外国籍の方が日本で就労を行う際は就労ビザの取得が必要です。また、就労を行う間は就労を伴う在留資格の取得を必要とします。
そして、就労ビザでの在留期間は最大5年ですが、5年の在留期間を取得するにはいくつかの条件を満たさなければいけません。
この記事では、5年の在留期間を取得するための条件やコツについて解説していきます。さらに、就労ビザ申請の際に注意すべき点についても説明していくので、ぜひご覧ください。
就労ビザとは
そもそも就労ビザとは一体何のことでしょうか?
他にもあるビザとは何が違うのかなど解説していきます。
就労活動に対しての在留資格のこと
就労ビザとは、日本での就労活動を目的とした入国時に必要となるビザ(査証)のことです。
なお、日本の場合、ビザの取得だけでは日本に在留できず、ビザに加えて在留資格を取得する必要があります。
また、在留資格はビザを申請する前に申請の手続きを始めるため、一般的にビザとして扱うことが多いです。
そのため、本記事でも就労を伴う在留資格を就労ビザとして扱っています。
就労ビザの種類
主な就労ビザの種類は以下になります。
技術・人文知識・国際業務
最も一般的な就労ビザ、エンジニアやプログラマー、自然分野などの技術職や企画、営業といった人文知識職、また通訳や翻訳業、貿易事務といった国際業務がこちらに区分されます。
取得するためには専門的な知識を持っていることを証明するために、学歴や資格の有無などが審査の対象になってきます。
技能
技能的な専門職につく場合に取得する在留資格で
料理や、ワインの鑑定・評価、建築・土木、製品の製造や修理、宝石や貴金属、毛皮の加工
動物の調教、石油探査・海底地質調査、航空機の操縦、スポーツ指導などなど9種類があります。
例えば調理師や菓子職人といった場合10年以上の実務経験がないと取得出来ないなど、専門的な知識の有無が審査の対象になります。
企業内転勤
企業内転勤とは海外の事業所から日本の支店や本店、系列の企業にて一定期間転勤するための在留資格のことです。
また、日本で行う職務については海外で実際に働いて内容と関連している職務であること
「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動であること、海外の企業で1年以上継続して勤務していることなどが条件になります。
また、この在留資格での滞在は限定されているもので、無期限での勤務をすることはできません。
その場合は違う在留資格を改めて取得する必要があります。
経営・管理
外国人が日本にて新しくビジネスを開始したい場合、経営者や管理者はこの経営・管理ビザの取得が必要になります。
この在留資格を取得するためには、投資として資本金500万以上が必要だったり、飲食店を経営したい場合はテナントや従業員に関する情報の開示が必要になります。
また、もし事業が始まった後に赤字となってしまった場合在留期間を更新するためには事業が継続していけるという内容を示す必要があります。
その他の就業ビザの種類一覧
ジャンル | 職業例 |
教授 | 大学教授、助教授、講師、助手など |
芸術(アーティスト) | 作曲家、作詞家、彫刻家、画家、工芸家、写真家など |
興行 | 俳優、ミュージシャン、ダンサーなど |
宗教 | 僧侶、司教、宣教師などの宗教家 |
報道 | 新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど |
法律会計業務 | 日本の資格を持つ弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など |
医療 | 日本の資格を持つ医師、歯科医師、薬剤師、看護師など |
研究 | 研究所などの研究員や調査員など |
教育 | 小学校、中学校、高等学校の教職員など |
介護 | 介護福祉士の資格を持つ介護士など |
特定技能 | 特定の産業分野に属する知識や経験を必要とする技能、 熟練した技能が必要となる産業に従事する人 |
技能実習 | 海外の会社などから受け入れる技能実習生、 監理団体を通じて受け入れる技能実習生 |
就労ビザについて詳しく知りたい方は、下記ページにて解説しているのでそちらをご覧ください。
就労ビザについて徹底解説
就労ビザの在留期間について
では、上記のビザを取得した場合日本に在留できる期間はどのくらいになるのでしょうか?
