前科・前歴・犯罪歴がある人はアメリカに行けない?渡航に及ぼす影響について解説

ESTA(エスタ)の申請では、適格性に関する質問に答える項目があり、項目の中には逮捕歴に関する質問が存在します。前科や犯罪歴、逮捕歴のある方は「はい」と回答することになりますが、1つでも「はい」の回答がある場合はESTAの認証が拒否になります。

本記事では、ご自身の罪が前科や前歴、犯罪歴どれに該当するのか。逮捕歴がある方はESTAを申請ができるのか、またそ場合はどう対応するのかについて解説していきます。質問項目で虚偽の申告を行った際の罰則、アメリカ渡航にどのような影響が出るのかも解説をしていきますので、ぜひ参考にしてください。

犯罪歴のある方がアメリカ渡航する際の問題点

犯罪歴がある方がアメリカ渡航を行う際、米国移民国籍法の「不道徳犯罪の要素を含む犯罪を犯した者や試みた者」に該当するため、入国不適格者として扱われます。そのため、ESTAの申請項目には逮捕歴の有無を問う質問項目があり、アメリカ入国に相応しい人物かどうかの事前判断を行っています。

犯罪歴がある渡航者のアメリカ入国を事前に防ぐことで、アメリカ国内の治安維持に貢献しています。また国際的なテロ対策として、犯罪歴の情報共有が積極的に行われているため、厳しく精査を行い、渡航者に対して厳重な判断をしています。

過去に不法滞在(オーバーステイ)の経験がある渡航者も厳重な判断がなされます。ESTAを利用してアメリカ渡航した場合、利用条件である90日以内の滞在期間を1日でも超えると、不法滞在となりますので、ご注意ください。不法滞在を行うと今後一切ESTAでのアメリカ渡航は不可能となります。また、不法滞在は、刑事処分の対象になり、3年以下の懲役および禁錮刑または300万円以下の罰金が科されます。そのほか、行政処分として退去強制(強制送還、国外追放)となり、入国拒否の対象となります。

不法滞在は刑事処分が下るため、犯罪歴として記録が残ってしまうので注意してください。

前科・前歴・逮捕歴・犯罪歴について

犯罪歴というとすべての罪を一括りにしてしまいがちですが、罪の履歴のことを前科・前歴・犯罪歴・逮捕歴とさまざまに表現されることがあります。この違いを理解することでご自身の罪の履歴を把握することができます。以下にてご参照ください。

前科とは

前科とは、裁判において有罪判決が確定した経歴のことです。例えば、暴行の容疑で逮捕された後、裁判にて懲役1年、執行猶予3年の判決が下った場合、前科がついたことになります。したがって、警察に逮捕されただけでは前科にはなりません。前科があるのかを判断するには、有罪になった事があるかどうかがポイントとなります。また、刑罰が発生した際に前科が付くため、交通違反で罰金が発生した場合は、前科として扱われます。

前歴とは

前歴は、捜査対象になった事実を指しています。例として、犯罪行為の嫌疑をかけられ警察の捜査対象になった場合、逮捕されたが不起訴処分になった場合に前歴として扱われます。
裁判にかけられた際に、不起訴処分になった場合や無罪判決になった場合は、前科にはならないものの前歴として記録が残ります。なお、前歴は捜査機関のデータベースに登録されるため、前歴がつくだけでも捜査機関などから警戒される可能性があります。

逮捕歴とは

前科・前歴に類似する言葉として犯罪歴があります。犯罪歴とは、過去に犯罪を犯した経歴を指しますが、正式な法律用語ではありません。また、犯罪歴は、前科や前歴、逮捕歴を総じて表す言葉になります。そのため、何かしらの犯罪を犯して逮捕された場合や、罰金刑を科せられた場合は犯罪歴としても扱われます。

なお、前科・前歴・逮捕歴はいずれも記録が消えることはないため、注意してください。

あなたの罪はESTA申請に影響を及ぼすのか

申請者の犯罪例の有無を入力する項目

上記のようにESTA申請には逮捕、犯罪歴の有無の質問事項があります。ご自身が過去に犯した罪が逮捕、犯罪歴に該当するのかを理解できていないが故に、誤った情報を入力してしまう事例が多発しています。交通違反、薬物、暴行、執行猶予、略式起訴についてよくお問い合わせをいただくので、事例別で解説していきます。
その他、イレギュラーな事件性の逮捕歴がある場合は、国米大使館までお問い合わせすることをおすすめします。

下記サイトにてお問い合わせができます。
米国ビザ関連カスタマーサービスサイト

交通違反をしたことがある場合

アメリカ政府当局では、「過失致死を伴わない交通違反や飲酒運転は重大な犯罪とみなさない」という規定を定めています。そのため、懲役や禁錮刑の伴わない交通違反をしたことのある方は、逮捕歴や有罪判決に関する質問で「いいえ」と回答ができます。しかし、あおり運転や飲酒運転など重大な交通違反を行い、警察に検挙された場合は「はい」と回答する必要があります。日本では、飲酒運転に対して罰則が重くなっているため、アメリカ当局の規定よりも厳しく扱われていることを覚えておきましょう。

また、交通違反を起こした後、米国滞在中で罰金未払いまたは法定審問に出頭しなかった場合は、逮捕状が出される可能性があります。渡航の際は、事前に管轄の警察署にて手続きを済ませておきましょう。

違法薬物による犯罪歴がある場合

日本は、薬物による犯罪に対して厳しい罰則が設けられています。違法薬物の所持や使用、または販売・配布といった行為を行い逮捕された場合、逮捕歴や有罪判決に関する質問では「はい」と回答しなければなりません。

