ESTAとは、米国政府によって施行されているビザ免除プログラム(VWP)の制定に伴い導入された電子渡航認証システムです。ESTAはアメリカ渡航の際、VWP対象国の渡航者が事前に申請・取得を行うことでビザの取得を行わずにアメリカへ入国が可能になるシステムです。
ESTAの申請要件として、アメリカでの滞在期間が90日以内であり、渡航目的が観光または短期商用である必要があります。
ESTAは二重国籍を所持している方でも申請が可能ですが、ESTAは申請者のパスポート情報で管理されているため、どのパスポートを使用すればよいのか疑問に思う方はいらっしゃいませんか?
本記事では、二重国籍を所持している場合のESTA申請について、周知事項や国籍による申請の可否について解説していきます。
ぜひ、参考にしてください。
ビザ免除プログラム(VWP)の概要
アメリカでは、米国政府が米国国土安全保障省(DHS)との協力の下、対象国の渡航者に対してビザ(査証)の取得を免除する制度としてビザ免除プログラム(VWP)が制定されています。
ビザ免除プログラムを利用することにより、参加している41の国や地域の市民または国民が、90日以内の米国滞在であれば、ビザ(査証)を取得する必要がなく観光または商用を目的としたアメリカ渡航が可能になります。また、その見返りとして、これら41の国と地域は、米国市民及び国民が自国へ商用または観光目的で、同様の期間滞在する場合に、ビザなしでの渡航を許可しなければいけません。なお、VWP(ビザ免除プログラム)を利用する渡航者は、事前にESTA(エスタ)の取得を行う必要があります。
以下では、ビザ免除プログラム(VWP)の利用条件について解説していきます。
利用条件
ビザ免除プログラム(VWP)を利用する際は、米国政府によって定められた国や地域の市民または国民である必要があります。また、米国への渡航も目的が観光または商用であることに加え、90日以内の滞在期間であることも条件になります。
その他にも、逮捕歴や有罪判決の有無、感染症や病気の罹患についてなどいくつかの条件があり、全ての条件を満たしている事が必要になります。
ビザ免除プログラム(VWP)の利用条件は以下の通りです。
- 商用、観光、乗り継ぎの目的で90日以内の米国入国を予定していること。
- ビザ免除プログラム加盟国から合法的に発行された有効なパスポートを所持していること。
- ビザ免除プログラムに加盟している航空会社で入国すること。
- 往復または復路の航空券を所持していること。
- アメリカ滞在中に隣接する国または島へ旅行する際は、旅行者が隣接する国または島の居住者ではない場合、そこで旅行を終わらせないこと。
- ビザ免除プログラム対象国の国民又は市民であること。
- 有効なESTAを取得すること。
上記の条件のうち、1つでも該当しない方は、VWPの利用ができないため、注意しましょう。
また、ビザ免除プログラム対象国は以下の通りです。
ビザ免除プログラム対象国 |
---|
・アンドラ ・オーストラリア ・オーストリア ・ベルギー ・ブルネイ ・チリ ・クロアチア ・チェコ ・デンマーク ・エストニア ・フィンランド ・フランス ・ドイツ ・ギリシャ ・ハンガリー ・アイスランド ・アイルランド ・イスラエル ・イタリア ・日本 ・韓国 ・ラトビア ・リヒテンシュタイン ・リトアニア ・ルクセンブルク ・マルタ ・モナコ ・オランダ ・ニュージーランド ・ノルウェー ・ポーランド ・ポルトガル ・サンマリノ ・シンガポール ・スロバキア ・スロベニア ・スペイン ・スウェーデン ・スイス ・台湾 ・イギリス |
2023年11月7日より、イスラエルがビザ免除プログラム対象国として加盟しました。
なお、イギリスのキュラソー島、ボネール島、セント・ツータティウス島、サバ島、セント・マーチン島(旧オランダ領アンティル)の新国家の国民は、それぞれの国のパスポートで入国する場合、ビザ免除プログラム(VWP)の対象にならないため、注意してください。
ビザ免除プログラム(VWP)についてより詳しく知りたい方は下記ページをご確認ください。
ビザ免除プログラムとESTA(エスタ)を深掘り!知っておきたいを徹底攻略!!
