アメリカへの転勤を計画中の方はいらっしゃいませんか?
アメリカ国内に関連会社がある場合は、Lビザを取得することにより、転勤及び就労が可能です。
しかし、アメリカ国内の関連会社に転勤する全ての方がLビザの申請を行うことができるわけではありません。
本記事では、Lビザにはどのような取得条件があるのか、Lビザの概要から申請についてまで含めて詳しく解説していきます。
ぜひ、ご覧ください。
アメリカの就労ビザについて
アメリカでは、永住権を持たない外国籍の渡航者に対して、ビザ(査証)の取得を求めています。なお、日本の方またはビザ免除プログラム(VWP)参加国の方がアメリカで90日以内の滞在を行う場合は、ESTA(エスタ)を取得することで入国が可能です。
しかし、滞在期間に関わらず、アメリカで就労活動を行う場合は、日本を含めビザ免除プログラム参加国の方もビザの取得が必要になります。
また、アメリカ国外に本社を持つ企業に従事している方が、アメリカ国内にある支店や支部に転勤する場合は、Lビザ(企業内転勤ビザ)の取得が必要です。
ただし、Lビザは転勤を行う全ての方が申請を行えるわけではないため、注意しなければなりません。
では、Lビザについて以下で詳しく解説していきます。
Lビザ(企業内転勤ビザ)とは
多国籍企業で働いている人が、一時的にアメリカの関連会社(親会社、支社、系列会社、子会社)に転勤する場合、L-1ビザという就労ビザが必要です。
ここでいう多国籍企業とは、アメリカ国内外を問わず、複数の国に会社を持つ企業のことを指します。
L-1ビザを取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 転勤前の会社で管理職や役員などの重要な役職に就いていたこと
- 高度な専門知識と技能を持っていること
アメリカの関連会社での役職は、必ずしも転勤前と全く同じである必要はなく、上記の条件を満たせばよいことになっています。
つまり、企業活動を円滑に行うために、グループ企業をまたいで人材を移動させることを目的としたビザということになります。
上記に加え、申請者は、米国への入国申請前の3年間のうち1年間、転勤を命じた多国籍企業において、米国外で継続的に雇用されていることが必要です。
なお、L-1ビザは、USCISから米国の企業もしくは系列会社がブランケット(包括)あるいは個人での請願許可を受けた後に、申請が可能です。
また、L-1ビザにはL-1AビザとL-1Bビザがあります。
以下でそれぞれのビザについて解説していきます。
L1Aビザ(企業内転勤者)
L-1Aビザは、L-1ビザ取得に該当する企業の役員もしくは管理職に就く方が、対象となります。
米国の移民法における役員とは、米国法人の経営陣の一員で、その法人の方針や戦略を決定する立場にある人物を指します。
具体的には、取締役会や上位幹部からの監督下には置かれるものの、法人の目的や運営の指針を設定したり、経営に関する様々な判断を下すことができる立場にある主要メンバーのことです。つまり、その法人の経営の方向性を決める位置にあり、戦略的な意思決定を下すことができる方が移民法における役員に該当します。
また、アメリカの移民法上の管理職の意味は、通常マネージャーとして認識されているものとは異なり、より幅の広い職種を指しています。そのため、企業の部署や機能を統括する立場も管理職に分類されます。
具体的な業務内容としては、社員の監督、人事権の保有、会社の重要な機能の運営などが挙例として挙げられます。
ただし、部下が全て専門職である場合の監督者で、上記のような管理能力がない場合は、管理職とは見なされません。
したがって、会社において必要不可欠な機能を担う幅広い立場が、移民法における管理職の定義に含まれるということです。
上記のような役員もしくは管理職として該当する方が、L-1Aビザを取得可能になります。
L1Bビザ(企業内特殊技能職)
L-1Bビザは、アメリカの関連会社(親会社、支社、系列会社、子会社)から、高度な専門知識や技能を持つ従業員が一時的にその企業の米国拠点に転勤する際に、発給されるビザです。
このビザの対象となる従業員は、企業内のみで活用可能な専用の知識を保有していたり、業界全体で見ても稀少な人材であったり、代替要員を短期間に養成することが難しいなどの特長を持った方になります。
L-1Aビザとの違いは、申請者の企業内での役割の違いになります。L-1Bビザは、L-1Aビザとは違い、役員または管理職についていなくても取得が可能です。
ただし、一般的な従業員ではなく、企業内で重要な業務に携わっている熟練技術者であることが必要なため、注意してください。
L2ビザ(同行家族)
L-1AまたはL-1Bビザを持っている方の配偶者や21歳未満の子どもは、L-2ビザを取ることができます。この家族ビザがあればアメリカに滞在することが可能です。
また、昨今の法改正により、L-2ビザを保有する配偶者の方はアメリカで働くための就労許可申請ができるようになりました。米国内で就労するには、自身のL-2ビザで入国後、就労許可申請書(I-765フォーム)を提出して申請料金を払う必要があります。
