ESTA(エスタ)を利用した米国の入国審査について解説

ESTA(エスタ)は、米国ビザ免除プログラムに参加している国の市民がビザを取得することなく、米国90日以内の観光旅行や短期出張などで滞在することが許される電子渡航認証システムです。渡航者は365日24時間いつでも申請することができ、審査結果が出るまで最大72時間(3日間)と非常に短い期間で取得可能なことから、ハワイを含む米国への渡航の際に広く利用されています。

この記事では、初めてESTAを利用して渡航する方を対象に入国審査の流れや必要なもの、注意事項などを詳しく解説していきます。

ハワイを含む米国への渡航にESTAは必要か

まず第一に、ビザ無しで米国へ入国するには、ESTAの取得が必須です。
事前にESTA申請を行い、渡航認証許可を得ることで初めて米国への入国が可能となります。

また、米国を経由してブラジルなどの第三国に渡航する場合でも、米国に一時入国する場合はESTAの申請が必要です。

ESTAは取得後2年間の有効期限があり、期限内であれば何度でも利用することができます。渡航予定がない場合でも事前に取得しておくことで、急な海外出張や旅行などが決まった際にすぐ渡航することが出来るため、米国に渡航することが多い方は前もって取得ことをお勧めします。

なお、ビザの場合は目的によって取得するビザの種類が変わる為、次回以降の渡航の際は再度申請が必要になります。さらに、ビザの取得には1~2か月かかることから、90日以上の滞在または就労での渡航などの理由でなければESTAの取得で十分といえます。
エスタの申請については詳しくは下記記事をご覧ください

アメリカ渡航に必要なESTAの申請方法をわかりやすく解説

ESTAを利用した際の入国審査について

ESTAを利用した米国への入国には、以下のものが必要となります。

パスポート 有効期限が切れていないEパスポート
(ICチップ搭載パスポート)
往復の航空チケットおよび
乗船チケット
米国を経由して第三国へ向かう場合は、
その往復の航空チケットおよび乗船チケットが必要になります。
税関申告書 税関申告書は行きの航空機内でCAから配られますので、
到着までにすべて英語で記入しておきましょう。

この他、ESTAの渡航認証の控え(コピー)や滞在先のチケットなども用意しておくと何かあった際にスムーズに対応できますので、事前準備は十分にしておきましょう。一部の米国の空港では入国の際にESTAの控え(コピー)の提示を求められることがあります。

空港到着から入国審査の流れ

空港到着後の入国の流れは以下の通りです。

①入国審査エリアに移動

空港に到着後、航空会社の乗務員の案内に従って入国審査エリアに移動しましょう。
入国審査エリアでは、Non-US Citizens(非米国市民)と表示された窓口の列に並び、入国審査官
「next.(次の方)」と呼ばれたら前に進みましょう。

②入国審査エリアでの手続き

入国審査官に呼ばれたら、窓口にてパスポートと記入済みの税関申告書を提出しましょう。

その後、入国審査官による米国での滞在目的や滞在期間についての簡単な質問に回答した後、顔写真撮影と指紋の登録が行われます。なお、家族連れの方はまとめて入国審査を行うことができるので、家族連れの場合は代表者が全員分のパスポートをまとめておきましょう。※税関申告書は家族で1枚。

また、入国審査官とやり取りをすることなく入国の手続きを行うことが出来る「APC Kiosk(自動入国審査端末)」を利用することで、英語が苦手な方でも素早く、安心して入国手続きを行うことができます。

③搭乗前に預けた荷物の受け取り

入国審査手続きの完了後、「Baggage Claim(荷物受取所)」に向かい、自分が乗ってきた航空機の番号のカルーセル(ベルトコンベア)の前で預けた荷物が流れてくるのを待ちましょう。なかなか荷物が流れてこないまたは見当たらない場合は、荷物が一か所にまとめてある場所をチェックしましょう。それでも見当たらない場合はお近くの空港スタッフに声をかけて探してもらいましょう。

④税関審査と手荷物検査

Baggage Claimにて荷物を受け取った後は、税関エリアの係員にパスポートと税関申告書を提出しましょう。この時申告が必要なものがある場合は赤いライン(Declare)、申告するものがない場合は緑のライン(Noting to declare)に進みましょう。申告がない場合でも荷物の量によっては赤いラインに移動させられ、追加のX線検査または手荷物検査が行われる場合があります。