二重国籍でESTA申請を行う際の周知事項
ESTAの取得は、VWP(ビザ免除プログラム)対象国の国籍を持った渡航者のみ可能となっています。そのため、二重国籍を所持している場合、どちらか一方の国籍がVWP対象国のものである必要があります。
二重国籍の方は、ESTAの申請を行う際にVWP対象国のパスポートでの申請が必要です。
なお、国籍が両方ともVWP対象国のものだった場合、両国のパスポートでESTAを申請してしまうと、情報の処理に時間がかかってしまい、入国審査がスムーズに行えなくなってしまうため、どちらか一方のパスポートで申請をするようにしましょう。
VWP対象国の国籍を所持していてもESTAの申請できない場合
アメリカでは、2015年12月18日に「ビザ免除プログラム改定およびテロリスト渡航防止法」が可決されました。そのため、ビザ免除プログラムの利用条件に新たな制限が設けられました。
下記に該当する渡航者はVWPの利用を制限されます。
下記に該当する渡航者はVWPの利用及びESTAの申請が制限されます。
- ビザ免除プログラム参加国の国籍所持者で、2011年3月1日以降にキューバ、朝鮮民主主義人民共和国、イエメン、イラン、イラク、スーダンまたはシリアに渡航または滞在したことがある
- ビザ免除プログラム参加国の国籍と、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、イラン、イラク、スーダンまたはシリアのいずれかの国籍も有する二重国籍者
したがって、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、イラン、イラク、スーダン、シリアの国籍を含む二重国籍を所持している方はESTAの申請ができないため、ビザ免除プログラム(VWP)が利用できません。
また、ビザ免除プログラムの改定に伴い、VWP利用にはICチップ搭載パスポートの所持が義務付けられました。そのため、ESTAを申請する際は、ICチップが搭載されているe-パスポートの所持が必要です。
上記に該当する、二重国籍所持者はVWPの利用ができないため、ビザ(査証)の取得を行い、米国への渡航を行ってください。
アメリカ国籍を含む二重国籍の場合
アメリカでは、アメリカ国民(二重国籍の有無に関わらず)の方はアメリカのパスポートを使用して米国に出入国することを法律で定めています。そのため、アメリカ国籍を含む二重国籍を所持している方は、ESTAの申請を行う必要がなく、アメリカのパスポートを利用して米国への渡航をしなければなりません。
なお、アメリカのパスポートを所持していない方や有効期限が切れて失効している方で渡米を検討している方は米国パスポートが必要になるため、必ず米国大使館にてパスポートの申請または更新を行いましょう。
パスポートに関して詳しくは在日米国大使館ホームページをご覧ください。
日本国籍を含む多重国籍所持について
日本では、日本国籍と外国籍を所持する多重国籍者に対して、一定期間内に国籍の選択を行うことを義務付けています。
国籍の選択をしなければならない方は以下の通りです。
- 日本国民である母と父系血統主義を採る国の国籍を有する父との間に生まれた子
(例:生まれたときに,母が日本国籍,父がクウェート国籍の子) - 日本国民である父または母と父母両系血統主義(注2)を採る国の国籍を有する母または父との間に生まれた子
(例:生まれたときに,父(又は母)が日本国籍,母(又は父)が韓国国籍の子) - 日本国民である父または母(あるいは父母)の子として,生地主義を採る国で生まれた子
(例:生まれたときに,父母が日本国籍であり,かつ,アメリカ,カナダ,ブラジル,ペルーの領土内で生まれた子) - 外国人父からの認知,外国人との養子縁組,外国人との婚姻などによって外国の国籍を取得した日本国民
(例:生まれたときに母が日本国籍で,カナダ国籍の父から認知された子) - 国籍取得の届出によって日本の国籍を取得した後も引き続き従前の外国の国籍を保有している人
また、国籍の選択をすべき期間については以下の通りになります。
- 18歳に達する以前に重国籍となった場合→20歳に達するまで
- 18歳に達した後に重国籍となった場合→重国籍となった時から2年以内
