アメリカ入国時に必要となる書類は、ビザおよびESTAとパスポートだけではありません。
アメリカ渡航の際にESTAを取得して入国する方が多いと思います。しかし、ESTAを取得している方でもアメリカ入国時には、パスポートの提出だけでは入国審査が通りません。
米国税関・国境取締局(CBP)は、アメリカへ入国する渡航者全員に対し、税関申告書の提出を求めています。そのため、米国入国時には、パスポートに加え、税関申告書の提出が必要になります。
本記事では、税関申告書とはどういう書類なのか、記入項目や記入方法を解説していきます。また、アメリカ入国時の手続きについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
アメリカの税関申告書とは
税関申告書とは、米国税関・国境警備局(CBP)により、アメリカへ入国する渡航者に対し提出を求めている書類です。正式名称は、「CBP From 6059B」といいます。
渡航者の情報や、禁止物を持ち込んでいないかの申告を行うための書類であるため、米国居住者を含め入国する全員の方は提出が必要になります。なお、同行者が家族の場合は1家族につき1枚の提出で入国が可能です。
税関申告書は、アメリカへのフライト中に機内で配布されますので必ず記入しましょう。
税関申告書の見本は以下のようなものです。
税関申告書の記入項目と書き方
税関申告書にはどのような事を記入するのか、わからない方がいらっしゃると思います。
関税申告書の記入項目自体は日本語で記載されているため記入内容の把握が比較的容易です。しかし、英語で記入をしなければならないため、英語が苦手な方は不安になるかもしれません。
税関申告書の記入項目と、それぞれの書き方について簡単に表にまとめました。
また、次の章ではそれぞれの記入項目について細かく解説していきます。
記入項目 | 記入内容・方法 | |
---|---|---|
表面 | ||
1.姓・名・ミドルネーム | それぞれの場所に英語で記入をします。 | |
2.誕生年月日 | 月・日・西暦年の順で記入します。 数字が一桁の場合、 0を加えて記入しましょう。 |
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3.渡航に同行している家族の人数 | 入国を行う家族の人数です。 いない場合は0と記入します。 |
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4.米国における滞在・居住先の住所 (番地と通り) (ホテルの名称・訪問先) |
ホテルに宿泊する場合 (a)にホテル名 (b),(c)にはホテルの所在地 を記入しましょう。 英語で記入 |
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5.旅券発行国 | パスポートの発行国を記入してください。 英語で記入 |
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6.旅券番号 | パスポート番号を記入してください。 | |
7.居住国 | 現在住んでいる国を記入してください。 英語で記入 |
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8.今回渡米に先立って訪れた国・国々 | アメリカ渡航時、 経由した国がある場合は記入しましょう 英語で記入 |
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9.航空会社・便名もしくは船舶名 | 搭乗した便を記入しましょう。 | |
10.今回の渡米の主要目的はビジネスです | 質問形式の項目になります。 該当する方は「はい」、 該当しない場合は「いいえ」 にチェックをしましょう。 |
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11.私(私達)は、以下の物品 を所持しています |
(a) 果物類、野菜類、植物類、 種物、食物、昆虫類 |
|
(b) 肉類、動物、動物/野生生物製品 | ||
(c) 病因体、細胞培養、巻貝類 | ||
(d) 土壌、あるいは、私(私達)は、 農場・牧場・牧草地にいました |
||
12.私(私達)は、家畜の近くにいました (家畜との接触、または処理・扱いなど) |
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13.私(私達)は、現在通貨、または、 金融商品にして、10,000ドル以上の米ドル、または、 それに相当する外国通貨を所持しています |
||
14.私(私達)は、市販用商品を所持しています (販売対象になる商品、または、 発注を促す目的で使用する試供品、 または、個人の身の回りの所持品の範疇 に当てはまらない物品) |
||
15.米国居住者—市販用商品を含め、海外で購入、 あるいは取得した物品 (他人への贈与品も含める, ただし米国に郵送したものは含まない) の総額 |
所持していない場合は0と記入しましょう。 | |