就労ビザの在留期間は4種類
就労ビザの在留期間は最大5年ですが、申請者の審査結果によってあらかじめ定められている期間の中から取得時に適当な在留期間を設定されます。
取得時に設定される期間は以下の4種類になります。
- 3ヶ月
- 1年
- 3年
- 5年
取得するビザによっては異なる期間が適用される場合もありますが主に設定される期間は上記の通りです。
また、申請する在留期間によって取得条件などが変わるので自分が働く業種や、企業、自身の学歴や職歴でどの在留期間で申請を出すか決めるようにしましょう。
各期間の取得条件とは
在留期間については取得したい期間ごとに取得条件が異なりますので、自分が申請をするときどの期間で申請を出すのがいいのかチェックしておきましょう。
3ヶ月
3ヶ月のビザを取得する場合の条件としては就労の予定期間が3ヶ月以下の場合に限ります。
長期で働く予定がある場合は基本的に1年のビザを取得することが出来ますが、働くのが3ヶ月以下だった場合はこの3ヶ月のビザをおすすめします。
この場合ですと、会社の規模などが関係なく付与されるので審査についても通りやすいのがメリットになります。
1年
1年の在留資格を取得したい場合の基準は以下になります。
・カテゴリー4以上の企業かどうか ・就労する予定期間が1年未満かどうか ・取得者本人の在留状況がしっかり守られていること ・学歴と職務内容が関連していること |
カテゴリー4以上の企業とはカテゴリー1、2、3のどれにも属さない企業や個人事業主のことを指すため、全ての企業が該当していると思って問題ありません。
そのため、会社の規模について特に気にする必要はありません。
もし、取得者本人が既に国内へ在留していた場合はその中で、届け出の変更や必要な支払いが正常に行われていること、またもし義務教育の子供がいる家庭であればその子が小学校や中学校、義務教育学校に通学していることなども審査の対象になります。
基本的には日本に来て最初に就労ビザを取得しようとしたらこの1年間のビザを取得するパターンが多いです。
3年
3年の在留資格を取得したい場合の基準は以下になります。
・カテゴリー3以上の企業かどうか ・就労する予定期間が1年以上あるかどうか ・取得者本人の在留状況がしっかり守られていること ・学歴と職務内容が関連していること |
カテゴリー3の企業には、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人の企業が該当します。
このカテゴリー3以上の企業に就労する場合は3年のビザが取得可能な可能性がありますが、就労予定期間が1年以上である必要があります。
また、既に在留していた外国人の場合はその人の在留状況や就労先の会社で行う業務内容が取得したい就労ビザの内容と一致しているかどうかなども判断材料になってきます。
最長5年のビザと取得する方法
上記では3ヶ月から3年までの就労ビザの取得条件について記載してきました。
では、最長の5年の就労期間を取得するためにはどうすればいいのでしょうか?
