海外出張の時のパスポート発行・取得費用は経費になる!勘定科目・精算時の注意点についても解説

勤務している会社から海外出張の依頼があった!この場合は経費として申請できるのか?気になっている方も多いと思います。また、会社で経理担当をしている方はどこまでを経費として計上していいのか判断がつかない場合もありますよね。

この記事ではパスポートは経費として計上できるのか、またパスポートを経費で計上するときの注意点、勘定科目の入力の仕方も解説していきます。

また会社で旅費規定がない場合に旅費規定を決めておくと良いことも解説していきます。ぜひ参考にしてください。

海外出張または海外勤務でのパスポート発行費用は経費になる

現代の日本の会社は国内だけの需要にとどまらず海外に進出する企業も増えています。米国や欧州以外にも中国や東南アジア含め、Made in Japanが世界に求められている証拠ですね。

会社の社員や役員が海外出張するときに必要なのが、パスポートです。パスポートに必要な顔写真・収入印紙・手数料など申請にかかるお金が発生します。会社での海外出張や海外転勤などで必要になるパスポートが経費で落ちるのかどうかは、海外出張に行かれる方は気になるかと思います。

まず大前提として会社での任務として海外出張や海外転勤をする場合に必要なパスポートは経費になります。ただし経費として認定してもらうにはいくつかの条件があるので、これから解説していきます。

パスポート発行にかかる各都道府県の費用

パスポートの発行にかかる費用は各都道府県どこでも一律で同額となっています。パスポートの写真などの料金はどこで撮るか、どこで用意するかで料金が多少前後する可能性があります。また2024年4月1日より成人年齢の引き下げに伴い18歳以上であれば有効期限10年のパスポート(旅券)の発行が可能となりました。

有効期限5年のパスポートは12歳未満の申請の場合、1,000円安くなりますのでお間違いのないように申請をしましょう。

パスポート(旅券)申請種別
都道府県手数料
または収入証紙
国の手数料
または収入印紙
合計
一般旅券発給申請10年間有効通常2,000円14,000円16,000円 
過去5年以内に
申請した前回旅券が
未交付失効した場合 
4,000円18,000円 22,000円
5年間有効 
※12歳以上
通常2,000円9,000円11,000円
過去5年以内に
申請した前回旅券が
未交付失効した場合
4,000円 13,000円17,000円
5年間有効
※12歳未満
通常2,000円 4,000円6,000円
過去5年以内に
申請した前回旅券が
未交付失効した場合
4,000円 8,000円12,000円
残存有効期間同一旅券通常2,000円 4,000円6,000円 
過去5年以内に
申請した前回旅券が
未交付失効した場合
4,000円8,000円12,000円

※残存有効期間同一旅券とは苗字・名・本籍地(都道府県)などに変更があった場合や、パスポートの入国審査時のスタンプなどで残り3ページ以下になった場合、現在お持ちのパスポートの残存有効期限を引き継ぐ新たなパスポートです。

パスポート(旅券)申請にプラスでかかる費用

パスポートの必要書類でも戸籍謄本(全部事項証明書)または住民票・証明写真は必ず必要になります。戸籍謄本(全部事項証明書)は全国ほぼ一律で450円ほど、住民票は窓口だと300円~400円、コンビニ交付だと200円ほどとコンビニ交付であれば100円ほど安くなっている場合が多いです。しかし小さい自治体だとコンビニ交付は行っていない地域もあるので、おおよそ窓口の価格と認識しておきましょう。

また証明写真は無人写真機であれば700円程度、無人写真機はパスポートサイズ用もあり、操作も簡単です。写真館や写真スタジオ、カメラ屋さんなどでも撮影をしてくれますが無人写真機よりもお値段は高めです。1980円~5000円ほどになります。

パスポート申請時に必要な書類

パスポート申請時に必要な書類は新規申請・切替申請・紛失した場合の3パターンに分かれます。必要書類も変わってきますので、確認をし、申請するようにしましょう。

また、パスポート申請必要書類は海外用のパスポートの必要書類を記載していきます。

新規申請

新規発行を行うべき方は

・初めてのパスポート申請
・有効期限切れのパスポートをお持ちの方
・パスポートの盗難・紛失・焼失し紛失届を提出したのちに申請する方

パスポート新規申請手続き必要書類
・一般旅券発給申請書(10年用又は5年用)1通 
ダウンロード申請書にて使用可能
・戸籍謄本(全部事項証明書)(原本を必要とします)1通
・写真(縦45mm×横35mm)1葉
・その他参考となる書類(必要に応じ本人確認または滞在資格を確認できるもの)
・有効期限切れの旅券 (失効処理用)