渡航訪問者—米国に残していく物品の総額―(市販用商品込み) | ||
署名 | パスポートと同じ方法で署名しましょう。 | |
裏面 | ||
所有品目の明細 | 表面の13または14の問いに 「はい」と回答した方は 品目と金額を記入しましょう。 金額はドルに換算して記入しましょう。 |
それぞれの記入項目
では、それぞれの記入項目について細かく解説していきます。
姓・名・ミドルネーム
パスポートの表記と同じになるように氏名を記載します。この際、すべて大文字で記入する方法でも、1文字目だけ大文字で記入する方法でも、どちらでも構いません。
なお、ミドルネームとは苗字と名前の間にある名前のことです。ミドルネームがある方は、忘れずに記載しましょう。日本生まれの方は、基本的にミドルネームがないと思いますので、空欄のままで問題ありません。
誕生年月日
英語の表記方法に従って、月→日→西暦年の順番で記載します。日本の表記法とは順番が違うので、書き間違えないようにしてください。なお、日本語版の税関申告書であっても、英語の表記方法で記載するようになっています。
また、西暦年には自分が生まれた西暦の下2桁を記入します。数字が一桁の場合は、0を加えて記入します。例えば、2009年生まれの方は「09」と記入します。
渡航に同行している家族の人数
「同行している」家族の人数ですので、税関申告書を書いている人を除いた人数です。
同行家族がいない場合は、0でも良いですし、空欄でも構いません。
米国における滞在・居住先の住所
宿泊先がホテルであるときは、(a)にホテルの名称を記入し、(b)に市を、(c)には州を記入します。「州」の欄には、略号コードを記載する方法でも大丈夫です。
主要な州の略号コードは以下の通りです。
州の名前 | 略号コード |
---|---|
カリフォルニア州 | CA |
ニューヨーク州 | NY |
ハワイ州 | HI |
フロリダ州 | FL |
ワシントン州 | WA |
ネバダ州 | NV |
マサチューセッツ州 | MA |
旅券発行国
「旅券」とはパスポートのことです。旅券発行国は、パスポートの顔写真が載っているページの上部中央にあります。発行国が日本である場合は、「JPN」と記載されています。
旅券番号
旅券番号は、アルファベット2桁と数字7桁の計9桁の番号です。日本国のパスポートであれば、「発行国」の隣に記載されています。
居住国
現在住んでいる国を記載します。ご自身の出身国や国籍とは関係ないので注意してください。
今回渡米に先立って訪れた国・国々
米国へ入国する前に、乗り継ぎなどで入国した国があれば記入します。
直行便でアメリカへ入国する方は空欄のままで問題ありません。
航空会社・便名もしくは船舶名
乗ってきた飛行機の会社とその便名を記入します。搭乗券の「便名/FLIGHT」の欄に記載してあることが多いです。
今回の渡米の主要目的はビジネスです
米国渡航の目的が旅行・観光の方は「いいえ」にチェックしてください。アメリカビザには、現地での就労が認められているビザと認められていないビザがあります。自分が取得したビザの種類に合った回答をしましょう。
例えば、「観光ビザ(B-1ビザ/B-2ビザ)」は就労が認められていません。また、ESTA(エスタ)は、短期商用(短期ビジネス)が認められています。
(a) 果物類、野菜類、植物類、種物、食品、昆虫類
・果物類、野菜類
果物や野菜は基本的にアメリカへ持ち込めません。生の果物や野菜を経由して害虫や病気を持ち込んでしまう可能性があるからです。
最終的には入国審査官の判断にゆだねられますが、持ち込めないと思っていたほうが良いです。
・植物類、種物
植物や種子も基本的には持ち込めません。輸入許可証など必要書類を事前に準備しておくことで、持ち込みを許可されることもあります。
注意が必要なのは、藁で作られた帽子なども「植物製品」に該当してしまう点です。たとえ害虫がいないように見えるとしても、税関申告書で申告し、入国審査官による検査を受ける必要があります。
・食品
調理済みの食品であれば、基本的に持ち込みを許可されます。ただし、肉類はほとんど許可されませんので注意してください。また、お米も害虫がいる危険性が高いことから持ち込みは避けたほうが良いでしょう。
(b) 肉類、動物、動物/野生生物製品
・肉類
生肉・肉類の持ち込みは大変厳しく制限されています。インスタントラーメンに入っている乾燥肉や缶詰等の加工品であっても持ち込めません。また、原材料の中に肉類の成分を含んでいるお菓子やお土産なども持ち込めないことがあります。
・動物、動物/野生生物製品
動物の持ち込みは大変厳しく制限されています。ここにいう「動物」には、犬や猫などのペットも含まれます。犬や猫を連れてアメリカへ入国したい場合は、税関検査場での検査やワクチン接種証明書の提示などが必要です。
(c) 病因体、細胞培養、巻貝類
この項は、実験用のウイルスやワクチンなどを対象にしています。対象になる方は少ないと思いますので、本記事では説明は省略します。
(d) 土壌、あるいは、私(私達)は、農場・牧場・牧草地にいました
土壌を持ち込もうとする例はあまり多くないと思いますが、後半の部分は重要です。
農場や牧場を訪れている場合は、靴や衣服の検査を受けなければなりません。こちらも米国の自然環境を守るための決まりです。
