アメリカ渡航にあたって、2023年7月から新しくグローバルエントリープログラム(Global Entry Program)という制度に日本国籍の方も登録できるようになりました。
GEプログラムとも呼ばれていますが、一体どのような制度なのでしょうか。
この記事では、グローバルエントリープログラムのシステムや参加条件、申請方法、注意点も一緒に解説していきます。
グローバル・エントリープログラムとは?
グローバルエントリープログラムとはアメリカの入国審査や国境の管理を行っているCBP(税関・国境警備局)が開発した事前入国審査プログラムです。
基本的にアメリカに空路で入国した渡航者を対象にしており、空港での入国審査をよりスムーズにするために開発されたシステムです。
しかし、この制度は米国市民・米国永住者・その他一部の国の国籍所持者のみになります。
また、申請料金は1回の申請当たり100ドルで、有効期限は5年間です。
グローバルエントリープログラムのメリット
1 クルー並みに早い入国審査
グローバルエントリープログラムの参加者は入国審査の際に非常にスムーズに手続きを済ませることができます。
アメリカに渡航経験のある方はご存じだと思いますが、アメリカの入国審査は、「アメリカ国籍者・アメリカ永住者の列」と「ESTAや非移民ビザなどを取得してアメリカに来た渡航者の列」に分かれています。
日本人の方の多くはESTAや非移民ビザで渡米するため、非常に長い列に並ばなくてはならず、入国審査にも時間がかかります。
しかし、プログラム参加者は自動入国審査端末である「APC Kiosk」を利用し、パスポートやビザ、指紋を機器にスキャンすることで入国手続きが完了します。入国審査後、手荷物受取所や優先出口に誘導されます。
つまり、入国審査場の長い列に並ぶこと無くアメリカに入国出来るのです。
特に頻繁にアメリカに渡航する方は、参加することが推奨されるプログラムです。
2 TSA Pre Checkも利用できる
「TSA Pre Check」とは、アメリカの運輸保安局(TSA)が運営するセキュリティ検査プログラムです。アメリカ発の飛行機に持ち込む荷物をTSA Pre Check専用レーンにて優先的に検査してもらえます。また、セキュリティ検査では靴、ベルト、手荷物に入っているノートパソコンや液体物を取り出したり、ジャケットを着脱する必要がなくなります。
つまり、荷物検査の手間が省け、スムーズに航空機に搭乗できます。
グローバルエントリープログラムのデメリット
デメリットとして、申請の審査期間が4か月から5ヶ月と長めであることや、申請料金が100ドル(15,000円ほど)掛かること等が挙げられます。
そのため、頻繁にアメリカに渡航する方は、このプログラムに参加することで大きな時間短縮を計ることができます。
しかし、年に一回程度しかアメリカ旅行に行かない方は取得するメリットが小さいでしょう。
グローバルエントリープログラムの注意点
グローバルエントリープログラムは、そもそもESTAのように取得することで渡米の際にビザが不要になる制度ではありません。そのため、認証を受けられたとしても、ESTAやビザの取得が必須です。
グローバルエントリーはビザ免除制度ではない点には注意しましょう。
ESTAの申請はこちらからアクセスできます。
ESTAとビザはどちらを取得すべき?
ESTAは観光や商用目的でアメリカに90日以内の期間滞在する場合にのみ利用する事が出来るビザ免除制度です。そのため、ESTAの利用条件に合致する場合はESTA、合致しない場合はビザを取得しましょう。
ビザとESTAの違いについては、「アメリカビザとESTA(エスタ)の違いは?申請方法と種類について徹底解説」を参照してください。分かりやすい解説が記載されています。
グローバル・エントリープログラムに申請できる条件
グローバルエントリープログラムに参加するためには満たさなければならない条件がいくつかあります。申請対象国、対象者、不適格な理由を確認しましょう。
2024年2月現在グローバルエントリープログラムに登録できる対象国
グローバルエントリープログラムの申請対象国 |
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日本 |
アルゼンチン |
バーレーン |
ブラジル |
カナダ |
コロンビア |
ドミニカ共和国 |
クロアチア |
ドイツ |
インド |
韓国 |
メキシコ |
ニュージーランド |
オランダ |
パナマ |
シンガポール |
スイス |
台湾 |
イギリス |
グローバルエントリープログラムの申請対象者
上記対象国の国籍を持っている方 |
Nexusに登録済みの方 |
SENTRIに登録済みの方 |
米国に居住する14歳以上の米国市民・米国籍保有者・米国永住者 |
グローバルエントリープログラム不適格の理由
グローバルエントリープログラムの申請は必ずしも許可されるわけではありません。
以下はグローバルエントリープログラムへの参加資格がないとされる方の理由の一例です。
- 申請時に提出した個人情報に虚偽または不完全な情報が含まれている
- 何らかの刑事事件で有罪判決を受けたことがある、または係属中の刑事告訴または未払いの令状(飲酒運転を含む)があること
- あらゆる国の税関、入国管理、農業に関する規制や法律に違反していることが判明した場合
- 連邦・州・地方の法執行機関に露湯進行中の操作の対象になっている
- 入国禁止の免除または仮釈放の書類を承認された申請者を含む、移民規制に基づいて米国への入国を許可されていない。