※一般旅券発給申請書の刑罰等関係欄に『はい』と記載された方は一定期間(1~2か月程度)審査が長引きます。また刑罰等関係欄該当者が虚偽申告を行った場合には旅券法第23条第1項により処罰(5年以下の懲役及び/又は300万円以下の罰金)の対象になります。

切替申請

切替申請を行うべき方
・残存有効期限が1年未満の方
・査証欄(入国スタンプ欄)の余白が3ページ以下になった方

切替申請手続き必要書類
・一般旅券発給申請書(10年用又は5年用)1通 
ダウンロード申請書にて使用可能・写真(縦45mm×横35mm)1葉
・有効旅券
・その他参考となる書類(必要に応じ本人確認または滞在資格を確認できるもの)
・有効期限切れの旅券 (失効処理用)
※戸籍上何かしらの変更があった場合
・戸籍謄本(全部事項証明書)(原本を必要とします)1通

※特定の海外では一定期間以上のパスポート有効残存期間を保有していないと渡航できない場合もございます。

紛失届

紛失届を行うべき方
・パスポートを紛失、盗難、焼失された方
紛焼失届出の後、パスポートの新規申請を行うようにしましょう。

紛失届申請手続き必要書類
・一般旅券発給申請書(10年用又は5年用)1通 
ダウンロード申請書にて使用可能
・警察署の発行した紛失届出を立証する書類
又は消防署等の発行した罹災証明書等
・写真(縦45mm×横35mm)1葉
・その他参考となる書類
(必要に応じ本人確認または滞在資格を確認できるもの)

この手続きののちに以下のパスポート新規申請書類を準備しましょう。

また渡航先でパスポートの紛失した場合は渡航書の申請を行います。

パスポート新規申請手続き必要書類
・一般旅券発給申請書(10年用又は5年用)1通 
ダウンロード申請書にて使用可能
・戸籍謄本(全部事項証明書)(原本を必要とします)1通
・写真(縦45mm×横35mm)1葉・その他参考となる書類
※渡航書申請を行う場合・渡航書発給申請書  1通
・戸籍謄本又は抄本など日本国籍があることを確認できる書類
・写真(縦45ミリメートル×横35ミリメートル) 1葉
・その他帰国日程等が確認できる書類

※紛失届を提出した時点で、対象となるパスポートは使用できなくなります。
※紛失届とパスポート新規申請は同日に行うことが可能です。

苗字・名・本籍地(都道府県)の変更

パスポート新規申請手続き必要書類
・一般旅券発給申請書(10年用又は5年用)1通 
ダウンロード申請書にて使用可能
・旅券の記載に変更を生じたことが確認できる
戸籍謄本(全部事項証明書)(原本を必要とします) 1通
・写真(縦45mm×横35mm)1葉
・有効旅券
・その他参考となる書類
(必要に応じ本人確認または滞在資格を確認できるもの)

※戸籍謄本(全部事項証明書)は原本であること。
※戸籍謄本原本(全部事項証明書)は申請日前6か月以内のもの、写真も6か月以内のものをご準備ください。
※一般旅券発給申請書の刑罰等関係欄に『はい』と記載された方は一定期間(1~2か月程度)審査が長引きます。また刑罰等関係欄該当者が虚偽申告を行った場合には旅券法第23条第1項により処罰(5年以下の懲役及び/又は300万円以下の罰金)の対象になります。

パスポート(旅券)取得費用はなぜ非課税?

パスポート(旅券)の取得費用を経費で計上する場合は、パスポートの申請費用に収入印紙代が含まれているので非課税扱いになります。パスポートが申請・発行された時点で税金も一緒に支払われている状態です。

パスポート申請費用の勘定科目はどれに該当する?

