皆さんはヨーロッパでETIASというシステムが導入予定であることをご存じですか?
ETIASはアメリカで導入されているESTAと同様にビザ免除制度の一環として導入されます。
この記事では、ETIASはどういったシステムなのか、概要から申請、導入時期についてまで解説していきます。
ぜひ、ご覧ください。
ETIAS(エティアス)の公式サイトが公開
幾度にわたる延期が繰り返されてきたETIASですが、昨今、EU(欧州連合)により公式サイトが公開されました。
これにより、不確定要素だったETIASの概要や申請条件などが確認できるようになりました。また、本格的なETIASの導入準備が進められていることが公式サイトの公開によって明確になったと言えます。
ETIAS公式サイトは24ヵ国語に対応しています。
しかし、日本語には対応していないため、Googleの自動翻訳機能などを用いなければ、サイト全体を日本語表記にすることができません。
対応言語については下図と表をご覧ください。
ETIAS公式サイトの対応言語 |
・BG-ブルガリア語 ・FR -フランス語 ・NL-オランダ語 ・ES -スペイン語 ・GA-アイルランド語 ・PL-ポーランド語 ・CS-チェコ語 ・HR -クロアチア語 ・PT-ポルトガル語 ・DA-デンマーク語 ・ IT -イタリア語 ・RO-ルーマニア語 ・DE-ドイツ語 ・LV -ラトビア語 ・SK-スロバキア語 ・ET -エストニア語 ・LT -リトアニア語 ・SL-スロベニア語 ・EL -ギリシャ語 ・HU-ハンガリー語 ・FL-フィンランド語 ・EN-英語 ・MT-マルタ語 ・SV-スウェーデン語 |
なお、英語以外の対応言語を表示させる場合は、欧州委員会によって作成された自動翻訳機能を利用して表示する形となります。
そのため、翻訳で一部不自然な部分がある可能性があるので、注意してください。
ETIASの公式サイトはこちらです。
ETIAS公式サイト:https://travel-europe.europa.eu/etias_en
導入はいつ?ETIAS導入について解説
現在ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国へ渡航する際、日本からの渡航者はビザの取得なしで入国できます。しかし、シェンゲン協定加盟国は渡航する際、事前に渡航認証を行うETIAS(エティアス)の導入を準備しています。ETIASの導入時期は幾度にわたる延期が繰り返されており、EUからはETIASは2025年の半ばから運用が開始されると発表されています。
ETIASはどのようなシステムなのか、概要から申請については下で解説していきますのでぜひご覧ください。
導入の背景
ETIAS(エティアス)を導入するにあたってどのような背景があったのか解説していきます。
昨今、ヨーロッパ各地では難民、宗教戦争、民族の軽蔑(ヘイト)などの問題があります。そういった問題の中で、渡航者に対して対策をしなければならないのはテロ問題です。外国人によるテロ行為を未然に防ぐには海外からの入国者の情報を迅速かつ正確に把握する必要があります。その為にも、ヨーロッパではアメリカで既に導入されているESTAと同様のシステムであるETIASの導入をすることとなりました。
ETIASの導入により、入国時の審査を効率化させることができ、違法行為やテロ行為を目的としたヨーロッパ諸国、第三国への渡航を未然に防止することが可能になります。また、ETIASの導入によって次のようなメリットが見込めます。
・ビザ申請にかかる手間と時間の削減 ・隣接する国との国境管理の改善 ・EUビザ自由協定の遂行とさらなる補完 ・移民問題の増加の抑制 ・外国人によるテロまたは犯罪行為の抑止 |
上記のような背景があり、ETIASの導入が進められています。
シェンゲン協定とは