なお、国籍法上、期間内に日本の国籍を選択しなかった際は、法務大臣より催告がされ、催告を受けた場合は、1ヶ月以内に国籍の選択をしなければなりません。催告から1ヶ月を過ぎても国籍の選択を行わなかった場合は、原則として日本の国籍を失うこととなるため、注意してください。
国籍の選択には、外国籍を選択した場合と日本国籍を選択した場合で、その後の手続きが異なります。
国籍の選択については下記表をご覧ください。
国籍の選択 | 手順1 | 手順2 | 手順3 |
---|---|---|---|
外国籍を 選択する場合 |
日本国籍の離脱 | 外国籍のみとなり、 重国籍は解消される |
ー |
日本国籍の離脱 | |||
日本国籍を 選択する場合 |
外国籍の離脱 | 日本国籍のみとなり、 重国籍は解消される |
ー |
日本国籍の 選択宣言 |
国籍の選択義務は 履行したことになる |
外国籍を喪失していない場合、 外国籍の離脱の努力義務がある |
国籍選択や手続き等に関するお問い合わせは、居住所最寄りの法務局・地方法務局または在外日本大使館・領事館、及び市区町村役場にて受け付けています。
法務局・地方法務局または在外日本大使館・領事館の管轄地域に関しては下記ページをご確認ください。
ESTAの申請方法
ESTAの申請には、ご自身で申請を行う方法と申請代行サービスに依頼する方法の2つの方法があります。
ESTA公式サイトにてご自身で申請を行う方法
ご自身で申請を行う際は、ESTA公式サイトまたはスマートフォンのESTA公式アプリで申請ができます。
ESTA公式サイトでESTA申請を行う場合は、入力ミスやスペルミスに注意し、間違った情報での申請を行わないように気を付けて申請しましょう。なお、万が一、間違った情報で申請を行ってしまった場合は、認証された場合でも、入国審査の際に虚偽申告となり入国拒否になるため、正しい情報で再申請する必要があります。
ESTA公式サイトでの申請方法について下記ページで解説しているのでご参照ください。
アメリカ渡航に必要なESTA(公式サイト)の申請方法をわかりやすく解説
ESTA申請代行サービスに依頼する方法
ESTA申請には代行サービスがあります。
ESTA公式サイトでの申請は、英語表記が主体のため日本語翻訳が一部おかしくなっていたり、お問い合わせの回答などのメールが英語で送られてきたりするため、英語が苦手な方は申請が難しく思うかもしれません。また、申請時に入力ミスなどしてしまうと、再申請が必要になってしまうため、申請が不安になる方もいらっしゃると思います。
そのような方は、ESTA申請代行サービスの利用をおすすめします。
代行サービスは、問い合わせ時の日本語対応をしているため、申請に関する不明点などをお気軽にお問い合わせできます。また、申請から取得までを全てサポートしているため、入力ミスなど申請時のトラブルに対する迅速な対応が可能です。
ESTAの申請でお困りの方は、代行サービスのご利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ESTA申請代行サービスについて詳しく知りたい方は下記のページをご覧ください。
ESTA申請代行サービスについてや代理申請の注意点・留意点を一挙紹介!
いかがでしたでしょうか?
二重国籍だからといってESTAを申請できなくなることは決してありません。しかし、VWPの利用が制限されてしまう国籍を所持している場合はESTAの申請ができなくなってしまうので覚えておきましょう。
なお、ESTAが利用できない方は以下の通りです。
- 2011年3月1日以降にキューバ、朝鮮民主主義人民共和国、イエメン、イラン、イラク、スーダンまたはシリアに渡航または滞在したことがある方
- ビザ免除プログラム参加国の国籍に加え、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国、イラン、イラク、スーダンまたはシリアのいずれかの国籍も有する二重国籍者
上記に該当する方は、VWPの利用及びESTAの申請ができないため、ビザ(査証)の取得を行いましょう。
二重国籍の方でESTA申請についてお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にしてアメリカ渡航を検討してみてはいかがでしょうか。