パスポートの申請費用の経費仕訳する際の勘定科目は「租税公課」と「旅費交通費」になります。それぞれの勘定科目の特徴と、写真代や戸籍謄本(全部事項証明書)の勘定科目についても解説していきます。

「租税公課」もしくは「旅費交通費」、写真代は「雑費」、戸籍謄本は「支払手数料」

勘定科目「租税公課」とは、国や都道府県の市区町村へ収める税金(租税)と公共団体に支払う(公課)があります。租税公課を勘定科目にできるのもは例えば、自動車税や印紙税、固定資産税、印鑑証明書や住民票の発行手数料、交通違反の反則金などが該当します。

パスポートの申請代金の内訳には国に支払う税金として収入印紙が貼られているため、「租税公課」の科目で処理するのが良いでしょう。

戸籍謄本や住民票も基本的には「租税公課」の科目に該当します。「支払手数料」として記帳する場合は、「非課税」として区分しましょう。

またパスポートの申請代金を、海外出張先または海外転勤で日本と海外の往復に必要な費用として「旅費交通費」に含めることも可能です。証明写真代は「雑費」もしくは「消耗品」の科目で計上しましょう。

「福利厚生費」にできる条件とは

パスポート申請発行にかかる費用を「福利厚生費」として勘定することもできますが、これはある条件を満たした場合にのみ計上ができます。

「福利厚生費」とは会社が従業員の為に支払う費用のことですが、海外出張や海外転勤で使うパスポートといえど、一度取得すればプライベートでの利用も可能になるのです。

パスポート発行を「福利厚生費」として勘定するには「お給料とは別」「会社で雇用しているすべての従業員が対象」「社会の常識的に妥当な金額である」この3点の条件を満たすことで「福利厚生費」として計上が可能となります。

勘定科目用途内容
租税公課国や都道府県の市区町村へ収める税金と公共団体に支払う
旅費交通費出張時にかかった交通費や宿泊費など
福利厚生費会社が雇用している従業員に支払う給与以外の費用

法人役員はパスポートの発行手数料・更新費用や証明写真代を含めて経費にできる

法人役員もビジネスで海外に行く時はパスポートが必要になります。たとえ私用で活用する機会の割合が多かったとしても問題なく経費にすることが可能です。

パスポートの発行手数料や更新費はもちろんのこと

・証明写真代
・必要書類(戸籍謄本など)

これらの費用はすべて経費にして問題ありません。
5年・10年とどちらを申請しても経費として計上することが可能です。

仕事で海外に行ったことを証明する

仕事で海外に行った場合には仕事の内容はなんでも構いません。例えば飲食店経営者であれば現地の食材や飲食店でご飯を注文した履歴(レシート)や飲食店の写真・注文した料理のの写真・メニュー表の写真などを残して証明できるようにしましょう。

例外なのが、旅行代理店が企画しているツアーなどに参加して海外に行った場合は、ほぼ経費として計上することができません。仕事としてツアーに参加したという理由は通用しません。またこの場合にはパスポートも経費として計上することが難しくなります。

仕事半分、プライベート半分のような状況でも経費で計上できるので、仕事をしたという正当な証明を残しておくことをおすすめします。

パスポート発行費用が経費にならないケース

海外出張や海外転勤など正当な理由であればパスポートの申請・発行費用は経費として計上ができますが、私用目的でのパスポート取得費用や、パスポート取得が仕事で必要だったことを証明することができない場合などは経費として計上できないパターンがあります。

プライベートな旅行で取得した

海外出張または海外転勤がないにもかかわらず、パスポートの取得費用を経費として計上することは当然ですができません。また海外出張の際に残存有効期限がある既存のパスポートを使用する際も、そのパスポートを経費として計上することはできません。

実際に海外出張をする際に私用のパスポートをすでに取得済みな方は経費として計上ができないので、経費で計上できる方との不平等さが出てしまう場合には、会社で一律に『海外出張・海外転勤準備金』のような形で定めておくこともおすすめです。

仕事に必要であったことを証明できない

パスポートが本当に仕事の業務上必要だったのか?を証明する必要があります。海外出張・または海外転勤の際に仕事で行ったことを証明できる取引先の名刺や会議で使った資料または宿泊先の明細などは捨てずに保管しておきましょう。

正当な証拠さえあれば経費として計上することが可能です。

社員旅行でパスポートが必要

社員旅行でのパスポートは経費として計上することはできません。あくまで会社の行事ということになるので、対取引先や対関連会社などのビジネスではないことから、社員旅行のパスポート申請料金はご自身での支払いになります。

