アメリカへ渡航する際には主にビザあり留学とビザなし留学の2種類あることをご存じですか?ビザなし留学ではESTAという短期アメリカ渡航制度を利用します。しかし、短期留学だからといって必ずしもESTAを利用できるわけではありません。この記事では、アメリカ留学に欠かせないESTAとビザの違いを解説していきます。
ビザあり留学とビザなし留学の違いは?
ビザあり留学は、主に長期間のアメリカ留学に利用されます。長期間とは、具体的には留学期間が90日以上のことを指します。現地に滞在する時間が長い方はビザ申請すべきです。
一方、ビザなし留学はアメリカの短期渡航認証制度のESTAを利用します。ESTA取得にかかる費用はビザに比べて申請料のみしかかからないため、安価です。
アメリカ留学費用を抑えたい大学生や自費で留学したい方にはピッタリです。。ただし、ESTAを利用して留学する場合は現地での滞在時間が90日未満である必要があります。また、ESTAは観光・ビジネス用に設けられた渡航制度なので就学時間は週に18時間未満までしか許されていません。フルタイムで本格的に就学したい場合は、学生ビザを取得しアメリカに留学しましょう。
ビザなし留学 | ビザあり留学 | |
---|---|---|
滞在期間 | 90日以内 | 90日以上 |
就学時間 | 週18時間未満 | 週18時間以上 |
アルバイト | 不可 | 可能(条件あり) |
費用 | ESTAの申請料金のみ | ビザの申請料金とSEVIS費用 |
ビザなし留学で必須!ESTAを解説
ESTAはビザ免除プログラムの一環として導入されたビザに代わって米国に渡航する際に必要になる電子渡航認証システムです。電子渡航認証とは、海外からアメリカに渡航してくる人々に危険な人がいないかを事前に確認する制度のことです。ESTAには、滞在期間が最長90日、渡航目的が観光・ビジネスのどちらか出なければならないという条件があります。つまり、観光ビザの代わりに利用することができます。しかし、短期留学にはぴったりな制度です。主な理由として、時間や費用、手間がかからないという点です。ビザの申請には非常に長い時間がかかるだけではなく、書類を大使館・領事館に提出するなど多くのことをやらなければならないので大変です。しかし、ESTAは申請者の個人情報の入力等の必要な手続きは全てオンラインで行うことができます。
ESTAの申請方法
ESTAの申請に必要なものは申請者のパスポートとクレジットカードのみです。ESTAの申請画面から個人情報の入力、パスポートの写真をアップロード、適格性の質問について答えるだけで情報の入力は完了です。その後、クレジットカードにて申請料金を支払うことでESTAの取得が可能です。詳しい申請の手順を知りたい方は、こちらの記事をご参考にしてください。
ESTA申請は英語でのご案内が主になります。加えて完全オンラインでの受付になりますので、パソコンやネットワーク環境が必要になります。英語やパソコンに自信がない方は当サイトにて申請代行を承っておりますので、気軽にご利用ください。
ESTAで短期留学する際の注意点
短期留学にぴったりなESTAですが、注意しなければならない点が3つあります。
①滞在できる期間は最長90日
一つ目はESTAはあくまで短期観光用の渡航制度になりますので、滞在期間は90日以内でなくてはなりません。また、就学時間が週18時間未満でないと、学業目的でアメリカ渡航をしてきたのではないかと疑われてしまい、入国拒否されてしまう可能性があります。そのため、90日以上の長期留学をしてフルタイムで学業に専念したい方はビザあり留学を目指しましょう。
②申請時期
二つ目はESTAの申請時期についてです。ESTAはフライトの72時間以上前(三日前)に申請することが推奨されています。理由は、ESTAの申請は遅くても72時間までには結果が出るからです。個人情報などが間違いなく入力されている場合は24時間以内に渡航許可が出るケースが大半です。しかし、入力に間違いがあったり適格性の質問に「はい」と答えざるを得なかった場合はより長く時間がかかってしまいます。そのため、念のために72時間以上前に申請をしておきましょう。おすすめは、渡航を決めた段階でESTA申請をすることです。ESTAは有効期限が2年間です。そのため、渡米数か月前に申請しても何の問題もないというわけです。