私(私達)は、家畜の近くにいました(家畜との接触、または処理・扱いなど)
家畜に伝染性疾病が広がらないようにするための措置です。少しでも思い当たる節がある方は、正直に申告しましょう。
私(私達)は、現在通貨、または、金融商品にして、10,000ドル以上の米ドル、または、それに相当する外国通貨を所持しています
通貨やその他の金融商品を持ち込むことは、どれくらいの金額を持ち込むかにかかわらず合法です。ただし、合計金額が1万ドル(日本円だと140万円程度(1ドル140円で計算))を越える場合は、税関申告書での申告と、別途「FinCENフォーム105」という書類を提出しなければなりません。
なお、家族で1枚の税関申告書を提出するときは、家族がぞれぞれ保有している通貨等の合計金額を記載します。
税関申告書の記入例
次は、税関申告書記入例を紹介していきます。
記入項目 | 記入例 | |
---|---|---|
表面 | ||
1.姓・名・ミドルネーム | 姓(苗字): YAMADA 名(ファーストネーム):TAROU ミドルネーム:(空欄で可) |
|
2.誕生年月日 | 月:05 日:13 西暦年:09 |
|
3.渡航に同行している家族の人数 | 3 | |
4.米国における滞在・居住先の住所 (番地と通り) (ホテルの名称・訪問先) |
(a)Bellagio Las Vegas/3600 S Las Vegas Blvd (b)Las Vegas (c)NevadaまたはNV |
|
5.旅券発行国 | JAPAN | |
6.旅券番号 | AA1234567 | |
7.居住国 | JAPAN | |
8.今回渡米に先立って訪れた国・国々 | (空欄で可) | |
9.航空会社・便名もしくは船舶名 | ANA477 | |
10.今回の渡米の主要目的はビジネスです | 今回は、13番のみ「はい」と回答したケースです | |
11.私(私達)は、以下の物品 を所持しています |
(a) 果物類、野菜類、植物類、 種物、食物、昆虫類 |
|
(b) 肉類、動物、動物/野生生物製品 | ||
(c) 病因体、細胞培養、巻貝類 | ||
(d) 土壌、あるいは、私(私達)は、 農場・牧場・牧草地にいました |
||
12.私(私達)は、家畜の近くにいました (家畜との接触、または処理・扱いなど) |
||
13.私(私達)は、現在通貨、または、 金融商品にして、10,000ドル以上の米ドル、または、 それに相当する外国通貨を所持しています |
||
14.私(私達)は、市販用商品を所持しています (販売対象になる商品、または、 発注を促す目的で使用する試供品、 または、個人の身の回りの所持品の範疇 に当てはまらない物品) |
||
15.米国居住者—市販用商品を含め、海外で購入、 あるいは取得した物品 (他人への贈与品も含める, ただし米国に郵送したものは含まない) の総額 |
0 | |
渡航訪問者—米国に残していく物品の総額―(市販用商品込み) | ||
署名 | YAMADA TAROU | |
裏面 | ||
所有品目の明細 | 品目:Cash 金額:$10,000 |
税関申告書を書く時の注意点
続いて、アメリカ税関申告書に関する注意点を紹介していきます。
虚偽の報告をした場合
税関申告書に虚偽の報告をした場合は、罰則を科される可能性があります。例えば、農産物の持ち込みに関する申告を怠った場合は、初犯者は300ドルの罰金、2回目以降は最大500ドルの罰金になります。
申告しなければならない持ち込み品があるときは、必ず申告するようにしましょう。入国審査で持ち込めないと判断された場合でも、申告さえしていれば罰金が科されることはありません。
税関申告書の言語と枚数
本記事で紹介した税関申告書は日本語版のものですが、英語版の税関申告書が配布される可能性があります。言語が異なるだけで記入する内容は変わりませんが、心配な方は日本語版がないか尋ねてみるのが良いでしょう。
また上述の通り、税関申告書は1家族につき1枚で良いのが原則ですが、苗字や住所が違う場合はそれぞれが提出するように指示される場合もあります。
米国旅行にはESTA(エスタ)を取得しましょう
ESTAとは、米国政府により施行されているビザ免除プログラム(VWP)の一環として導入された電子渡航認証システムです。
VWPは、90日以内の滞在かつ観光や短期商用を目的としたアメリカ渡航を行う際に、事前にESTAを申請・取得することで利用ができます。
ESTAの申請は、VWP参加国の国籍を所持した渡航者であること、ICチップ搭載のパスポートを所持していることが最低条件です。その他、様々な条件があるため利用する際にはしっかりと確認しましょう。
アメリカ旅行時にESTAを申請・取得することで、ビザの取得が不要になります。また、ESTA申請はビザとは違い、必要書類がなく、取得までにかかる時間も約72時間以内と素早く手続きができます。
そのため、アメリカへ旅行に行く場合はESTAを利用した渡航をおすすめします。
アメリカ入国について
アメリカ入国にはどのような書類が必要なのか、また入国手続きはどうすればよいのかわからない方はいませんか?