なお、この時APC Kiosk(自動入国審査端末)を利用していた場合は税関申告書の提出は必要ありません。

⑤出口

税関審査が完了したら出口(到着ロビー)に向かいましょう。 
外貨為替が出来る銀行や観光案内所は大抵このエリアに設置されています。
また、タクシーやバス乗り場は空港案内に沿って移動しましょう。

APC Kiosk(自動入国審査端末)とは

APC Kiosk(自動入国審査端末)とは、ESTAを利用した渡航者がスムーズに入国審査を行うことが出来る米国税関・国境警備局(CBP)のプログラムです。この端末では通常で入国審査官とのやり取りで行われる入国審査、パスポートの確認、顔写真の撮影、指紋の登録などの手続きを行うことができます。APC Kiosk(自動入国審査端末)は事前登録の必要はなく、渡航者は全て無料で利用することが出来ます。

2023年現在、ハワイを含む米国の主要空港に設置されており、日本語に対応しているので英語がわからない方でも安心して使用することが可能です。その他対応している言語は以下の通りです。

対応している言語
英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、日本語、韓国語、中国語(繁体字/簡体字)

英語での受け答えについて

APC Kiosk(自動入国審査端末)を利用しない場合、入国審査官との英語でのやり取りが必要となります。

入国審査官の中には日本人の観光客に慣れている方もおり稀に日本語で対応してくれる方もいますが、英語でのやり取りが基本となりますので、入国審査官のよくある質問と回答の例を参考に手続きを行いましょう。

Q:How long are you staying?(どのくらい滞在しますか?)
A:3 days.(3日間滞在します。)

※滞在日数を回答。

Q:What is the purpose of your stay?(滞在目的は何ですか?)
A:Sightseeing trip.(観光旅行です。)あるいは、Vacation.(休暇です。)

※滞在目的を回答。

Q:Where are you going to be staying?(滞在場所はどこですか?)
A:The Ritz-Carlton, Los Angeles.(ザ リッツカールトン ロサンゼルスです。)

※宿泊先のホテル名や滞在先住所を回答。

Q:When will you return to Japan?(いつ日本に帰国しますか?)
A:I will return home in 3 days.(3日後に帰国します。)

※正確な日時がわからない場合は帰国時の航空チケット等を提示しましょう。

Q:Have you ever been to the United States?(今まで米国に来たことはありますか?)
A:Yes.(はい、あります。)あるいは、No..(いいえ、ありません。)

Q:What kind of work do you do?(どんな仕事をされていますか?)
A:Company employee.(会社員です。)あるいは、Student.(学生です。)

入国時の税関審査と注意事項

税関申告書への記入の際に気を付けないといけないことは、”虚偽の申告をしない”ということです。

米国の入国時の税関審査にて、荷物に持ち込み禁止のものがあった場合、最高$50,000の罰金が課せられる場合がありますので、以下の持ち込み禁止・免税対象の項目を事前に確認しておきましょう。

<持ち込み禁止品>

動植物 動物や野生生物の製品(毛皮や剥製)、昆虫、植物や果物の種子、球根、切り花、土など
肉製品 米国産以外の肉やハム・ソーセージなどの精肉製品、肉エキスを使用したスープやブイヨン、カレー、スナック菓子、カップラーメン、ふりかけなど。
※卵やチーズを含む肉を使用しない加工食品などは持ち込み可能。
武器になりえる品物 催涙ガススプレーや護身用スプレー、スタンガンなど
麻薬や常習性のある薬物 麻薬、鎮静剤、精神安定剤、抗うつ剤、咳止め薬、睡眠剤など

<免税対象品>

酒類 1クォート(約1リットル)以内。
※成人(21才)以上が対象。
タバコ類 紙巻たばこ200本、葉巻50本、加熱式たばこ個装10箱、刻みたばこ2kgまで。
※成人(21才)以上が対象。
贈答品 合計100ドル以内の品物。
身の回りのもの 販売目的ではないアクセサリー・宝石、化粧品、カメラ、本など。
その他 現金10,000USドルを超える場合、申告が必要。 ※トラベラーズ・チェック、小切手、有価証券を含む。

精神的障害を持っていても米国に入国は可能か

ESTA申請の際によくある質問として、精神的障害(統合失調症、躁うつ病等)などを患っていても渡航認証許可が下りるのか、というものがありますが、精神的障害が必ずしも渡航認証拒否となるわけではありません。