ETIAS導入にあたり、覚えておかないといけないのがシェンゲン協定です。シェンゲン協定とはヨーロッパの国々が加盟をしている協定であり、加盟国間の出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを可能にするものです。ヨーロッパ内の人々の移動や物流を自由に行うために、1985年6月に締結され、現在27か国もの国が加盟しています。
現在のシェンゲン協定の加盟国は次の通りです。
・オーストリア ・ベルギー ・チェコ ・デンマーク ・エストニア ・フィンランド ・フランス ・ドイツ ・ギリシャ ・ハンガリー ・アイスランド ・イタリア ・ラトビア ・リヒテンシュタイン ・リトアニア ・ルクセンブルグ ・マルタ ・オランダ ・ノルウェー ・ポーランド ・ポルトガル ・スロバキア ・スロベニア ・スペイン ・クロアチア ・スウェーデン ・スイス |
ETIAS(エティアス)とは
アメリカでは、ESTA(エスタ)*と呼ばれる「電子渡航認証」が導入されています。
現在ヨーロッパでは、アメリカのESTAと同様な「電子渡航認証」の導入準備を進めています。
ヨーロッパで導入される電子渡航認証の名称はETIAS(エティアス)となります。
では、ヨーロッパで導入が予定されている電子渡航認証「ETIAS」とはどういうものなのか解説していきます。
ETIASとは新たにシェンゲン協定加盟国への入国時に必要となる「事前渡航承認システム」のことです。正式名称は【European Travel Information and Authorisation System】といい、日本語では「欧州渡航情報認証制度」と訳されます。利用目的に関しては、観光または短期のビジネスに限られています。なお、乗り継ぎでの入国でも申請が必要になるので注意してください。
ETIASはアメリカのESTA同様、渡航前にオンライン上で申請することで事前に渡航者の情報や適格性を審査し、渡航許可・認証するシステムです。そのため、ETIAS対象国への入国はETIAS申請を行うことによりビザ取得の必要がなくなります。ETIASは、年齢を問わず対象国への入国をする全ての渡航者の申請が必要となるため注意しましょう。
*ESTA(エスタ)とは、アメリカのビザ免除プログラム(VWP)を利用するために申請及び取得をしなければならない電子渡航認証であり、観光や商用ビジネスを目的としたアメリカ渡航の際に利用可能となっています。
ESTAについて詳しく知りたい方は下記ページをご覧ください。
入国時にETIASが必要になる国
ETIASはシェンゲン協定加盟国へ渡航する際に申請が必要となります。
加盟国について既に上で述べましたが、ETIAS導入後、現在の加盟国以外の国へ渡航する場合も必要になるケースがあります。おさらいも兼ねて再度解説していきます。
入国時にETIASが必要になる国は次の通りです。
シェンゲン協定加盟国 | ・オーストリア ・ベルギー ・チェコ ・デンマーク ・エストニア ・フィンランド ・フランス ・ドイツ ・ギリシャ ・ハンガリー ・アイスランド ・イタリア ・ラトビア ・リヒテンシュタイン ・リトアニア ・ルクセンブルグ ・マルタ ・オランダ ・ノルウェー ・ポーランド ・ポルトガル ・スロバキア ・スロベニア ・スペイン ・クロアチア ・スウェーデン ・スイス |
シェンゲン協定加盟予定国 | ・キプロス ・ブルガリア ・ルーマニア |
シェンゲン協定非加盟国 | ・サンマリノ ・バチカン ・モナコ ・アンドラ |
ETIASの必要な国は現在のシェンゲン協定加盟国に加え、シェンゲン協定加盟予定国と非加盟国があります。なお、シェンゲン協定加盟予定国に関してはまだ確定されているわけではなく見込みの段階です。シェンゲン協定に加盟した際に追加で情報が出ると思われますので、ご確認ください。また、加盟予定国が増える可能性もあります。そちらに関しても、随時ご確認ください。
※2023年12月、ルーマニア内務省よりブルガリアとルーマニアのシェンゲン協定加盟にオーストリアが合意したと発表がありました。 これにより、2024年春にはブルガリアとルーマニアの2ヵ国がシェンゲン協定に正式に加盟する見通しとなっています。 |