- 申請者のアメリカ入国後のリスクが低いことをCBPが納得できない場合。
18歳未満の子供がグローバルエントリープログラムに参加する際の条件
基本的にグローバルエントリープログラムの参加に年齢制限はありません。
しかし、18歳未満の子供がプログラムに参加する場合は親または法的に定められた後見人の同意が必要です。
ただし、親または後見人はグローバルエントリープログラムに参加している必要はありません。
グローバル・エントリーの申請方法
日本国籍の方がグローバルエントリープログラムに参加する際には「トラステッドトラベラープログラム公式サイト」にアクセスし、申請を始めることができます。
①トラステッド・トラベラー・プログラム(Trusted Traveler Programs)アカウントを作成する
まずは上記のリンク先サイトからTTSアカウントを作成します。
アカウントの作成方法は以下の通りです。
グローバルエントリープログラムを選択
「Create an account(アカウントを作成する)」をクリックしメールアドレスを入力する
メールアドレスの確認
「Confirm your email」をクリックしたら、申請サイトに戻りましょう。
12桁のパスワードの作成
12桁で大文字・小文字のアルファベットと数字を含むパスワードを作成しましょう。
「Authentication method setup(認証方式の選択)」
グローバルエントリープログラムではログイン時に本人認証を行います。
少なくとも2種類以上を下記から選択する必要があります。
①「Authentication application(アプリから本人認証)」
※認証アプリはこちらから確認することが出来ます。
・androidの方
「Google Authenticator」「Authy」「LastPass」「1Password」
・iPhoneの方
「 Google Authenticator」「Authy」「LastPass」「1Password」
・Windowsの方
・Macの方
・Chromeの拡張機能
②「Text or voice message(テキストまたは電話を利用した音声での本人認証)」
③「Backup codes(バックアップコード)」
※バックアップコードは、デバイスまたは印刷して保存することができる10個のコードのリストです。コードは使われるたびに消費され、最後のコードまで消費されると再度生成されます。紛失しやすいため、ご注意ください。
④セキュリティキー
※セキュリティキーはデバイスに物理的に接続するUSB野洋右な形をしたものです。
⑤公務員ID
※政府・軍関係者のみ使用することができます。
認証方式の選択後、選んだ方式のセットアップが開始されます。
この記事では、「認証アプリ」・「テキストまたは電話での音声メッセージ」・「バックアップコード」の解説を行います。
「Add an authentication app(認証アプリの追加)」
①ニックネームを付ける
まずは、認証アプリに表示されるパスワードのニックネームを作成します。
②認証アプリを開く
インストールした認証アプリを開き、カメラへのアクセスを許可します。
③アプリでQRコードをスキャンする
アプリからQRコードをスキャンします。
また、カメラ機能がないデバイスを利用している方は手動でQRコード直下のコードを入力します。
④認証アプリに表示されている一時コードを入力
「Add a phone number(電話番号の入力)」
テキスト・電話の音声メッセージで本人認証を行う方は電話番号の入力を行います。
電話番号を入力する時は国番号(日本は+81)を選択し、最初の「0」を入力しないように注意しましょう。
「Save these backup codes(これらのコードを保存してください)」
セキュリティの都合上、バックアップコードにはぼかし加工を施していますが、下記の画像のように10通りのコードが生成されます。必ず印刷やスクリーンショット、メモ等で保存を行いましょう。また、複数の方法で保存することをオススメします。
保存が完了したら「I’ve put my backup codes in a safe place.(私はバックアップコードを安全な場所に保存しました。)」にチェックを入れることで申請は完了です。
②TTPアカウントにログインし、申請料100ドルの支払いを完了する
こちらのサイトにログインし、個人情報を入力します。
なお、赤い*マークのあるところが必須回答項目です。
「Previous Applications?」の部分は基本的に「No」を選択擦れば問題ありません。
ただし、過去に下記の制度に申請を行い、アカウントの作成を行った場合は該当項目に「Yes」と回答する必要があります。
- グローバルエントリーシステム
- Nexus
- SENTRI
- United States/Mexico Fast
- United States/Canada Fast
③戸籍謄本の提出
オンライン申請と申請料金の支払いを完了したら、戸籍謄本を「出入国管理庁東京入国管理局審査管理部門」に郵送か持ち込みで提出します。注意点として、管理局はアメリカではなく、日本の機関です。米国政府が申請者の情報を確認し、身元調査を行います。身元調査にかかる時間は4か月から5カ月ほどかかりますので、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
出入国管理庁東京入国管理局審査管理部門の連絡先情報 | |