③入国審査での渡航理由について
三つ目は入国審査にあたって、審査官になぜアメリカに来たか尋ねられた場合です。上記にある通り、ESTAは観光・商用目的の方のみ渡航することが許されています。そのため、渡航理由を尋ねられた時には「Sight seeing.(観光です。)」と答えましょう。
学生ビザの種類
学生ビザとは、海外留学を目的とする学生に向けた渡航査証です。
学生ビザには留学先の学校の種類に合わせて2種類あります。ビザを利用して留学する場合にはSEVIS(セビス)という留学生の個人情報を確認する制度に登録する必要があります。下記では、ビザ申請料金や有効期限などそれぞれの特徴を解説していきます。
F1ビザ
F1ビザはもっとも一般的なビザです。週18時間以上(フルタイム)で講義を受ける高校・短大・大学・大学院・語学学校生がアメリカで就学する際に必要になります。
ビザの取得には、ビザ申請料160ドルに加えて、SEVIS費用200ドルの合計360ドル支払う必要があります。
ビザ取得には日本の米国大使館・領事館に赴き、必要な書類を提出し、面接を受ける必要があります。
F1ビザの有効期限
基本的にF1ビザの有効期限は最長5年です。しかし注意しなくてはならない点があります。
有効期限は一律で決められているわけではなく、個々の状況次第で変化します。
具体的には、F1ビザの有効期限は受け入れ先の学校のカリキュラムによって有効期限が決まります。そのため、就学期限が18か月の方は有効期限が短めになる可能性があります。
アルバイトについて
F1ビザを取得した学生は勉強するためにアメリカに滞在する許可が出ています。そのため、現地で働くことは禁止されています。しかし、留学先が大学であれば大学側の許可を得ることができればキャンパス内の施設で働くことができます。
働くには条件があります。
①1学期中に12単位以上取っているフルタイムの学生である
②夏休み・冬休みを除く期間の就労時間は週20時間まで
大学外で働くには条件として
①大学に1年以上在籍している
②アメリカ移民局に申請を出し「不可抗力によって経済的困難な状況にある」と判断された場合のみになります。
ほかにもカリキュラープラクティカルトレーニング(CPT)やオプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)という学業関連実習や修了後の一時的な雇用などがあります。アメリカで就労する場合はソーシャルセキュリティナンバー(社会保障番号)が必要になりますので現地の社会保障省に申請しましょう。
M1ビザ
M1ビザはF1ビザと同じ「学生ビザ」の区分です。しかし、F1ビザとは違う点がいくつかあります。F1ビザを取得する方は語学や学術的なことを学びにアメリカへ渡航することを許可されています。しかし、M1ビザを取得した方は、その後の職業で必要になる技術や専門知識を学びたい人や現場での研修を受けたい方に向けられたビザです。
具体的には、映像技術やデザインといったクリエイティブな職業に就いている人や、その職に就こうと考えている学生です。
M1ビザの有効期限
M1ビザの有効期限は最長1年です。F1ビザと同じく、受け入れ先のカリキュラムによって有効期限は短くなります。つまり、受講する講義が6か月間であるとしたら、有効期限も6か月になります。
M1ビザは現地で働ける?
M1ビザを持っている方は就学中に働くことはついては厳しく制限されてます。しかし、カリキュラム修了後はプラクティカルトレーニング(PT)期間が設けられています。
PTは、M1ビザで就学した方が4か月以上経過するとその都度1か月の就労が許され、最大6か月間働くことができます。しかし、就労の申請には学校側の許可証が必須です。また就学した内容と一致する職業でなければなりません。
映像系の技術を学びに来た方が飲食店では働くことはできないというわけです。
M1ビザからF1ビザに変更することはできますか?