シェンゲン協定非加盟国は上の表の通り、サンマリノ、バチカン、モナコ、アンドラの4か国があります。この4か国はシェンゲン協定に加盟していませんが、加盟国と隣接している国家です。また、4か国は空港がないため空路での渡航ができません。そのため、必然的にシェンゲン協定加盟国からの入国をしなければいけないため、ETIASの申請が必須になります。
※イギリス、アイルランドはシェンゲン協定に加盟していないため、ETIASの申請は不要です。しかし、これらの国々からETIAS対象国へ入国する場合はETIASの申請が必要になります。
有効期限・滞在期間について
ESTIAの有効期限・滞在期間は次の通りです。
有効期限 | 3年間 ※パスポートの有効期限が3年以下だった場合、パスポートの失効と同時にETIASも失効 |
滞在期間 | 最大90日 ※半年(180日)のうち90日以上滞在していないことを条件に、複数回の渡航が可能 |
ESTAと同様に、パスポートの有効期限が短い場合は同時に失効してしまうので注意しましょう。
ETIASの申請について
90日以内の短期滞在をするETIAS対象者が、入国する際にETIASを必要とするヨーロッパ諸国へ渡航する際には、事前にETIASを取得しなければなりません。
ETIASが申請可能な渡航理由は以下の通りです。
- 観光
- 短期商用(ヨーロッパ諸国側からの報酬を伴わない物に限る)
- 短期留学(90日以内)
上記以外の渡航目的や90日間の滞在日数を超える場合は、ビザの申請を行いましょう。
ETIASは公式WEBサイトを利用して申請を行いますが、まだ運用されていないため、申請ページがありません。
申請方法について、いつ情報が公開されるかわからない状況のため、ETIAS公式サイトを確認し、最新の情報を取得しましょう。
申請の対象者
ETIAS申請の対象者は、現在シェンゲン協定加盟国へ入国する際にビザが免除されている国の渡航者です。また、日本もその国の一つです。
では、どの国が対象なのか下記一覧で紹介します。
ETIASの取得が可能な国と地域 |
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・アルバニア ・アンティグア・バーブーダ ・アルゼンチン ・オーストラリア ・バハマ ・バルバドス ・ボスニア・ヘルツェゴビナ ・ブラジル ・ブルネイ ・カナダ ・チリ ・コロンビア ・コスタリカ ・ドミニカ ・エルサルバドル ・ジョージア ・グレナダ ・グアテマラ ・ホンジュラス ・香港 ・イスラエル ・日本 ・キリバス ・コソボ ・マカオ ・マレーシア ・マーシャル諸島 ・モーリシャス ・メキシコ ・ミクロネシア ・モルドバ ・モンテネグロ ・ニュージーランド ・ニカラグア ・北マケドニア ・パラオ ・パナマ ・パラグアイ ・ペルー ・セントルシア ・セントビンセント・グレナディーン ・サモア ・セルビア ・セーシェル ・シンガポール ・ソロモン諸島 ・韓国 ・台湾 ・東ティモール ・トンガ ・トリニダード・トバゴ ・ツバル ・ウクライナ ・アラブ首長国連邦 ・イギリス ・アメリカ ・ウルグアイ ・ベネズエラ |
上記の国の国籍を持つ渡航者がETIASを必要とする国へ渡航する場合は、ETIASを申請しましょう。
申請に関する情報
ここでは、ETIASの申請について公式サイトで発表されている情報をまとめていきます。
ETIAS申請で利用できるパスポートは、ETIASを必要とするヨーロッパ諸国からの出国予定日から3ヶ月以上の有効期限を有している必要があります。また、10年以上前のパスポートは利用できないため、注意してください。
また、申請料金は7ユーロになります。
下記表でETIAS申請についての情報をまとめましたので、ご確認ください。
ETIASの申請内容 | |