以下の条件を満たしているかどうか、総合的に判断して5年という許可が下りるようになりますのでチェックしておきましょう。
カテゴリー1または2の企業に就労する
就労ビザの在留期間を定める際の基準として大きく関わってくるのが、雇用先企業の形態や源泉徴収税額です。
企業にはいくつかのカテゴリーが存在しており、就労ビザの申請では在留期間ごとに異なるカテゴリーが審査基準になっています。そのため、在留ビザを申請する際は、審査基準となっているカテゴリーに該当する企業へ就労する必要があります。
そして、就労ビザの最長在留期間である5年の資格を取得する際は、カテゴリー1またはカテゴリー2の企業に就労しなければなりません。
以下では、カテゴリー1及びカテゴリー2に該当する機関にどのような企業が含まれているのかを解説していきます。
h4:カテゴリー1に該当する企業
カテゴリー1は、企業の形態についての区分になっており、上場企業や公共団体などが該当しています。
カテゴリー1に該当する企業については以下の通りです。
カテゴリー1に該当する企業 |
・日本の証券取引所にて上場している企業 ・保険業を営む相互会社 ・日本または外国の国または地方公共団体 ・独立行政法人 ・特殊法人または認可法人 ・日本の国または地方公共団体が認可した公益法人 ・法人税法別表第1に掲げる公共法人 ・イノベーション創出企業 (高度専門職基準省令1条1項各号の表の特別加算の項の中欄イまたはロの対象企業) ・一定の基準を満たす企業等 |
なお、イノベーション創出企業及び一定の基準を満たす企業等に該当する企業に関しては以下のページにて確認いただけます。
- 「イノベーション促進支援措置一覧」(引用:出入国在留管理庁ホームページ)
- 「一定の基準を満たす企業等」(引用:出入国在留管理庁ホームページ)
h4:カテゴリー2に該当する企業
カテゴリー2は源泉徴収税額に関する区分です。
詳しい基準については以下の通りです。
カテゴリー2に該当する企業 |
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、 給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体または個人 ・在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている企業 |
なお、カテゴリー2の基準である源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業には、売上額が目安として10億円以上の企業が該当します。
就労期間に取り決めがない
5年の就労期間を取得するには企業との雇用期間についても重要になってきます。
基本的には5年の就労期間を得たい場合は雇用期間が無期限である必要があります。
1年や3年などの有期雇用の場合は就労ビザもそれに応じた期間のものしか取れないことが多いです。
届出の義務が守られていること
日本に滞在している間の外国人の状況も判断基準となっており、
例えば在留中の犯罪歴があったり、入管が定めている届け出についてもしっかり行われているかが重要になってきます。
例えば、住所が変わった場合の住所変更、転職していた場合は離職や再就職に関する情報を入管に14日以内に届け出る必要がありますが、これらをしっかり行っているかどうかが審査基準になります。
学歴や職務内容に関連性があること
取得したいビザと、企業で就労するときの仕事内容が自身の学歴や過去の職務内容などと関連があることも重要になってきます。
大学や専門学校で理系の分野を学んでいたにも関わらず、就労先が飲食系の企業だった場合その学歴と職種について関連性を証明するのは難しいかと思います。
これら学歴と職種についても関連性が重要ということを覚えておきましょう。
5年のビザを取得するコツ
上記で、5年ビザを取得するための条件を記載してきました。
ここではより5年のビザを取得しやすくするコツを記載していきます。
専門職に就く
例えば、プログラマーやエンジニアといった職業は専門的な知識や技能が必要になります。
そのためその役割を全うできる人材が少ないのでこれらの仕事につけば雇う企業側も有期ではなく無期限雇用などをしたいでしょう。
そのため5年のビザを取得しやすくなるといえます。
企業側のサポートがしっかりしている企業につく
日本で暮らしていると納税や届出の対応、また日本特有のトラブルに巻き込まれてしまうこともあるでしょう。
これらの対応についてしっかり企業側もサポートしてくれるところで働くことが出来れば
素行不良などになることが少なくなります。
ビザを取得後の注意点
一度長い期間のビザを取得出来たとしても、その後の在留期間中のご自身の生活も重要になってきます。
場合によっては在留期間が短くなってしまうこともあるので注意しましょう