M1ビザで職業訓練生として渡米してきた方はF1ビザへ変更することはできません。理由として、M1ビザは非常に高度な技術を学ぶ人に与えられるものです。なので、語学や学術的な知識はすでに備わっているものとしてF1ビザでの就学は不自然だと判断されるためです。
一方で、F1ビザからM1ビザに変更することはできます。しかし、M-1ビザを取得した方がF-1ビザを得ることは非常に難しいといわれています。
学生ビザを取得する3つの条件
単に学生であるだけで学生ビザを取得することはできません。以下の3つの条件に当てはまっている必要があります。
1つ目は、「学費や生活費を支払えるだけの経済力があること」です。
留学するために最低限必要になる支出として、学費と生活費が挙げられます。必要になるお金が払えなければ、留学中の生活難によって窃盗や不法就労といったトラブルを発生させてしまうことが考えられます。そのため、経済的に余裕があることを証明するために、銀行口座の残高証明書を提出する必要があります。未成年・学生の方は保護者の銀行残高証明書が必要になります。
2つ目は、「留学するに足りる学力を持っているか」です。留学先の学校のカリキュラムについていけるだけの学力があることを証明しましょう。
ところで、以前までは学生ビザの申請に在学先の学校の成績証明書の提出が義務付けられていました。しかし、2015年12月より成績証明書の提出は不要になりました。ですが、提出が求められる場合もありますので、在学先の学校へ問い合わせて成績表を受け取っておきましょう。
最後の条件は「有効期限までに出国する意思があること」です。アメリカは不法移民の問題が非常に深刻です。そのため、大使館・領事館の職員は面接の際「アメリカに留まる意思がないか」を重点的に見てビザの発行を検討しています。ビザの取得のために日本へ帰国する意思表示をすることが大事になります。
小中高生のアメリカ留学には保護者の同意書が必要
小中高生がアメリカへ短期留学に行く際には、ESTAまたはビザの取得に加えて両親または同行しない保護者からの英文の渡航同意書を持参することを推奨しています。必須の書類ではないですが、入国審査官に子供のみでいることを不審に思われ、同意書の提出を求められてしまう場合もあります。保護者の同意書が確認できない場合は、最悪日本へ送り返されてしまうこともあるので念には念を入れて、持参させましょう。
なお、渡航同意書には、決められた用紙はありません。そのため、ご自身で作成する必要があります。
下記画像にて渡航同意書の一例をご紹介しますので、作成する際には参考にしてください。
渡航同意書の例
短期留学に人気の都市
アメリカは日本よりも広く様々な都市があるため、どの都市へ行くか迷っている方も多いと思います。そのため、人気のある都市を3つ選びました。それぞれの特徴、メリット、デメリットを記載しますので是非参考にしてください。
ロサンゼルス
特徴
ロサンゼルスは年間約300日が快晴というアメリカ国内きっての過ごしやすい都市として有名です。加えて、一年を通して平均気温が17℃と温暖です。意外に思われるかもしれませんが、気候は留学先を決めるうえで重要な要素です。留学することは単に「英語を学ぶ」だけではありません。現地の文化に触れるなど「英語圏で生活する」事も含まれています。つまり、留学先で思い出を作ることも重要になるというわけです。
気温が寒かったり、年間を通して雨量が多かったりすると外に出るのが億劫になるだけでなく、病気に罹るリスクも高まります。そのため、留学先の気候は重要な選択になるのです。
メリット
ロサンゼルスは人種の多様性に富んでいます。もともとメキシコ領であったことからヒスパニック系の方が多く、アメリカでは最もヒスパニックの割合が高いです。また、アジア系の人種も多く移民として暮らしており、日本人街の「リトルトーキョー」をはじめ、コリアンタウンやチャイナタウン等も存在します。このように、第一言語が英語ではない人種が多く住んでいる都市なので、英語の発音が聞き取りやすくゆっくり話す傾向にあります。英語力が初中級の留学生にうってつけの都市といえるでしょう。
デメリット
ロサンゼルスのデメリットは3つあります。
一つ目は、物価が高いことです。2023年9月現在1米ドルは150円です。そのため、日本の1.5倍くらいの値段で日用品等を買うことになります。また、外食をする場合、ランチは7〜10ドルほどかかります。つまり日本円では、1050円〜1500円ほどかかる計算になります。留学費用を抑えたい方には向いていない都市といえます。