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申請に必要な情報 | ・氏名、生年月日、出生地などの個人情報 ・電子メールアドレス ・両親の氏名 ・パスポート情報 ・学歴や職業 ・滞在先情報 ・過去の犯罪歴の有無 ・強制送還の有無 ・戦争地域または紛争地域への渡航歴の有無 【代理人が申請を行う場合は下記の情報が必要です】 ・代理人の氏名 ・会社または組織名と連絡先(該当する場合) ・申請者本人との関係性 ・申請者本人との代理人宣言書に署名したことを示す確認書 |
申請料金 | 7ユーロ |
認証に要する時間 | 数分~96時間以内 ※追加書類や情報の提示、 面接が必要になった際は、30日程度かかる場合がある |
※上記の情報はいずれも2024年2月時点での情報のため、変更される可能性があります。
なお、長期滞在を目的とした方やETIAS申請後に何らかの理由により認証拒否になってしまった方はシェンゲンビザの取得が必要になります。
ETIAS申請時の注意点
ETIASの申請後、通常なら約数分〜96時間以内に認証結果が通知されます。しかし、追加で情報や書類を求められた場合や、面接を受ける必要がある場合は、認証までに30日程度かかる事があるため、渡航までの期間に余裕をもって申請を行うようにしましょう。
もし面接が必要になった際は、居住地から最寄りの領事館またはオンラインで行う面接の案内が届きます。
また、ETIASの公式サイト及び申請ページは24ヵ国語に対応していますが、入力はアルファベット(英数字)で行う必要があるため、注意しましょう。なお、申請内容を一時的に保存することは可能ですが、保存期間が48時間なので、保存期間が過ぎてしまった場合は、新しく申請を行う必要があります。
ETIASはグループでの申請を行っていないため、家族や友人などと合同で取得する事ができず、1名ずつ申請を行う必要があります。
一方、滞在先が決まってない場合でもETIASの申請は可能です。しかし、申請時に訪れる予定のある国を申告する必要があるため、最初に訪れるであろう国を入力しましょう。滞在先に関しては、取得後でも変更が可能です。
申請内容の訂正について
ETIASの申請を行う際、申請内容に誤りがあった際は、認証拒否や取り消しになる可能性があるため、注意が必要です。また、間違った内容で申請した際に、取得ができたとしても、入国時に入国拒否になる事があるため、ETIASの申請時には入力内容をよく確認して申請を行うようにしましょう。
万が一、ETIASの申請後に申請内容の間違いに気づいた場合は、正しい申請内容での再申請を行う必要があります。また、使用するメールアドレスの変更や間違った国籍の申告を行った場合に加え、パスポート番号や氏名の変更時にも再申請を行いましょう。
なお、誤字などの軽微な間違いであれば、訂正を依頼することも可能です。ただし、修正依頼の処理には30日程度かかる場合があるため、注意してください。
ETIASの認証が拒否された場合
ETIASの申請後に、認証が拒否された場合は、拒否の理由が記載されたメールが届きます。
その後、認証結果に不満がある場合は、EU(欧州連合)に向けて異議申し立てを行うことができます。
異議申し立ての手順は、ヨーロッパ側から説明されるため、その手順にしたがって手続きをしましょう。
また、ETIASが拒否されたことがある場合でも、再度申請を行うことができます。その際は、過去に拒否された事があったとしても自動的に拒否にはならず、再度審査を受けることができます。
なお、再申請をしても、認証が拒否になってしまう場合は、シェンゲンビザの申請を行ってください。
まとめ
ETIASはヨーロッパへ渡航する際には必ず必要となります。まだ導入はされていないため情報は不確定なものが多いのですが、どういった制度なのかを今の段階で知っておくことで導入後にスムーズに対応ができると思います。この記事を通して、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。
本記事を参考にしていただき、ETIASの導入に備えましょう。