ここではアメリカ入国について必要書類や手続き方法を解説していきます。
アメリカ入国時の必要書類
必要書類は以下の通りです。
・パスポート
・ビザ(ESTAを取得していない方のみ)
・税関申告書
※現在アメリカでは、新型コロナウイルス感染症による水際対策の緩和により、ワクチン接種証明書や陰性証明書、宣誓書の提出は必要ありません。
※飛行機で入国する場合は、出入国カード(I-94)も不要になりました。陸路で入国する場合は、依然として提出が求められます。
入国手続き方法
アメリカ入国時の手続きの手順について解説していきます。
0.事前にESTAまたはビザを申請する
米国の永住権を持っていない方がアメリカへ入国しようとする場合は、ESTAまたはビザを取得しなければなりません。ESTAは全ての手続きをオンラインで完結させることができ、申請から承認まで通常72時間以内に完了します。一方のビザは、必要書類が多く、大使館・領事館での面接が必要になるため取得までの時間は1か月程度かかることがほとんどです。ESTA申請の条件を満たしている方は、ESTAを取得するのがおすすめです。
1.入国審査
アメリカ入国審査は、入国審査官のいる有人カウンターで行う方法と自動入国審査端末(キオスク)で電子的に行う方法の2つの方法があります。
自動入国審査端末は、米国市民、カナダ国民、ESTA取得者、B1/B2ビザ取得者が利用できます。それ以外の方は有人カウンターにて入国審査を行いましょう。
自動入国審査端末では、入国審査とともに税関申告も行います。
排出されたレシートを税関に提出することで、紙の税関申告書を提出する必要がないので覚えておきましょう。
2.荷物受け取り
入国審査後、搭乗前に預けていた荷物を受け取ります。
取り間違いが無いようによく確認して荷物を受け取りましょう。
3.税関検査
自動入国審査端末を利用した方はレシートを、有人カウンターで入国審査をした方は税関申告書を提出し、税関審査を行ってください。
申告する持ち込み物がある場合は「To Declare」の列に、ない場合は「Non Declare」の列に進みましょう。
以上でアメリカの入国手続きが完了です。
各審査を受ける際は、虚偽の申告がないように注意して行いましょう。
預け荷物について
米国運輸保安局(TSA)は、預け荷物にロックをかけないように求めています。空港職員が不審な荷物を検査することがあるからです。預け荷物にロックがかかっている場合は、荷物の検査のため、本人の承諾なしで鍵を壊すことがあります。基本的には、ロックを解除した状態で荷物を預けるようにしましょう。
ただし、TSAロック(TSロック)という種類のロックであれば、施錠したままでも荷物を預けることができるとされています。現在市場に出回っているほとんどのスーツケースにはTSAロック(TSロック)が付いていますが、念のためご自身のスーツケースを確認しておきましょう。
入国審査の質問対策集
当然ですが、アメリカ入国時の審査は英語で行われます。英語が苦手な方は不安に感じることもあるでしょう。そこでこの章では、入国審査時によく聞かれる質問とその答え方の例を紹介していきます。
よく聞かれる質問内容 | 答え方の例 |
---|---|
Q:What’s the purpose of your visit? (アメリカへの入国目的は何ですか?) |
Sightseeing. (観光です) |
Q:How long will you stay? (滞在期間はどれくらいですか?) |
A:For 3 days. (3日間です) |
Q:Where will you stay? (滞在先はどこですか?) |
A:At Bellagio Las Vegas . (泊まる予定のホテルの名前を言いましょう) |
Q:What’s your job? (仕事は何をしていますか?) |
A:I’m a doctor.
(医師です。) |
Q:Do you have a return ticket? (帰りの航空券を持っていますか?) |
A:Yes.
(持っています。) |
Q:Have you ever been to the United States? (アメリカに来たことはありますか?) |
A:First time.
(初めてです) |
まとめ
税関申告書について理解ができましたか?
税関申告書はアメリカ入国の際には提出が必要となるため、しっかりと記入し準備しましょう。
アメリカ渡航を検討している方がいましたら、この記事を参考にして、税関申告書を記入する際に役立ててみてください。
また、入国手続きについても解説をしているので、そちらも参考にしていただけると幸いです。
渡航時の必要書類について理解し、トラブルがなく楽しいアメリカ観光を行っていきましょう。