米国務省は2023年12月21日に、非移民ビザ申請者に対する面接免除ポリシーを更新し、これを無期限に延長しました。これは、約3年間にわたって実施されていた一時的な政策に代わるものです。
最も重要な点は、年ごとに見直しを行う常設の政策として確立されたことです。これにより、多くのビザ関係者に発生する不確実性が減少します。また、面接免除は、同省におけるビザ処理時間の短縮においても重要な役割を果たしてきました。
一般的に、14歳から79歳までの非移民ビザ申請者は、米国大使館または領事館での対面式面接を受けることが要求されます。しかし、米国法には例外があり、「国務長官が国益にかなうと判断した場合」や、「異常かつ緊急の状況下で必要とされる場合」にはビザ申請の面接が免除されることがあります。これらの面接免除権限は、特定の非移民ビザの処理を迅速化することにより、米国経済の支援に利用されてきました。ほとんどは、以前に審査を受けてビザを取得した低リスクな申請者や、ビザ免除プログラムに参加している国の国民で、以前に米国を訪れたことがある人々に焦点を当てています。
例えば、オバマ政権は2012年に、米国への外国人訪問者を増やし、国の旅行および観光産業を支援するためにビザ面接免除プログラムを実施しました。このプログラムは、トランプ政権が発足した2017年1月に一時停止されました。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まった時、トランプ政権は面接免除を利用して、国務省の処理能力が低下した中、H-2ビザの取得者を増員することで一時的な農業および非農業労働者の入国を促進しました。
2020年3月、トランプ政権は、低リスクと判断された特定の初回および更新H-2ビザ申請者に面接免除を発行できると発表。
申請者は「国の経済および食糧安全保障における重要な役割」を担っていると声がけました。
2020年秋には、国務省は前回のビザの有効期限が過去24ヶ月以内に切れた場合、同じカテゴリーで非移民ビザを求める申請者に面接免除出来る選択肢を増やしました。
また、米国大使館および領事館がビザ処理のバックログを解消しようとする取り組みを行う中で、国際学生および大学にビザ取得の不確実性をもたらしたことから、2021年秋、バイデン政権は学生(F、M)および学術交流訪問者(J)ビザ申請者に対する面接免除を拡大しました。
以前に他のタイプのビザを受け取ったことがある者、またはビザ免除プログラムの加盟国の国民である初回申請者も対象とされました。
その後、面接免除は、特殊職業(H-1B)、社内転勤者(L)、特別能力者(O)、アスリート、アーティスト、エンターテイナー(P)および文化交流(Q)ビザカテゴリーの初回および更新申請者にも拡大されました。
これらのカテゴリーで初めてビザを申請する場合の条件として、ビザ免除プログラムの国の国民であり、かつ電子渡航認証システム(ESTA)を通じて米国を訪れた経験があることでした。この旅行/審査要件は、学生および学術交流訪問者ビザの初回申請者にも適用されました。このポリシーは2回延長され、2023年12月31日に期限切れとなる予定でした。
結果として、2023年に発行された1040万件の非移民ビザのうち40%が対面式の面接を免除されました。
そのおかげで、一時労働者(H-2ビザ)、学生(F、Mビザ)、交換訪問者(J‐1ビザ)の待ち時間は大幅に短縮され、よりスムーズにビザを取得することができるようになりました。例えば、ムンバイでの学生ビザの待ち時間は、2022年11月から2023年8月の間に最大49日の待ち時間がありましたが、現在は7日に減少しました。一時労働者も同様に待ち時間の短縮があり、ムンバイでは、同じ期間にH、L、O、P、Qビザの待ち時間が339日から22日に短縮されました。
これらの改善にもかかわらず、国土安全保障省と協議した国務省によって策定されたこの政策が延長されるかどうかは不明でした。さまざまなセクターの利害関係者がその継続を訴えていました。
米国旅行協会は、この政策を延長しない場合、2023年に「外国人訪問者の支出で70億ドルの損失」が発生する可能性があると指摘しました。また、アメリカ移民協議会を含む60以上の団体は新しい移民政策が可決されれば、この恩恵を受ける可能性がある将来の非移民ビザ申請者は全体の約30%に昇ると分析し、非移民ビザ新法案の可決を促しました。
これを受けて、米国の議会連盟は、国際学生のビザ処理の予測不可能性と、アメリカが国際学生の才能を引き付けて維持する能力への悪影響に焦点を当てました。
2024年1月1日より施行される新しい政策により、米国務省は非移民ビザ申請者に対する面接免除の方針を更新しました。この政策は、一時的な農業および非農業労働(H-2ビザ)の初回申請者に対する任意の面接免除を継続し、特定のビザに限定することなく、以前に任意の非移民ビザ(訪問者ビザを除く)を発行され、最新のビザの有効期限から48ヶ月以内に申請した他の非移民ビザ申請者にも面接免除を認めています。同様に、国務省は2021年からの政策を継続し、同じカテゴリーの非移民ビザを更新する申請者が、ビザの有効期限から48ヶ月以内に更新した場合、面接免除を適用します。
以前と同様に、申請者は自国または居住国で申請し、ビザの拒否歴がなく(拒否されても免除された場合を除く)、アメリカに渡航するにあたって適格性がある事を証明する必要があります。
この更新のデメリットは、特定のカテゴリーの個人の資格が制限されることです。
ビザ免除プログラムの国の国民である初回非移民ビザ申請者にとっては不利になり、これらの国のメンバーシップによる面接免除の資格がなくなりました。
さらに、訪問者ビザ申請者は、以前に発行された訪問者ビザを使用して面接免除の資格を得ることができなくなり、以前に発行された非移民ビザの有効期限が48ヶ月以上前の個人も資格がなくなりました。
一部の議員は、同様の文言を省庁の方針に任せるのではなく、法律に成文化することを提案しています。
例えばエイミー・クロブシャー(民主、ミネソタ州)上院議員とジェリー・モラン(共和、ノースカロライナ州)上院議員は「ビザ処理改善法案」を提出しました。
この法案は、他の要件の中で、以前に特定の非移民ビザを保持していた人や、ビザ免除プログラム国からESTAを通じて米国に渡航した初回申請者の面接免除を成文化するものです。
また、トニー・ゴンザレス下院議員(テキサス州選出)は、H-2ビザを更新する特定の臨時労働者の面接免除を成文化する超党派の「H-2改善法(HIRE法、H-2 Improvements to Relieve Employers)」を提出しました。
とはいえ、新しいビザ面接免除政策は、国務省が長引く待ち時間に対処するために不可欠な手段です。国務省が歴史的な高水準の需要に苦戦を続ける中、この前向きな一歩は、すべての米国行き旅行者に利益をもたらし続けることになるでしょう。
(引用:Immigration Impact)