通※定型封筒に宛先を記述し、404円切手を貼付したもの |
日本での活動を詳細に記載されている書類 |
就業ビザの在留資格によって追加で書類が必要になる場合がありますので、出入国在留間置局のHPにて確認を行いましょう。
在留資格変更の申請
在留資格を変更して就業ビザを申請する場合の対象者は、既に日本に滞在している外国人の方です。例えば、「留学」ビザで日本の教育機関で学生として学術を学んでいた方や、日本企業に勤めていたが、別の日本の企業に転職を行う方等です。
①在留資格変更申請を行う
外国人労働者が日本の在留資格を変更する場合には、出入国管理局にて在留資格変更申請を行う必要があります。この場合には外国人本人が申請手続きを行わなければならないので注意しましょう。
②結果の通知
審査の結果、外国人の素行等に問題が無ければ、新しい在留カードの発行手続きのため、通知はがきが出入国管理局から、居住先に届きます。
③新しい在留カードを受け取る
結果通知のハガキを受け取ったら、新しい在留カードを受け取るために外国人本人が出入国管理局に赴く必要があります。
必要書類はパスポート、旧在留カード、通知はがき、申請受付票です。また、追加で書類提出を求められた際には必要になる書類をあらかじめ準備した上でお近くの入管に訪れましょう。
就労ビザの申請が不許可になるケース
就労ビザ申請が不許可になる例として、下記のような状況が該当します。
- 業務内容が外国人申請者の職歴等と合致しない
- オーバーワーク
- 虚偽の申請
就労ビザの審査はどれくらいかかる?
就労ビザの申請は、おおむね2〜3か月かかるとされています。しかし、4月入社の会社が多いので、例年2月、3月は申請が混み合い、手続きが遅くなる傾向にあります。そのため、余裕を持って4か月ほどの期間をもって、申請を開始すると良いでしょう。
有効期限と更新方法
上記就労ビザの項を参照してもらえるとわかるように、就労ビザには日本に在留できる期間が設定されています。基本的には、最初の交付では「1年間」の在留許可が貰えます。
その後、更新を忘れて在留期間を過ぎてしまうと不法滞在を行ったとして摘発される可能性があるので気を付けましょう。
有効期限の更新手続きは失効日の3か月前から受け付けております。転職など行っていない場合には比較的スムーズに更新申請手続きを終えることができますので、なるべく早く更新申請を行いましょう。
アルバイト雇用について
結論から申し上げますと、就労ビザで働いている外国人を本業とは別にアルバイトとして雇用し、労働させることは可能です。
就労ビザを取得している外国人の場合、在留資格の範囲内であればアルバイトとして労働に従事させることが可能です。しかし、本業の会社の方で副業が禁止されている場合は不可能です。
また、在留資格が就労不可の場合、「資格外活動許可」を出入国管理局に申請しなければなりません。
資格外活動許可を申請せずに労働活動に従事した外国人の方は、強制的に国外追放になってしまう可能性もありますので注意しましょう。
退職後の手続き
就労ビザで労働を行っている外国人が退職した場合、企業は「中長期在留者に関する届出」を出入国在留管理局に提出しなければいけません。任意での提出となっていますが、可能な限り提出することが望ましいです。
また、外国人労働者が提出する必要のある、「所属機関に関する届出」は必須で提出する必要があります。提出することが義務化されていますので、外国人の方に必ず通知しましょう。
注意点
外国人労働者を雇う際には、企業が注意しなければならない点として3点挙げられます。
1つ目は、日本人労働者と同じ給与・同じ待遇です。経験年数や年齢、職務内容が同じ日本人と比較し、同等以上の給与を設定しなければなりません。
2つ目は、3か月以上労働内容と同じ活動をしていないと就労ビザ取り消しの対象になる点です。これは、外国人が退職などを行う際に、企業が通知する事が重要です。
3つ目は在留資格で認められている活動以外に労働をさせないことです。
就業ビザの在留資格として認められている範囲外の活動は、固く禁止されています。そのため、企業側の人事の方も外国人労働者の方はどのような業務に従事できるかをしっかり把握していきましょう。
まとめ
以上、外国人労働者の方を雇う際に必要になる就労ビザの在留資格について解説しました。特に在留資格で認められている活動はどんなことなのかを把握することが、企業・外国人両方にとって重要です。
就労ビザを深く理解し、優秀な外国人労働者と一緒に働きましょう。