納税や届出義務の不履行
ビザを取得したとしてもその後の生活で「所得税や住民税を支払っていない」「引っ越しや転職をしたのに必要な届出を入管に提出していない」といった義務の不履行が判明した場合
在留期間が短くなってしまうことがあるので注意が必要です。
素行不良などをしてしまった
例えば、「悪いことをしてしまい警察に捕まってしまった」「資格以外の活動でアルバイトをし、上限を超える収入を得てしまった」
など素行不良と判断されてしまった場合、在留期間が短くなってしまう可能性があります。
最悪の場合就労ビザの許可が出ないこともあり得ますので、日頃の生活についても注意が必要です。
初回申請で5年の就労ビザの取得は難しい
最長在留期間である5年の就労ビザを取得するには、先述した要件や注意点に十分に気を付けて申請を行う必要があります。
しかし、初回申請で5年の就労ビザを取得することは難しく、ほとんどの場合、初回取得時の在留期間は1年となります。
したがって、5年の就労ビザを取得したい場合は初回申請ではなく、更新の際に取得するのが一般的となります。
なお、初回申請で5年の就労ビザを取得したい場合は信頼できる行政書士事務所に申請代行を依頼することで、取得に関する丁寧なサポートを受けることができるため、申請ミスを防ぐことができ、スムーズに手続きを進めることが可能です。
そのため、就労ビザを申請する際は、行政書士による申請代行のご利用も検討してみてはいかがでしょうか。
就労ビザの更新について
5年の就労ビザを取得する際は、更新時に取得することがおすすめだと説明しました。
日本では、技能実習など一部の在留資格を除き、就労ビザの在留期間の更新が可能となっています。そのため、在留期間の満了後も引き続き日本での就労を継続したい場合は、在留期間の更新をする必要があります。
在留期間の更新は、出入国在留管理庁で在留期間更新許可申請を行うことによって手続きが可能です。その際、更新時期は在留資格満了日の3ヶ月前からになります。
なお、入院や長期にわたる出張などの特別な事情がある場合は、3ヶ月以上前からでも更新の手続きができます。
日本での就労及び在留を継続する場合は、必ず在留期間更新許可申請を行いましょう。
在留期間更新許可申請について詳しく知りたい方は下記のページをご覧ください。
在留資格はどうやって更新するのか?在留期間更新許可申請を徹底解説!
審査にかかる日数はどのくらい?
ではこの就労ビザについて申請をしてから実際に許可が下りるまではどのくらいの日数がかかるのでしょうか?
それぞれ、パターン別でご紹介していきます。
内容によって審査期間が違う
審査期間については大体1か月前後で終わることが多いですが
実際には2か月や3ヶ月と長期にわたる場合もありますし早ければ2週間ほどで終わる場合もあります。
審査機関の機銃としては最大でも3ヶ月までには結果を出すことと定められています。
なぜ、こんなにも審査の完了時期がバラバラになるのかというとまず申請の内容が初回なのかそれとも更新なのか、変更なのかで変わってきます。
初回の認定書をもらうときは特に時間がかかる傾向があります。
また、入管の込み具合によっても審査の期間が変わってきます。
特に2月~5月に関しては就労ビザの更新や変更の申請が多くなる傾向があるようで、この期間の場合は通常よりも審査機関が長くなる可能性があることを覚えておきましょう。
初回申請の場合にかかる期間
初回の申請の場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行い、その資格が認定されて「在留資格認定証明書」が発行されます。
そのため、一番審査期間が長いことを覚えておきましょう。
平均的には30~40日前後で終わりますが、時期などによってはもっと最長の90日間かかる可能性もあります。
更新申請の場合にかかる期間
在留期間を更新するための審査の場合は平均的には30日前後で取得できるといわれています。
早い人では14日ほどで許審査が終わったという人もいるようですが、大体30日前後を想定しておくといいでしょう。
変更申請の場合にかかる期間
転職などによってビザの種類や在留資格の変更申請の場合は、どの資格に変更するかによってかなりばらつきがあります。
特に専門職や技能系の仕事の場合は2か月以上かかってしまうものもあります。
大体1か月以上はかかるということを覚えておくといいでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
在留期間について、それぞれの条件や最長の5年をとるためのコツ、また審査期間について解説してきました。
日本で長期にわたる在留及び就労を行う予定の場合、少しでも更新の回数を減らしたいと思う方が多いのではないでしょうか。
この記事がより長い在留期間の取得につながりましたら幸いです。