アメリカでは、申請者の居住国での使用に限り、治療目的で医療用大麻を使用した際に有罪判決がされていない場合は「いいえ」と回答ができますが、日本では使用が許可されておらず、違法となるため注意してください。

日本と米国の両国ともに薬物に対して厳しく扱っているため、薬物による逮捕歴のある方はESTA申請ができません。

暴行罪による有罪判決をされたことがある場合

過去に暴行による逮捕および有罪判決を受けたことがある方は、ESTA申請時の逮捕歴や有罪判決に関する質問で「はい」と回答する必要があります。また、暴行の容疑で逮捕・起訴された際に冤罪とされた場合でも、「はい」と回答する必要があるため、注意してください。逮捕歴がある場合は、基本的にESTAが認証拒否になりますので、不安な方は米国大使館までお問い合わせしましょう。

執行猶予期間中の場合

執行猶予とは、実刑を言い渡した期間の間猶予し、期間が無事満了した際に、実刑を取り消すという制度です。なお、猶予期間中に再犯や別の犯罪を犯した際は、猶予期間が取り消され、刑が執行されます。
無事期間を満了し、実刑を取り消された際は、有罪判決が取り消されたわけではないため、前科として記録に残ります。そのため、ESTA申請時の逮捕歴や有罪判決に関する質問では「はい」と回答する必要があります。

略式起訴・不起訴処分(起訴猶予)を受けたことがある場合

略式起訴とは、簡易的に刑事手続きを行うための制度です。そのため、警察署での身体拘束時間が短いのが特徴です。しかし、手続きを簡略化させただけになるため、起訴されることには変わりがなく、有罪判決を受けることになります。

逮捕された際に何らかの理由で不起訴処分になった際は、有罪判決は受けてないものの、逮捕歴がつくことになります。そのため、略式起訴および不起訴処分を受けたことのある方は、ESTA申請時の逮捕歴または有罪判決に関する質問で「はい」と回答しなければなりません。

犯罪歴があるのに『いいえ』の虚偽申告をした場合

逮捕歴など犯罪歴を隠してESTAの申請を行った場合、虚偽申告として扱われ、ESTAだけでなく今後のビザ取得の際にも不利益を被る事になります。

虚偽申告でESTAが取得できた場合でも、アメリカの入国審査では入国したすべての市民に対して指紋認証が行われます。その時にPCSC協定(日米重犯罪防止対処協定)に基づき、国同士で犯罪歴のある方の指紋情報を提供・共有する制度によって日米間の犯罪者リストの指紋情報と照合をします。その結果、虚偽申告が発覚した場合は厳重な罰則が科され、アメリカ渡航が永久的にできなくなる恐れがあります。

もし、犯罪歴を隠して渡航ができたとしても、不安を抱えながら入国審査を受けることになるため、高確率で虚偽申告が発覚することになります。入国拒否になることで、様々な場面で後悔をすることになります。

そのため、ESTA申請時には、虚偽申告とならないように決して間違った情報を入力することを行わないようにしましょう。

犯罪歴を隠さないことが重要

逮捕歴など犯罪歴を隠してESTAの申請を行った場合、虚偽申告として扱われ、ESTAだけでなく今後のビザ取得の際にも不利益を被る事になります。また、PCSC協定に基づき、国同士で犯罪歴のある方の指紋情報を提供・共有する制度があります。
これに伴い、正常にESTAが取得できた場合でも、入国時に情報が誤っていると判断された際は、指紋を採取し、共有している指紋情報と照合をします。その結果、虚偽申告が発覚した場合は厳重な罰則が科され、アメリカ渡航が永久的にできなくなる恐れがあります。

もし、犯罪歴を隠して渡航ができたとしても、不安を抱えながら入国審査を受けることになるため、高確率で虚偽申告が発覚することになります。入国拒否になることで、様々な場面で後悔をすることになります。

そのため、ESTA申請時には虚偽申告とならないよう、決して間違った情報を入力することを行わないことが大切です。

逮捕歴がある方はビザの申請を行いましょう

米国大使館では、ESTA(ビザ免除プログラム)を利用できない場合として以下のように記載しています。

「有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、犯罪暦(恩赦や大赦などの法的措置がとられた場合も含む)がある方、重い伝染病を患っている方、過去に米国への入国を拒否されたり強制送還された方、そしてビザ免除プログラムで入国し、オーバーステイしたことがある方は、ビザ免除プログラムを利用することはできません。」

有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方は、米国大使館に問い合わせビザの取得を行うようにしましょう。

また、ESTAの認証拒否になるケースとして、逮捕歴以外に以下のような事象があります。

・米国の指定する病気や伝染病を患っている方
・過去にアメリカへの入国を拒否された、または強制送還をされた方
・過去にアメリカで不法滞在(オーバーステイ)をしたことがある方
・2011年3月1日以降に北朝鮮、イラク、シリア、リビア、イラン、スーダン、ソマリア、キューバまたはイエメンへの渡航および滞在歴がある方
・現在、重大な裁判で係争中の方

上記に該当する方も米国大使館にてビザの取得を行ってください。

ビザ申請の際には、判決謄本、裁判記録、または犯罪歴に関する関連書類を全て提出する必要があります。なお、全ての書類に対して英訳文が必要になるため注意してください。

ビザの審査はESTAとは違い、数週間から数か月と長い期間を有するため、渡米日時に余裕をもって申請を行ってください。

逮捕歴がある方がビザの申請を行う場合はこちらで必要書類の確認を行いましょう。

在日米国大使館についてはこちらの記事をご覧ください。

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