なお、21歳未満の子どもは、アメリカで働くことができないため、注意しましょう。
ブランケットL1ビザとは
通常、L-1ビザを申請する場合は、転勤者1名毎に、USCISへ申請を行い、請願書の許可を取る必要があります。
しかし、高頻度で人事異動を行う大規模な企業などの場合は、ブランケットL-1ビザを申請することにより、必要な人数分のビザの請願許可を得ることができます。
この際、L-1ビザに該当する方は、企業から発給された証明書を持参し、在日米国大使館又は領事館にて、面接を受けることが可能です。
承認された場合は、通常のL-1ビザ申請同様、ビザが発給されます。
L1ビザの滞在期間
L-1Aビザを取得した際は、滞在期間が3年間に設定されています。
その後、延長手続きを行うことで2年間延長可能です。
延長は最大で2回行うことができるため、L-1Aビザを1回取得することによって、最大で7年間の滞在が可能となっています。
一方、L-1Bビザを取得した場合は、滞在期間が3年間に設定されます。期限満了前に延長手続きを一度だけ行うことができ、2年間延長することが可能です。
したがって、L-1Bビザを申請した際は、1回の取得で最大5年間滞在することが可能になります。
上記について下記表でまとめたのでご確認ください。
L-1ビザの滞在期間 | |
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L-1Aビザ | 最大7年間 取得時3年間 2年間の有効期限延長が可能最大2回 |
L-1Bビザ | 最大5年間 取得時3年間 2年間の有効期限延長が可能最大1回 |
なお、L-1Bビザでの滞在中に役職の昇進などにより、L-1Aの申請要件を満たした際は、L-1Aビザへの変更ができ、変更後は、最長滞在期間を7年間にすることが可能です。
Lビザの申請について
L-1ビザを申請する際はまず、ビザの該当者を雇用する企業(アメリカ国内の関連会社)がUSCISに申請を行います。
その後、申請が承認された際は、USCISが該当者の居住地を管轄する在日米国大使館又は総領事館へ書類が転送されます。
書類が転送された後、該当者本人が必要書類を持参の上、管轄の大使館又は領事館へ赴き、面接を受けることで、L-1ビザの申請が完了します。
ビザ申請後に、特に問題がない場合は、通常通りビザの発給がなされます。
ビザの発給後は、渡米予定日にアメリカへ入国しましょう。
ブランケットL1ビザを申請する場合で、既に包括請願書(I-129フォーム)が許可されている場合は、共通の申請書類とともに、ブランケットL1ビザの補足書類を提出することで、申請が可能となっています。
また、ブランケットL1ビザで米国に渡航する際は、領事館からのサインが入ったI-129Sフォームを入国審査官に提示しなければなりません。そのため、ビザとともにI-129Sフォームを領事館から受け取った際は、I-129Sのコピーを取り、手元に保管して置くことをおすすめします。
必要書類
Lビザの申請に必要な書類について解説していきます。
Lビザ申請時の必要書類は以下の通りです。
Lビザ申請時の必要書類 | |
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共通書類 | ・非移民ビザオンライン申請書(DS-160フォーム) ・米国での滞在期間に加え、6ヶ月以上の有効期限が残っているパスポート ※日本国籍の方は国別協定によって6ヶ月以上の有効期限は不要である ・過去10年間に発行された古いパスポート ・証明写真 ※メガネ着用の写真は不可 なお、写真の規定については、こちらをご覧ください。 ・相互互恵的関係に基づくビザの手数料※日本国籍の方は免除 ・請願書受付番号 ※請願書受付番号 (レシートナンバー)はI-129請願書 またはI-797請願書許可通知に記載 |
補足書類 | ・履歴書や職務経歴書、大学の卒業証明書など、職務経歴を証明する書類 ・職位やかかわったプロジェクト、勤務年数などを 記述した現在および過去の雇用主からの書簡 |
ブランケットL1ビザ 補足書類 |
・申請者の職務内容が記入されたI-129Sのコピー (フォームはUSCISのサイトよりダウンロード可能です。) ※2024年3月11日以降、 発行日が12/13/23(2023年12月13日)以外の フォームは受け付けないため、注意しましょう。 ・I-797請願書許可通知のコピー ・雇用者からの推薦状 |
同行家族 補足書類 |
・Lビザ申請者との関係を証明する書類 (婚姻証明書、出生証明書、戸籍謄本など) ・Lビザ申請者のI-797請願書許可通知のコピー ・後日ビザを申請する場合は、Lビザのコピー |
ブランケットL1ビザを申請する場合は、包括請願書(I-129S)のコピーが必要になります。ブランケットL1ビザの申請をする際に既に包括請願書(I-129S)の許可がおりていた場合は、共通書類に加えてブランケットL1ビザの補足書類を用意し、提出を行いましょう。
なお、I-129SのコピーはUSCISのサイトよりダウンロードが可能ですが、2024年3月11日以降は、発行日が12/13/23(2023年12月13日)となっているフォームでないと受け付けられなくなります。