ESTA申請時の適格性に関する質問に「身体的あるいは精神的障害を患っていますか~」という項目がありますが、現在身体的あるいは精神的障害を患っており、自身あるいは他者の所有物、安全、健康、福祉を脅かす行動をしたことがあり、同様の行動あるいはその他の危険行動を再び引き起こす可能性がある場合に「はい」と回答した時のみ入国を拒否されることがあります。

精神的障害を患っていても自身や他者の安全や所有物などを脅かす迷惑行動や危険な行動をを起こすことがないのであれば、米国への入国を拒否されることはありません。

もし仮に過去にそのような行動があった場合でも、渡航先でそのような行動を起こす可能性がないのであれば問題ありません。その場合、医師に相談し英語で診断書を書いてもらい、入国審査官に提出し証明する必要がありますので、渡航前に主治医の方に相談をしておきましょう。

ESTAやビザはあくまで米国への渡航を許可するものであり、米国への入国を許可するものではないため、最終的には入国審査官の判断によって入国が可能となります。しかしながら、よほどのことがない限りはESTAやビザがあれば入国することが出来るので、申告の際は内容をよく確認して記入を行いましょう。
ESTAの適格性審査については下記ページもご覧ください
ESTA(エスタ)申請時の適格性についての質問を徹底サポート

入国審査に関して気を付けたほうがいいこと

ここからは入国審査時に、気を付けたほうがいいことや覚えておいたほうがいいことについて回答をしていきます。

アメリカは入国審査が厳しいことで有名ですが、どういう時に引っかかりやすいのかなど、いざ入国審査の時に焦ることがないように確認をしておきましょう。

ESTA申請時の虚偽は絶対NG

ESTA申請をするときに申請が通りやすいからといって虚偽の申請をすることは絶対NGです。
例えば、過去に逮捕や犯罪歴があるのに、それを隠して申請を行っても入国審査の時に発覚して、入国できない可能性もあります。
過去に犯罪歴があったとしてもしっかり反省していることや、米国で犯罪を起こさないだろうということが証明できれば入国できることもあるので、ESTAではなくビザ申請に切り替えてしっかり証明するなどしましょう。

数か月滞在する場合は資金面も注意しよう

ESTAを取得して入国する場合は最大で90日の滞在期間が付与されることがありますが、この滞在していい期間については入国時の審査によって決定されます。
数日の滞在であればそこまで意識する必要はありませんが、もし90日フルで滞在を希望する場合は十分な資金があるかどうかを聞かれることがありますので、注意しましょう。
手持ちが少ない場合は就労が疑われてしまう可能性があります。

女性一人での入国は質問が多くなる可能性がある

現在、日本人の若い女性がハワイやロサンゼルス、ラスベガスなどの入国審査で入国拒否されてしまうケースが多くなっているようです。
理由としてはパパ活や、売春などハワイで出稼ぎするつもりで入国する女性が増えていることが原因のようです。
観光が目的と話しても就労目的だろ!と言われて入国が拒否されてしまったという人もいるので、女性一人でハワイに行こうと考えている場合は就労目的がわかるように、旅行の計画など詳細に決めておいて聞かれても答えられるようにする。
ビザ申請に切り替えるなど対策しておきましょう。

ESTAを利用した入国審査についてのまとめ

この記事では、ESTAを利用した渡航での入国審査について詳しく解説しました。ESTAでの渡航の入国審査における重要ポイントは以下の通りです。

  • ハワイを含む米国への渡航にはESTAの取得が必須。90日以上の滞在または就労目的での渡航の場合はビザの取得が必要になります。
  • 米国への入国審査にはパスポートや往復の航空チケット、税関申告書などが必要となるので、事前に準備しておきましょう。※税関申告書は行きの航空機内にて配布されます。
  • 一部の空港ではESTAの控え(コピー)の提示を求められることがあるので、念のために用意しておきましょう。
  • 入国手続きを審査官とのやりとりをせずに済ませたい場合はAPC Kiosk(自動入国審査端末)を利用してみましょう。
  • 入国審査官とのやり取りで聞かれそうな質問に対しての回答(滞在日程、滞在場所など)は渡航前にメモしておくことで円滑に進めることができます。
  • 米国に持ち込み禁止のものに対して虚偽の申告を行うと処罰の対象となりますので、税関申告書では正しい内容を記入しましょう。また、渡航前に持ち込み禁止・免税対象の項目をしっかりと確認しておくことが大切です。
  • 精神的障害を患っていても症状によって入国を許可される場合がありますので、渡航前に主治医などに相談してみましょう。

これら重要ポイントを渡航前にしっかり確認しておき、米国の入国審査の手続きを円滑に行いましょう。

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