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住所 | 〒100-8973 東京都千代田区霞が関1-1-1 中央合同庁舎6号館 |
電話番号 | ℡03-3580-4111 |
④Global Entry Enrollment Center で面接を予約する
申請料の支払い後、CBP(米国税関・国境取締局)による審査が始まります。申請が承認された場合は、TTPアカウントから面接を行うスケジュールを決めるように指示されます。
⑤申請手続きの完了
面接には有効なパスポートと、運転免許証などの身分証を持参する必要があります。
グローバルエントリー利用可能な空港 -キオスクが設置されている空港
グローバルエントリープログラムはアメリカの全ての空港で受け入れられているわけではありません。
そのため、下記のリストを確認し、プログラムに参加している空港を利用するようにしましょう。
アブダビ国際空港 (AUH) | ミネアポリス/セントルイスポール国際空港 (MSP) |
アンカレッジ – テッド スティーブンス国際空港 (ANC) | モントリオール ピエール エリオット トルドー国際空港 (YUL)* |
アルバ – ベアトリクス女王国際空港 (AUA)* | ナッシュビル国際空港 (BNA) |
オースティン – オースティン バーグストロム国際空港 (AUS) | ナッソー – サー リンデン ピンドリング国際空港、バハマ (NAS)* |
ボルチモア/ワシントン国際サーグッド マーシャル空港 (BWI) | ニューオーリンズ国際空港 (MSY) |
バミューダ国際空港 (BDA)* | ニューヨーク – スチュワート国際空港 (SWF)* |
ボストン ローガン国際空港 (BOS) | ニューアーク リバティー国際空港 (EWR) |
バーリントン国際空港 (BTV)* | オークランド国際空港 (OAK)* |
カルガリー国際空港 (YYC)* | オンタリオ国際空港 (ONT)* |
チャールストン国際空港 (CHS)* | オーランド国際空港 (MCO) |
シャーロット ダグラス国際空港 (CLT) | オーランド メルボルン国際空港 (MLB)* |
シカゴ ミッドウェイ国際空港 (MDW)* | オーランド サンフォード国際空港 (SFB) |
シカゴ オヘア国際空港 (ORD) | オタワ マクドナルド カルティエ国際空港 (YOW)* |
シンシナティ/ノーザンケンタッキー国際空港 (CVG) | フィラデルフィア国際空港 (PHL) |
クリーブランド・ホプキンス国際空港 (CLE) | フェニックス スカイハーバー国際空港 (PHX) |
ダラス/フォートワース国際空港 (DFW) | ピッツバーグ国際空港 (PIT) |
デンバー国際空港 (DEN) | ポートランド国際空港 (PDX) |
デトロイト メトロポリタン空港 (DTW) | プロビデンス – TF グリーン国際空港 (PVD) |
ダブリン空港 (DUB)* | ローリー ダーラム国際空港 (RDU)* |
エドモントン国際空港 (YEG) | サクラメント国際空港 (SMF)* |
フェアバンクス国際空港 (FAI) | サイパン国際空港 (SPN)* |
フォートローダーデール/ハリウッド国際空港 (FLL) | ソルトレイクシティ国際空港 (SLC) |
ジョージ ブッシュ インターコンチネンタル空港、ヒューストン (IAH) | サンアントニオ国際空港 (SAT) |
グランド バハマ国際空港 (FPO)* | サンディエゴ国際空港 (SAN) |
グアム国際空港 (GUM) | サンフランシスコ国際空港 (SFO) |
ハリファックス スタンフィールド国際空港 (YHZ)* | サンノゼ国際空港 (SJC)* |
ハートフォード – ブラッドリー国際空港 (BDL) | サンファン・ルイス・ムニョス・マリン国際空港 (SJU) |
ハーツフィールド ジャクソン アトランタ国際空港 (ATL) | シアトル・タコマ国際空港・シータック (SEA) |
ホノルル国際空港 (HNL) | シャノン空港 (SNN)* |
ヒューストン – ホビー国際空港 (HOU) | サウスベンド国際空港 (SBN)* |
インディアナポリス国際空港 (IND)* | サウスウェスト フロリダ国際空港 (RSW)* |
ジョン F. ケネディ国際空港、ニューヨーク (JFK) | セントピート・クリアウォーター国際空港 (PIE)* |
ジョン ウェイン空港 (SNA)* | タンパ国際空港 (TPA) |
カンザスシティ国際空港 (MCI) | トレド エクスプレス空港 (TOL)* |
ランバート – セントルイス国際空港 (STL) | トロント ピアソン国際空港 (YYZ)* |
ロサンゼルス国際空港 (LAX) | バンクーバー国際空港 (YVR)* |
マッカラン国際空港、ラスベガス (LAS) | ワシントン ダレス国際空港 (IAD) |
マイアミ国際空港 (MIA) | ウィニペグ ジェームス アームストロング リチャードソン国際空港 (YWG)* |
ミルウォーキー – ジェネラル ミッチェル国際空港 (MKE) |
まとめ
以上、グローバルエントリープログラムについて解説しました。このプログラムに参加することで、スムーズにアメリカに入国することが可能になります。しかし、入国の際には、ESTAやビザを併せて取得しておく必要があります。
グローバルエントリープログラム単体ではアメリカに入国することが出来ませんのでご注意ください。