発行日はフォームの左下に記載されているので、しっかりと確認を行い、最新のフォームをダウンロードするようにしましょう。
申請料金
Lビザの申請料金は205ドルになります。
なお、ブランケットL1ビザの申請者は、500ドルの詐欺防止費用(Fraud Prevention and Detection Fee)を支払う必要があります。また、下記の条件に該当する場合は、4,500ドルの連結歳出法費用も追加で発生します。
これらの費用は、現金(ドルまたは日本円のどちらでも良い)またはクレジットカードで支払うことが可能です。
しかし、クレジットカード認証システムが使用できない場合があるため、現金で用紙することをおすすめします。
クレジットカードで支払う場合は、ドルでの請求になるため、注意しましょう。
連結歳出法費用については以下をご覧ください。
領事部は、米国内で 50 人以上の個人を雇用する請願者が提出する包括的 L-1 ビザ申請 (申請者本人のみ) において、申請者の50%以上がH-1BまたはL-1非移民ステータスである場合に手数料を徴収します。
L-1ビザ利用時の注意点
L-1ビザを利用する際は、申請者はビザ申請時から遡った3年間の内、1年以上アメリカ国外の関連会社で働いていなければなりません。
また、L-1ビザは最大滞在期間が設定されているため、Eビザとは異なり半永久的に滞在期間を延長することが認められません。
したがって、滞在期間が満了した際には、一度帰国し、アメリカ国外の関連会社で働いたのち、再度L-1ビザを申請し、渡米する必要があります。
アメリカに子会社を新規設立して、日本からの駐在員を初めて派遣する場合、取得後の最初の滞在期間が1年間に短縮される場合があります。この際は、1年後に滞在期間の延長申請をしなくてはなりません。
つまり、新規設立した会社でL1ビザを申請する場合は、1年間の内に実際に事業を行っていることを証明して「その会社がL1ビザ申請だけのために設立されたペーパーカンパニー(書面上のみの会社)ではない」ことを証明しなくてはいけません。
一般的な就労ビザ「Hビザ」との違いについて
アメリカで最も一般的な就労ビザとして知られているのが、「Hビザ」になります。
Hビザは、「H-1ビザ」と「H-2ビザ」に分かれており、それぞれ申請の対象となる職種が異なります。
Hビザの対象者については下記表をご覧ください。
Hビザの対象者 | |
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H-1Bビザ | ・医師 ・弁護士 ・会計士 ・建築家 ・エンジニア ・プログラマー ・科学者 ・経営コンサルタント など |
H-2A | 季節農業やサービスに従事する方 |
H-2B | H-2Aビザ以外の短期労働者 |
Hビザは、Lビザと同様に専門的な業務に携わる方がアメリカで就労する際に取得するビザです。しかし、Hビザはアメリカ国内の企業に従事する方が対象のビザになっています。
また、H-1Bビザには、発給上限が定められており、限られた人数しか取得する事ができません。
HビザとLビザとの違いは、対象となる方の雇用主がアメリカ国内の企業なのか、アメリカ国外の企業なのかという点です。
なお、アメリカ国内の企業に従事する場合は、Hビザを申請しなければなりません。
そのため、アメリカ国外の企業に従事していて、アメリカにある事業所や支店などに転勤する場合は、Lビザを選択して申請を行うようにしましょう。
Eビザおよび永住権との関係性
EビザはLビザと同様に、会社役員、管理職、専門職に就く外国籍の方がアメリカ国内の支店や支部に転勤するために、取得するビザ(査証)です。
また、Eビザは、滞在期間の延長を半永久的に行うことができ、期間満了による帰国を行う必要がありません。
しかし、Eビザはアメリカと通商航海条約を締結している国の企業で、直接的な貿易を行っている、または実体のある投資をアメリカに行っている企業に就いていることが条件になっているため、注意が必要です。
なお、Eビザでは、アメリカへの移民目的で滞在しない事を取得条件としています。そのため、原則的にはEビザでの滞在中に永住権を取得することはできません。
一方、Lビザでのアメリカ入国後は、永住権の取得が可能です。
したがって、アメリカでの就労を半永久的に行う事を目的とした場合、Lビザを利用することにより、アメリカの永住権を取得することが可能です。
Eビザについて詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。
Eビザ(貿易駐在員ビザ・投資家ビザ)とは?
いかがでしたでしょうか。
Lビザは企業の中でも、重要な役割を担っている方しか取得できません。
そのため、通常の職員が転勤する場合は、一般的な就労ビザであるHビザの取得が必要です。
また、EビザとLビザは対象者が同じなため、混合してしまうかもしれませんが、雇用主がEビザ企業である必要があるため、注意しましょう。
この記事を参考にしていただき、Lビザについて少しでも理解を深めていただけると幸いです。