二つ目は治安が悪いことです。アメリカは日本に比べ治安が悪いですが、ロサンゼルスは「アメリカのギャングの首都」と呼ばれるほどギャング集団が多いです。移民の流入が多い一方で、宗教や文化で対立する構図が表面化しているようです。そのため、渡米前には現地の留学情報や留学エージェントを参考にしてしっかり情報収集し、防犯意識を高めましょう。
三つ目は公共交通機関があまり発達していないことです。ロサンゼルスには様々な観光地がありますが、主要な交通機関は長距離バスのみになります。日本のように鉄道が発達しているわけではありませんので、通学や観光地に足を運ぶ際にはバスを利用することが一般的です。
シアトル
特徴
シアトルはカナダとの国境に位置する山や海に囲まれた自然豊かな都市です。日本のように四季がありますが、寒暖差は激しくなく夏でも25℃前後になります。また、シアトルは環境保護に積極的な都市としても有名でリサイクル法や電気自動車の推進も活発です。
メリット
シアトルはアメリカ国内でも住みやすい都市です。2019年以降、シアトルは住みやすい街ランキングで上位を維持し続けています。
気候は夏は25℃前後、冬は最低気温が氷点下になることはほとんどありません。そのため、日本からの留学生にとっては快適に過ごせるでしょう。ホームステイが盛んに行われており、現地の人とコミュニケーションを取りながら生活することもできます。
自然が豊かである一方で、シアトルは世界的に有名な大企業のオフィスが多く存在することでも有名です。例えば、アマゾンやマイクロソフト、スターバックス等です。社内見学ツアーが開催されているオフィスもありますので、英語だけでなく社会的な素養も学べる都市になります。
加えて、公共交通手段として地下鉄やバスが発達しています。路線も豊富にあり、移動の不便はほとんどありません。アメリカのほとんどの都市は自家用車がなければ移動が困難ですが、シアトルでは移動の心配がほとんどありません。
デメリット
シアトルのデメリットとして、物価が高い・降水確率が高いことが挙げられます。物価はアメリカ国内と比較しても75都市中8位という結果が出ています。特に家賃が高く、中心部でワンルームを借りると平均1か月23万円かかります。そのため、学校の寮に住んだり郊外に部屋を借りるなど対策をしましょう。
また雨がよく降る都市でもあるので、防水対策はしっかりして行きましょう。
ボストン
特徴
ボストンはアメリカの建国の地であるため、歴史的建造物と近代的なビルが立ち並ぶ古と新の融合が特徴的な都市です。また、日本人が留学先としてあまり選ばない都市なので留学目的が語学留学の方にはうってつけの場所です。
メリット
世界的に有名な大学が数多くある学術都市の一面もあるボストン。科学技術分野で最高峰のマサチューセッツ工業大学や、世界一入学が難しいといわれるハーバード大学など50以上の大学がボストンに集中しています。英語学習に身が入るだけでなく意外なアイデアや考え方も学ぶことができるはずです。
交通の便もよく、ボストンの地下には4路線もの地下鉄が走っています。SuicaのようなICカード「チャーリーカード」が利用できるため日本と同じように気軽に利用できます。
デメリット
ボストンは四季がありますが、一方で冬の寒さが厳しいです。北海道とほぼ同じ緯度のため、年間平均最高気温が15℃と寒冷な地域です。最低気温が氷点下5℃〜氷点下15℃くらいになり防寒対策は必須です。しかし夏は、日本よりも涼しく乾燥しているので快適に過ごすことができます。
アメリカ国内に比べると治安は良い方ですが、日本と比べると危険なので夜道は歩かないなど防犯の意識をしっかり持って生活しましょう。
まとめ
アメリカ短期留学をする際にはビザあり留学とビザなし留学の二種類の選択肢があることをご紹介しました。
ビザなし留学には、ESTAが必須です。注意点として90日未満、週18時間以内の学習時間でなければなりません。90日以上の長期留学を希望する方や週18時間以上(フルタイム)で留学をしたい場合はビザを取得しましょう。
結論として、
- アメリカ短期留学を検討している方は、まずは自分の留学目的や予算を明確にしましょう。
- ビザなし留学で十分な場合は、ESTAを取得すれば簡単に渡米することができます。
- 90日以上の長期留学を希望する場合や、フルタイムで就学したい場合は、ビザの取得が必要になります。