パスポートが必要ではなくなった

今のご時世、ズームなどでオンライン会議も可能になったことから、海外出張を予定していたが出張がなくなったということもあります。オンライン会議やオンラインでの商談になった場合には、パスポート発行費用を経費として計上することはできません。

ただし、急な海外出張のキャンセルが発生した場合にはパスポートが経費として計上できる場合があります

・世界的な疫病で渡航が禁じられている場合
・海外の取引先からの依頼が急遽キャンセルになった場合

上記のような場合にはパスポートの発行費用が経費として認められる場合があります。

上記の場合にも必ず海外出張を行う予定だったことを明確に証拠に残しておく必要があります。その際は先方とのやりとりのメール、依頼内容、疫病などの場合は飛行機がキャンセルになった事実などを証拠として提出しましょう。

パスポート申請費用を経費で計上するための注意点

パスポート申請費用を経費で計上するために必要な注意しておきたいポイントを解説していきます。海外出張を目的とした証明や旅費の規定なども紹介していきます。また会社負担にした場合の経理処理・仕訳や勘定科目についても解説します。

海外渡航した証拠を残しておく

海外渡航した証拠を残しておくというのは、会社の業種にもよりますが、飲食店であれば海外進出の為の現地調査なども海外出張で起こりえると思います。その場合には周辺の飲食店の写真なども証拠になります。不動産関連であれば不動産売買にまつわる資料ややりとりの記録や、メモなども証拠になります。

また、宿泊費の領収書や明細なども必ず残しておきましょう。

会社役員以外の社員のパスポートは半額負担が相場

パスポートの有効期限は5年~10年と選べますが、その間に社員が退職したり、離職したりする可能性があり、退職した社員以外の違う方にパスポートを取得してもらうことも想定できます。この場合は会社側が再度負担をすることになりますので、10年のパスポートを取得するのであれば半額と規定を定めておく必要があります。

また、パスポートをすでに取得済みな社員にはどう待遇するのかも考慮し、従業員間でも不平等が起こらないよう対策していくことも必要です。

社内の旅費規程を定めておく、負担は5年分にする

社内での旅費規定を定めておくことも経費を管理する上で必要です。上限などを設定しないと羽目を外してしまう事態も起こりえる可能性があるからです。

交通費・宿泊費など海外出張の際に必要になる経費を清算する時の基準を定めましょう。

企業によって金額の違いはありますが、出張費の中に『交通費・宿泊費・通信費・食費』をおおよそ算出した金額で定めているところもあります。

この出張費の中にパスポート発行費用もプラスしておいてもよさそうですね。この機会にぜひ旅費規程で金額を定めておきましょう。

会社負担にしたときの経理処理・仕訳や勘定科目

経営者がパスポート発行費用を経費で計上した際には、会計処理もセットでしなければなりません。その場合には経理処理や仕訳の内容はどのようになるのか確認をしていきます。

旅費交通費の勘定科目で仕訳をするようにしましょう。

例えば、パスポート取得費用の16,000円分を負担した場合は以下のようになります。

勘定科目借方勘定科目貸方
旅費交通費16,000現金16,000

仕訳作業は細かくもできますが、会社経営者の場合だと旅費交通費として一括処理をして業務の効率化を図ることをおすすめします。

個人事業主のパスポート発行は経費になるか

個人事業主でも経費として計上することが可能です。自営業の人が仕事のために海外出張することは小さい会社だといえどもあり得ることですので、安心して経費として計上を行いましょう。またYouTubeや動画撮影などで海外出張を必要としている場合も遊び半分、仕事半分で仕事として行った証拠をしっかりと提出することで、経費として認められますので、個人事業主、法人と関係なく、仕事でのやりとりの証明、宿泊費の領収書や明細書、打合せした会社の資料などはすべて保存しておきましょう。

まとめ

以上がパスポートは経費として計上できるのか?を解説していきました。海外出張などで必要になるパスポートは結論経費にすることは可能です。ただし今のご時世、終身雇用も終わり一つの会社にずっといる社員も少ないのも事実です。

そのために会社の経理担当者は旅費規程を作成し、うまく経費のコントロールをするべきです。社員も会社経営者も働くすべての人が納得してくれるように会社の規定を作成しましょう。

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